京都府立植物園
℡)075-701-0141
往訪日:2023年4月4日
所在地:京都市左京区下鴨半木町
開館時間:9時~17時(年末年始のみ休園)
入場料:入園+温室観覧券400円 入園のみ200円 高校生100円
アクセス:京都市営地下鉄・北山駅から徒歩約1分
駐車場:あり(有料)
《初めて訪れた春の植物園》
ひつぞうです。関西観光第二弾は京都府立植物園です。日本初の本格的植物園として知られます。ちょうど桜の見頃と重なりました。以下往訪記です。
★ ★ ★
実はこの日の狙いは他にあった。電車の遅延もなく出来すぎなくらい順調だった。だが、一番乗りを果たしたものの、期間限定の催しはなんと一週間後…。下調べもせずに希望的観測で訪れた自分の責任だった。
「やっぱりこーなったにゃ」 順調にいくってウチらしくないもん
面白がってる場合かよ
「ほかに行くあてないの?」
んー。あるっちゃある。
「どこよ」
植物園。
「じゃいくだよ」 愉しければどこでもいい♪
ということで、一時間を無駄にして北山まで移動。
(お客さんの姿はトリミングしてます)
植物園には三箇所入り口がある。僕らはアクセスに便利な北山門から入場した。平日にも関わらず結構な賑わい。高齢者は無料なので理解できるが、外国人も訪れている。なんか意外。
「NHKの朝ドラの影響で植物園がプチブームらしいよ」
牧野富太郎ね。そういうことか。
「それに枝垂桜が見頃らしいにゃ」
ベニバナトキワマンサクがお出迎え。残雪期に越後の山で見かける黄色いマンサクと違って、こちらは通年開花の園芸種(中国原産)。
まずは桜品種見本園から。
「おー!めっちゃ美しー」
《桐ヶ谷》
《梅護寺数珠掛桜》
親鸞上人が数珠をかけたという伝承がある。新潟県阿賀野市の梅護寺に原木があるそうな。
「ちっちゃ」
色が深くて可憐だね。
《鬱金》
黄桜だね。
《北鵬》
万里香×御座の間匂の交雑種。って言われても元が判らん。とにかく満開だった。
このあとつばき園に続くのだけど、まだ四月になったばかりなのにほぼ終わっていた…。
「今年も暑くなりそうな予感」
水琴窟を通過。これなに?
「雫を垂らすと竹から綺麗な音が伝わってくる仕掛けだよ」 覚えとけ
ほんとだ。金属的な澄んだ音がするよ。
針葉樹林(オオカナメモチ)を通過。いよいよ桜林だよ。
「みごと~♪」
しだれ桜が最高の見頃だった。来てよかったよ。
二人ともしばらくの間、桜の園を思い思いに散策した。小腹が減ったとサルがいうので、通りを挟んだ向かいの森のカフェでドライカレーを注文した。先に焼きおにぎりを平らげたはずのおサルが、物欲しそうにしているので、食べるかと訊くと「喰う」という。美味そうに食うサルをみて、今度来るときには烏丸通のじじばば木馬亭のドライカレーを好きなだけ食べさせようと思った。
「喰い足りなかった?」 すまん、横取りして
大芝生地。皆思い思いに過ごしている。植物園というより市民の憩いの場という雰囲気だ。
京都府立植物園は、七年の歳月を費やして、大正13(1924)年元旦に開園している。戦後にGHQに接収されて多くの貴重な樹木が失われてしまったが、昭和36(1961)年の再開園以来、少しずつ希少種を植えなおして学術的にも充実した施設として今に至っている。
沈床花壇から正門にかけては西洋式庭園風の施設が続く。
ヒマラヤスギ
松ぼっくりも超巨大(望遠です)。
バラ園は五月から。かわりにチューリップが満開だった。
子供の頃に通った幼稚園の庭に、こうした真紅の大きなチューリップが咲いていたことを思い出す。
黄色も映える。
西洋シャクナゲ園も大盛況。
太陽(左)と芳子(右)
《芳子》は栽培者の妻の名前が由来。いずれもアズマシャクナゲと違って花弁が大きく、フリルも際立っている。
正門前に来ると、そこが園内随一のシャッターポイント。
さて。今回一番のお目当ては観覧温室だ。平成25(2013)年にリニューアルされた国内最大の観覧温室なのよ。珍しい南洋の草花も多数。特にランの仲間は開花期も短い。HPで確認して往訪するのがベストだ。植物園よりも入場時間が少し短いので注意しよう。
ラフレシアのホルマリン漬け
模型以外は初めて観たよ。
まずは《ジャングル室》。
いや~蒸し暑いね~♪(それでも嬉しい)
最初は園芸品種のオンパレード。
パッシフロラ “アメジスト”
ベニヒモノキ(トウダイグサ科) マレー半島・西インド諸島
これも園芸品種としておなじみ。現地では大低木になるそうな。
「気持ち悪~い」
ちょうどベゴニア祭りだった。ベゴニアって毒があるんだよね。
しかし不思議な開花だな。最初は二枚貝みたいに開いて、だんだん房状になるんだ。
トーチジンジャー(ショウガ科) 東南アジア
美しいねえ。確かにその姿は松明そのもの。生姜だけに花も実もタネも食用になるそうだ。
ウトリクラリア・サンダーソニー(ウサギゴケ) タヌキモ科 南アフリカ
「なに?この地味な植物は?」
拡大鏡が置いてあるね。
角度が悪いので判りづらいけど、花弁の中央に顔みたいな模様があるんだ。現地では高山地帯の岩壁に根を張って、捕食嚢で微生物をエサにする食虫植物なんだって。
やっぱ植物園はええわ。生きた博物館だもの。
サラカ・ディウェス マメ科 中国・ヴェトナム
仏教三大聖樹のひとつ無憂樹の類縁種だって。濃い紅色の染料となるラックカイガラムシの飼育木として現地では利用されるそうだね。ちょうど花の盛りに来たみたい。愉しくない?
