元祖うなぎの湯 中山平温泉「旬樹庵 琢ひで」(宮城県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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サルヒツの温泉めぐり♪【第165回】

中山平温泉 旬樹庵 琢ひで

℡)0229-87-2216

 

往訪日:2024年1月1日~1月2日

所在地:宮城県大崎市鳴子温泉星沼20‐9

源泉名:白須5号泉

泉質:含硫黄‐ナトリウム‐炭酸水素塩・硫酸塩泉

泉温:(浴槽)約42℃(源泉)77.9℃

匂味:硫化水素臭、まろやかかつ仄かな塩味

色調:やや灰緑色透明

pH:9.3

湧出量:不明

その他:掘削自噴、かけ流し

■営業時間:(IN)15時(OUT)10時

※オールインクルーシブはOUT11時

■料金:標準和室33,500円(税別・正月料金)

■客室:14室(各種あり)

■アクセス:東北道・古川ICから約1時間

■駐車場:30台

※日本秘湯の会会員宿

 

《本家うなぎの湯》

 

ひつぞうです。2024年最初のイベントは温泉旅行でした。今回は鳴子温泉郷琢ひでにお邪魔しました。以下、往訪記です。

 

★ ★ ★

 

もう六年半ほど前になる。錦繍の栗駒山を求めて遠征した折、中山平温泉しんとろの湯で下山後の汗を流した。うなぎの湯とは聞いていたが、文字通りのトロトロ。これは是非投宿したいと意気投合。予約困難な人気宿、琢琇に的を絞った。ところが検索画面を見て唖然。民事再生手続き中とあるではないか。あの琢琇が。

 

「なぜ?」サル

 

最大の理由は東日本大震災の風評被害。御家騒動が続いたのも不運だった。翌年三月には旬樹庵グループ“琢ひで”として再スタート。亡くなった名物女将のホスピタリティと料亭顔負けの料理は過去のものになった。それでもいい。湯船は残っている。気を取り直して翌年2018年の年越しに予約。すると源泉が涸れて露天風呂(鶴亀の湯)が使えないと連絡が。それが命の琢ひで。縁がなかったと諦めた。

 

「残念だったにゃ」サル かわりに、ゆさや旅館に行った


話は現在に戻る。大阪赴任後半年。冬の足跡が聞こえるようになり、卒然と東北恋しさが募り始めた。こうして三度目の正直で「琢ひで」行が実現した。今回は年越しは止して元旦泊。なので東北道はガラガラだった。

 

 

仙台を越えて古川ICで降り、温泉に登山とこれまた通い慣れた国道108号を西進。鳴子峡を過ぎたところで案内板が見えてきた。

 

 

着いた。憧れの琢ひでだ。正月だというのに人の姿はなく、思いのほか静かだった。

 

 

離れの建物が手前にできたせいだろう。車寄せがなくなり、ややカジュアルな玄関に変わっていた。

 

 

チェックイン前なのでおサルはジョギングに。僕はフロントで温泉の予習。寒いのは嫌いだし、熊も怖い。定刻になると筒井康隆ばりにオールバックに決めた支配人(だと思う)が案内してくれた。

 

 

僕らの部屋は一番奥の角部屋だった。

 

 

ここ。獅子の間。

 

 

靴脱ぎの先は小上がりになっていて、洗面所と十畳間が続く。

 

 

こんな感じだ。一畳ほどの広縁と四畳半が隣りに続く。これでスタンダード和室。十分過ぎる。

 

「いいにゃ」サル ゆっくりできそー

 

 

今回はオールインクルーシブにした。チェックアウトが11時になるのでトロトロの湯を存分に味わえるという寸法だ。ただ(案内されて判ったのだが)特別にバーコーナーがあるでもなく、冷蔵庫の中が無料というだけで、本当の意味でのそれではなかった。ちょっとがっかり。

 

 

まあいい。一番の狙いは湯なのだから。

 

 

だから一番乗りにこだわったのだし。

 

 

ウェルカムスイーツは堆朱の器だった。では温泉探検へ!

 

=宿の仕様=

 

■温泉

・都合5浴場(長生・鶴・亀・石橋・芍薬)+松島の湯(離れ専用)

・2泉質あり(鶴亀の湯が一番ヌルヌル

・動力揚湯、かけ流し

 

■部屋

・露天風呂付客室【松島】1室

・コネクション和洋室 2室

・バリアフリー洋室 1室

・別棟和室 3室

・スタンダード和室 5室ほか

 

■料理

・綺麗系田舎料理、品数豊富

・酒(出羽桜、南部美人など一般流通銘柄)

 

■ホスピタリティ

・チェーン経営につき一般的

・布団上げ下げあり

 

=温泉の利用法=

 

■長生の湯(男女別内湯+混浴露天)1F

・15:00~23:00/翌5:00~9:30

・(女性専用)19:00~21:00

・男女入替なし

・含硫黄‐ナトリウム‐炭酸水素塩・硫酸塩泉

・新1号・新2号混合泉

・85.3℃(pH9.1)

 

■鶴亀の湯 1F

・15:00~24:00/翌5:00~9:30

・男女入替あり(24:00)

・シャンプーなし(洗髪不可)

・含硫黄‐ナトリウム‐炭酸水素塩・硫酸塩泉

・白須5号泉

・77.9℃(pH9.3) ※ヌルヌル度最高!

