ぐるめ探訪「㐂寿司」で老舗の江戸前寿司を(東京都・人形町) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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サルヒツのグルメ探訪♪【第188回】

㐂寿司

℡)03-3666-1682

 

カテゴリ:寿司

往訪日:2023年5月1日

所在地:東京都中央区日本橋人形町2-7-13

営業時間:(日祝定休)

(L)11時45分~14時30分

(D)17時~21時30分

■42席(カウンター+テーブル+座敷)

■アクセス:東京メトロ・人形町駅(A3出口)から徒歩約1分

■予算:(D)おまかせ12,000円

■予約:要

■支払い:カード可

 

《このままの形でぜひ残って》

 

ひつぞうです。銀座の教文館を訪ねた夕方、人形町の老舗鮨屋の㐂寿司で食事をしました。以下、往訪記です。

 

★ ★ ★

 

入籍記念日が近いこともあり、おサルに記念のプレゼントを買った。しばらくの間は、どんなことがあっても機嫌よく許してくれることだろう。その後、やはりおサルの要望に応えて、エノテカでワイン二杯で粘りに粘って時間を潰した。本当にどうしようもない客だ。この日の夕食に選んだ店は人形町の㐂寿司(きずし)。老舗の多い人形町には訪れてみたい店が幾つもある。ここもそのうちと思いながらコロナ禍が席捲。ずいぶん時間が経ってしまった。

 

 

創業大正12(1923)年。今年100周年を迎える江戸前寿司の名店だ。二年前に先代が亡くなり、現在は四代目の油井一浩さんと弟の厚二さんが暖簾を守る。カウンターは12席。午後の部開始の17時に予約した。そのうち自転車の客がひとり入っていった。暖簾もかかったし、そろそろ良さそうだ。

 

「たのすみ~♪」サル

 

初見の寿司屋はむつかしい。そもそも世間の評判通りとは限らない。また、注文の仕方や作法にやかましかったり、内容とは裏腹な腰を抜かす額を提示されたり。まあ、過去にもいろんなことがあった。

 

「あった。あった」サル ←うわべトーク(愉しすぎて)

 

しかし、その点㐂寿司は安心。アットホームで笑顔が絶えない店と聞いた。

 

 

案内された木曽堆朱のカウンターに並んで座る。コースはお任せ。酒は菊正宗のみ。潔い。

 

 

ということで1.5合を頂戴した。蒸し暑いというほどではないが冷酒が旨い。

 

 

まずはお通しの蛍烏賊の沖漬け。おろし生姜が辛口の醤油にあう。握りは弟の厚二さんが担当してくださった。少し緊張気味の僕を察してか、笑顔でぽつぽつ会話を投げてくれる。

 

「大丈夫!おサルが話しゅ」サル 任せとけ

 

 

まずはから。程よいヅケにひと刷毛醤油を塗る。さっぱりした赤身の初鰹だ。

 

 

「少しシメが浅いですが」と言葉を添えて差し出したのは真鯛。いやいや。ねっとりとグルタミン化した白身もいいが、プリプリとした弾力も真鯛の魅力。

 

「酒にあうにゃ♪」サル

 

 

ときおり、ガリで口直し。

 

 

墨烏賊。いわゆる甲烏賊の仲間では一般的なコウイカの別称だ。よく墨を吐くのでこの名がある。歯切れよく、そしてなにより甘い。蛋白質の甘味とシャリの甘味が見事に調和している。

 

厚二さんの話では、この建物は元は置き屋だったらしく、それを二代目(つまり四代目ご兄弟の祖父)が二十歳の時に購入したのだそうだ。ちょうど関東大震災の年だったという。それを聞いて、建物の妓楼のような艶やかさに合点がいった。二代目は鼻が利いたのだ。

 

「好い買い物だったにゃ」サル 二十歳で家買ったん?

 

 

中盤でいい具合に中とろが出る。奥の客以外は、常連と思しきピンの客数名。小粋な白髪の女性が「●●ちょうだい」と一巻頼む。その佇まいが粋だ。勝手な想像だが、三味線か謡の師匠のような、背筋の通った姿がさまになっていた。

 

「猫背だもんにゃ、ヒツは」サル まだ若いのに

 

駄目なんだけどね。

 

 

近頃はコハダが一番旨いと感じるようになった。理由は単純で、丁寧な造りの酒の味を邪魔しないから。また、仕込みが大変で、店の個性が現れるのもやはりコハダだ。

 

 

「こりは!サルの大好きなエビ!」サル

 

茹でた車海老を開きにして頭から尻尾まで。さすがに女性は一口とはいかず…

 

 

こんな風にカットしてくれる心遣い。

 

 

赤貝も大きい。

 

 

紫雲丹軍艦巻き。海苔は佐賀の有明海産。江戸前の海苔が不作で大変らしい。

 

「東京湾で大量発生したクロダイが原因だの」サル

 

温暖化でね。以前はそこまで北上しなかったらしいけど。クロダイにとってもいい海苔は旨いだろうし。

 

 

江戸前といえば蒸しアナゴ。見た目どおりフワフワだ。このタレはツメと呼ばれるそうだ。丸一日かけてアナゴの頭と背骨からエキスを摂り、昆布や鰹節のダシで煮詰めていく。だから“つめ”なのだろう。

 

「めっちゃ大変じゃん」サル

 

一口で食べるべきものじゃないかも。

 

「でも食べ方は自由だって」サル 言われてたよ

 

 

大根たまり漬で口直し。

 

「なんかお薦めくださ~い」サル お酒のつまみで

 

ここでひと品、コース以外でお薦めを頂戴した。

 

 

たいらぎ貝を炙って海苔で巻いて頂戴する。贅沢な逸品。

 

 

そろそろ終盤。玉(ぎょく)は絶妙な歯ごたえ。やや濃いめの甘みとダシが特徴。

 

 

〆はかんぴょう巻きで。

 

コースだとちょっと食べすぎなくらい。常連さんは数巻口に運んで、お愛想して帰る。決して長居しないのも小粋。

 

 

東京の老舗だし、外国人客で(文字通り)寿司詰めだろうと思っていたが、そんなことはなかった。人気のネタはすぐに切れるので、やはり、早めに席について、会話を愉しみながら江戸前を味わうのにしくはない。外に出てみれば、まだ日が暮れるには早かったが、献灯のオレンジ色の輝きが際立ってとても美しかった。街歩きは愉しい。

 

「自分でもよく食うたと思う」サル お腹いっぱーい💦

 

(おわり)
 

ご訪問ありがとうございます。