名建築を歩く「京都府庁旧本館」(京都市・上京区) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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京都府庁 旧本館

℡)075‐4140‐5432

 

往訪日:2023年10月25日

所在地:京都市上京区下立売通新町西入藪内町

開館時間:10時~17時(火~金、第1・3・5土曜)

観覧料:無料(予約不要)

アクセス:地下鉄烏丸線・丸太町から徒歩10分

■設計:松室重光

■竣工:1904年

■施工:三上吉兵衛

■国指定重要文化財(2004年指定)

 

《実は現役!旧庁舎》

 

ひつぞうです。十月の終わり頃に京都府庁旧本館を見学しました。議場と一体化した都道府県庁舎の先駆けと言える作例で、現在も現役の建物として利用されています。以下、建築散歩メモです。

 

★ ★ ★

 

この日、京都府庁に仕事で出向いた。真夏に逆戻りしたような、積乱雲が発達した蒸し暑い一日だった。ちょうどお昼時で、業務から解放された職員たちが庁舎から散っていく処だった。

 

 

1号館から3号館まで、新設の行政棟が無機的に隣接しているが、この本庁舎は1904(明治37)年竣工の煉瓦と石造りによるネオルネサンス様式の名作だ。関西のレトロ系名建築にあっては珍しく、予約不要かつ無料で見学できる。ただ、日曜は休館で、土曜日も奇数の週のみ開放。往訪のハードルは決して低くはなかった。

 

「大阪に来るときとタイミングが合わんとにゃー」サル

 

 

屋根は天然スレート葺き。クリーム色のファサードが美しい。

 

 

中央の庭は、名作庭師・七代目小川治兵衛の設計。中央の緑濃い柏愼(ビャクシン)は近傍の寺院から記念樹として譲り受けたもので樹齢300年になるという。

 

 

隣りには首都分散論の嚆矢として、今年三月に鳴り物入りで“引っ越し”てきた文化庁旧京都府警察本部本館で、こちらも1928(昭和3)年竣工の歴とした名建築だ。新行政棟とくっ付いてやや無骨になったが、復元整備もされたし、いつか往訪しないとね。

 

「行っといで」サル サルはおうちでワイン飲んで寝てゆ

 

 

実はこの時まで真面目に見学するつもりはなかった。まずできないと思っていた。旧議場をチラと覗くと、昼休みというのに殊勝にも案内係の女性がいた。ここで初めて予約なしで見学できると知った。加えて「旧知事室は御覧になりました?」👩と訊いてくる。

 

観ることできるんですか?

 

「ええ。平日は自由に」👩

 

見学対象は旧知事室政庁、そして旧議場。一時間あれば足りる。行ってみることにした。

 

「働けよ!」サル

 

大丈夫。まだ昼休み。

 

 

本館正門をくぐると二回に続く踊場つきの階段がシンメトリックに展開する。なお一階は喫茶店が入店していて、カレーかハンバーグか知らんが、なんとも好い香りである。

 

 

磨き込まれた大理石の手摺が美しい。

 

 

彫刻ももちろん手彫り。

 

 

回廊のデザインはどこか南アジア風。漆喰の化粧彫りは派手過ぎず、京都の風情にどこか似合う。議場つきの府県庁舎の第一号だった本館を模範例として、全国の府庁舎が建てられていったそうだ。

 

「知らなかったわ」サル

 

 

踊場から見下ろしてみる。階段のステップは天然石ではなくて、研ぎ出し仕上げの人造石のようだ。

 

 

二階から吹き抜けを眺める。

 

設計は東京帝国大学で辰野金吾の薫陶を得た京都府土木技官の松室重光(1873‐1937)。とある事件に巻き込まれ、技官辞職に追い込まれたので、作品自体が少なく、取壊しも進んで数例しか眼にすることができない。その意味でもこの建築は貴重。

 

 

北向きの採光を意識したのだろう。当時としては窓がかなり大きい。

 

 

古代のローマ建築にも似ているね。昭和46年まで本庁舎として使用され、知事もここで執務していた。今は一部の会議室などが使用されている。そして、創建当時の姿を残す都道府県庁舎としては最古らしい。

 

「大阪府庁舎も最古っていってたよにゃ」サル

 

パンフレットにそう書いてあるもの。こっちは「全く改修していないもの」て意味では?

 

 

ということで旧知事室に向かう。これがかなり判りづらかった。だいたい廊下に表札が出ているものだが、それらしい一画についても見つからない。残された時間は凡そ30分。小走りでも、そこは昔の建物、やはり足音が響いてしまう。

 

「迷惑なことだのー」サル

 

実は二階に上がった正面に府庁NPOパートナシップセンターが入居していて、そこから旧知事室政庁に向かう配置になっていた。こりゃ判らん。

 

 

まずは旧食堂

 

 

その隣りが旧知事室だ。

 

「おお!貫禄あるにゃー」サル

 

でしょ。明治38年から昭和46年まで都合67年間、歴代知事の執務の場となってきたわけよ。

 

 

廻り縁に格天井と、和風建築の意匠が採用されている。

 

 

内装は和洋折衷なんだね。

 

 

暖炉の鏡も立派。当時の日本人の背丈には高すぎるくらいだ。

 

 

旧本館には知事室、食堂、応接室(見学不可)、貴賓応接室(同左)に暖炉が設置された。全て意匠を変えるという凝りよう。

 

次は政庁の間だ。

 

「慌ただしいことだにゃ」サル

 

 

更に立派な二段組みの折上げ格天井になっていた。大正天皇や昭和天皇の即位の礼の閣議が開かれたそうだ。

 

 

ソ連の宇宙飛行士ガガーリンが、昭和37年に来日した際には、このバルコニーから手を振ったとも。

 

では旧議場に戻って最後にしよう。

 

 

中庭しだれ桜大島桜など複数種が植えられている。残念ながら紅葉は全く進んでいなかったが、花が綻ぶ春先や紅葉シーズンは最高だろう。

 

 

では北側の旧議場を改めて見学。

 

 

平成25年までは府政情報センターとして利用され、平成26年に本館竣工110周年を迎えた記念に、在りし日の姿に大改修したそうだ。平成28年から一般公開されている。

 

「だからこんなにキレイなのね」サル

 

 

壁は漆喰仕上げで部分的に化粧彫りが施されている。

 

 

「二階は?」サル

 

傍聴席だそうだ。相当ヤジが飛んだだろうね(笑)。

 

 

ということで駆け足だったが、十分に見学することができた。週末よりも平日のお昼時が狙い目かもしれない。

 

「仕事は?」サル

 

ギリギリ戻ることができた。なかなかスリリングだったね。

 

(おわり)

 

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