 

■芍薬・石橋の湯 2F

・16:00~翌9:30(オールナイト入浴可)

・男女入替あり(24:00)

・芍薬は樽風呂つき

・泉質…長生の湯と同じ

 

■日帰り利用

・10:30~14:00

 

琢ひでといえば元祖うなぎの湯。浴場の数も多い。二源泉のうち鶴亀の湯が最もヌルヌル。まずはこのバージン湯を攻めよう。そして混みあう前に長生の湯の露天風呂へ。最後に石橋の湯でフィニッシュ。翌朝は(入替された)樽風呂つきの芍薬の湯へ。あとはひたすら鶴亀の湯で湯治。このプランで行くことにした。

 

 

部屋と温泉の配置はこんな感じだ。芍薬・石橋の湯だけは奥の二階。

 

 

=芍薬の湯=

 

 

その奥の二つを見学。入り口は一緒。

 

 

こちらが芍薬の湯

 

 

外に樽風呂がついている。眼下に陸羽東線の線路が見えていた。

 

 

=石橋の湯=

 

 

どちらも同じ石風呂だ。泉質は大人しく、色も無色透明。仄かに硫化水素と炭酸泉の匂いがする。

 

 

次は一番のお目当て。

 

=鶴亀の湯=

 

 

一階の客室廊下の暖簾をくぐり、草履に履き替える。

 

 

季節はずれの暖かい日が続いたので、年末に積もった雪は溶けてしまった。残念。

 

「十分に雪景色は見てきたし」サル これまでの温泉で

 

長い階段を降りて建屋の引き戸を開ける。

 

 

ここで男女に分かれる。

 

 

あれ。こんなところにも金精様が。鶴亀だけに?それともうなぎだから?

 

「バカなんじゃね!」サル

 

無病息災・子孫繁栄を祈願するための道祖神らしい。

 

 

まずは亀の湯へ。

 

 

少し灰緑色に色づいている。しんとろの湯もそうだったし。期待できそう。

 

 

いやー。これは実にヌルヌル。効きそうだ。最近お疲れ気味だし。ということで30分入浴。時間が早いせいか、或いは寒いなかをここまで降りるのが厭なのか誰も来ない。

 

 

不思議だよね。源泉がちょっと離れただけで全然泉質が違うんだもの。

 

 

お隣りとの会話も可能。もう出るか?

 

「まだ!」サル 今まで入った中で一番ヌルヌル!

 

相当気に入ったらしい。

 

 

鶴の湯は櫓があるので雨や雪が降っても大丈夫だ。

 

 

最後に混浴露天風呂へ。

 

 

=長生の湯=

 

 

ここから入る。

 

 

洗面台と脱衣所はここが一番広かった。

 

 

手前に内風呂。ここ大浴場と泉質が違う。少しだけ温度が低い。

 

 

男女の目隠し板はこれだけ。にごり湯でもないし、女性にはハードルが高いかな。

 

「来た!」サル

 

全然抵抗ないねあせ

 

「温泉のためならば!」サル

 

 

熱い…ここの源泉。近寄ると火傷しそう。

 

 

いま他の女性客がきたら、モロ眼が合いそう。

 

ということで一足先に部屋に戻ることにした。

 

 

一足先に戻った瞬間だった。引き戸を開けるとゆらゆらと眩暈が。湯あたり?そんなはずはない。風で建物が揺れているとか。いや、どうも様子が変だ。これって地震?慌ててテレビの電源を入れる。思わず眼を疑った。能登半島で大変なことが起きていた。(改めてお悔やみ申し上げます)

 

 

早く復興が叶いますように。

 

 

=夕 食=

 

 

食事は二階の個室食事処で。

 

 

さすがは元旦バージョン。彩りが美しい。まずは自家製梅酒で乾杯!

 

 

今夜のおしながき。

 

 

=しのぎ=

 

 

穴子のバッテラ寿し 玉子焼き

 

器の構造で上段になっている。しのぎは後で頂戴しよう。意外かもしれないが、宮城はアナゴが名物。とりわけ石巻市表浜産はブランド品。旬ではないが、タレ仕込みのバッテラならばいつでも旨い。

 

「へーそうなんだ」サル 知らんかった、穴子大好きだけど

 

 

=前菜=

 

 

二段重ねの下に。ミズの実と菊のお浸し、舞茸白和え、きんとん、梅の甘酢漬、杏仁豆腐

 

「酒を頼もう」サル

 

一合瓶も飲み較べも同じ銘柄なので「三種飲み較べ」をそれぞれ別銘柄で。

 

 

一ノ蔵(宮城)、大七生もと(福島)、陸奥八仙(青森)。南部美人(岩手)、白瀑ど辛(秋田)、吟醸酒桜花(山形)。東北六県揃い踏み。特約店限定銘柄はないが、食中酒としては無難なセレクト。

 

「あとはワインにすゆ」サル

 

 

=酢の物=

 

 

絹田巻き

 

通常「砧巻き」と書くよね。具材は茗荷、胡瓜、食用菊、牛蒡。茗荷を砧に見立てた?