「うむ」♪
ちなみに三大仏樹の残りは沙羅双樹と印度菩提樹。
「仏頭果じゃないんだ」
それはフルーツでしょ。
アンスリウム“アークス” サトイモ科 園芸種(中米原産)
アンスリウムの仲間もいっぱい。
タッカ・シャントリエリ タシロイモ科 インド北東部・東南アジア
ヤマイモとかの遠い親戚なんだろうね。苞葉の形からバットフラワー、デビルフラワー、ブラックキャットの別名も。園芸品種としても栽培される。
「ん?なんかなってゆ」
おっ!ホウガンノキの実じゃん!初めて見た。
ムユウジュ マメ科 インド・東南アジア
これが先程話に出た無憂樹。なんでもマーヤ王妃が無憂樹に触れようとしたとたん、その右脇腹からお釈迦様がひょっこり現れて「天上天下唯我独尊」と云ったんだとか。
「シュールだにゃ」
ショウジョウトラノオ“デービッドオーヤン” アカネ科 熱帯アメリカ・西インド諸島
豪華な花だね。でもこれは花びらではなくて萼。それが八重になる珍しい個体を植物学者がトリニダードトバゴの渓谷で発見したそうだ。今では国花に制定されている。国内の栽培例は少なく、この株は熱川ワニバナナ園から分けてもらったもの。
《有用植物室》
センナリバナナかな。実がついている。
「しばらくしてまたこよう」
いらんこと考えない!
「ちょっとごめんなさいよ」
取っちゃ駄目よ。
「取ってないよ。撮ってるだけだよ」
これが美味しいチョコレートになるのか。ウンパルンパの気持ちが判る。
「こっちはパパイヤサラダで♪」
実にうまそう。まずいね。この温室。
ブルボフィルム・マクロブルブム ラン科 ニューギニア
こういう気持ち悪いのも。
メディニラ・マグニフィカ ノボタン科 フィリピン
充分美しいけれど、これはまだ苞の部分。中に小さな花房が集まっていて、開花すると房状に現れる。
アガペテス・ブルマニカ ツツジ科 中国・ミャンマー原産
今の季節だけの美しい花。右端が開花した状態。
《砂漠サバンナ室》
サボテンとかマダガスカルの植物を中心に。
奇想天外 ウェルウェッチア科 アフリカ・ナミブ砂漠
これも初めて見た。生涯に二枚の葉しか出さない奇妙な植物で、樹木でもないのに雌雄違株。そしてこの世に同族が存在しない1科1属1種。そのうえ1000年単位の長寿。本当に不思議な植物なんだよ。
《ラン・アナナス室》
カクチョウラン ラン科 南西諸島・東南アジア・オセアニア南部
サイコトリア・ペピギアナ アカネ科 南米大陸
別名ホットリップス。ハチドリの仲間を呼び寄せるために苞が派手に進化。中央から黄色い花が咲くそうだ。
オクナ・セルラタ オクナ科 南アフリカ
その実の形から“ミッキーマウスの木”と呼ばれるそうな。
アルソミトラ・マクロカルパ(ウリ科)の実。
ザボンのような巨大な実は熟すと下部に穴が開いて、こんな感じで種が舞い散るんだ。
これね。これをヒントにグライダーが発明されたんだって。
ざっと駆け足だったけれど、ここだけで一時間は愉しめるね。
最後に絶滅危惧種園を訪ねて終わりにしよう。
「中に入れないにゃ」
絶滅危惧種だからね。粗忽な僕らが踏みつぶす可能性もあるでしょ。ここで育成されている植物は自然状態では絶滅してしまったものばかりなんだよ。
この食虫植物のムジナモも埼玉県の宝蔵寺沼で確認されたのを最後にこの世から姿を消してしまった。水生の植物や動物は水質汚染に弱い。戦後の農薬散布や宅地開発で多くの生命が失われてしまったんだ。
コブシモドキ(モクレン科) 徳島県相生町
絶滅は悪質な盗掘によっても齎される。四国の山奥にひっそり咲いていたコブシモドキ。1948年を最後に野生種は見つかっていない。この花はその原木から挿し木で増やしたもの。事実上絶滅している。やはり花はその場で慈しむものではないだろうか。
温室の花や実はいつも観察できるとは限らない。もちろん四季に応じて植物の姿も変わる。時間があれば、またゆっくり訪ねてみたいね。
「ドライカレーおごってにゃ」
覚えてたんだ?
(おわり)
ご訪問ありがとうございます。