 

 

=造里=

 

 

塩釜港直送の旬魚三種盛(鮪、ハマチ、牡丹海老)

 

これは豪勢。ワサビはもちろん本山葵。刺身の厚さ、サイズともベスト。身に張りもある。そして牡丹海老の鮮度の高さ。正式和名はトヤマエビ。本当のボタンエビには甲殻の星がない。しかし、寿司ネタの牡丹海老といえばほぼこれ。大半が冷凍輸入(それでも高価)なので、国産の活魚は超がつく高級品!

 

「身が甘くてブリブリ♪」サル

 

よかったね(笑)。

 

 

=揚げ物=

 

 

車海老、烏賊、舞茸。コロモはやや厚めのカリカリ。天ぷらはオーソドックス。

 

 

=強肴=

 

 

仙台牛A5リブロースすき焼き

 

すでに脂が溶けかけている。サシも素晴らしい。焼き始めるまで少し間を置いてしまったが、ドリップは出ていない。A5ランクは伊達じゃない。いや伊達だけど。

 

「つまんねー」サル

 

 

=煮物=

 

 

かじきテールの煮つけ

 

気仙沼といえばメカジキ。地元の定食屋のメカジキステーキ定食も旨かったが、繊細な煮物もいい。少しダシが甘いかな。

 

「東北だしにゃ」サル 北にいくほどアマイ

 

 

贅沢にも鱶鰭入り。

 

 

=止め椀=

 

 

御飯は宮城産ひとめぼれ。炊き加減が絶妙。お代わりしたくなる。仙台味噌(熟成系の赤大豆みそ)を使った味噌汁も旨かった。

 

 

=甘味=

 

最後はデザートで〆。

 

 

ヤマモモ、マンゴー、メロン。底には抹茶ムース。

 

「ごちそうさまでした」サル 食べ過ぎた💦

 

 

=翌 朝=

 

朝五時。中山平はまだ闇に包まれていた。悴む掌を擦りながら、夜間に暖簾替えされた芍薬の湯に向かう。オールナイト入浴可能なのだが、こうした宿の客は大抵観光目的。そこまでして朝風呂に拘りはしない(たまに例外もあるが)。かけ湯を繰り返して、湯に馴染んだところで待望の樽風呂につかった。

 

 

思わず「ふーっ」と声が出る。おっさん臭くて厭だが使用がない。おっさんだし。夜間の利用者はいなかったと見えて、床は乾いたままだった。しばらく瞑目して湯の加減を愉しんでいると、空が薔薇色に染まり、冬の雲が形を変えながら飛んでいった。

 

 

崖下が源泉なのだろう。ゴーゴーと大きな音を立てて水蒸気がその空に昇っていく。温泉町は未明がいい。ちょっと寂びれた感じであれば猶いい。犬の鳴き声。軽トラックのエンジン音。街の一日が始まった。遊民気取りで景色を眺めていると、一番列車がJR陸羽東線を走り去っていった。

 

 

鳴子といえばこけし。ひとえにこけしと云っても奥が深い。土湯系、弥治郎系、遠刈田系、そして鳴子系と、全11流派が存在する。ここ鳴子系は首を廻すと音がすること、そして胴の菊花が特徴。やはり、こけし界にもスーパースターが存在する。大沼岩蔵(1876-1950)の作は美術品として高値がつくそうだ。ただの玩具ではないんだね。

 

「サルにはどれも同じ」サル

 

 

=朝 食=

 

 

朝もごっつい量…。正月らしく黒豆、田作り、昆布巻きが並ぶ。

 

 

まずは手作り山ぶどうジュースを。

 

「めっちゃ酸っぱいね」サル

 

体に良さそうよ。

 

 

野菜から先に食べたくなるのは飽食の証し。

 

 

湯豆腐に手が伸びるのは飲み過ぎの証し。

 

 

名物温泉たまごと納豆も。

 

お正月なので餅が出た。お雑煮とぼた餅のいずれかを選ぶ。

 

「サルは断然雑煮派!」サル

 

 

お雑煮。仙台雑煮といえば焼きハゼと凍み豆腐が有名だが、これは至って普通。

 

 

餡子醤油ずんだから選べる。選んだのはずんだ。宮城県はおはぎも旨いので気持ちはグラついた。主婦の店さいちのおはぎは県民のこころを掴んで離さない。

 

「よくそんな甘いもの食べるよにゃ」サル

 

酒も好きだが甘い物にも眼がないのだ。

 

 

最後にデザートのヨーグルトで終了。御馳走様でした。

 

 

食後はひたすらトロトロの湯に。皆、部屋で寛いでいるのか誰もこない。贅沢に過ごすことができた。経営は変わっても、温泉そのものは健在で、食事もなかなか良かった。いつまでも続いて欲しい。このあと、同じ宮城県内の宿に移動した。

 

「超アルカリ泉だった♪」サル お肌すべすべ

 

(つづく)

 

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