小丸山(1601m)/赤薙山(2010m)/女峰山(2464m) 栃木県
日本二百名山
日程:2022年11月12日
天気:晴のち霧
行程:霧降高原5:08→5:38小丸山5:48→7:08赤薙山7:16→8:08奥社跡8:17→9:10独標9:17→9:25水場→10:33女峰山11:15→12:23独標12:25→13:03奥社跡→13:43巻道分岐→14:47霧降高原
■駐車場:175台(三箇所)
■トイレ:手前の大型駐車場にあります
■登山ポスト:確認できず
■行動時間:4時間50分+3時間30分
《朝陽を浴びる赤薙山》
ひつぞうです。先週末は“日光連山の女王”女峰山を訪ねました。七年前の六月に志津乗越から大真名子、小真名子と繋いで周回縦走しています。しかし、霧降高原から一里ヶ曽根をたどる稜線歩きこそ女王に額づく、将に王道のビクトリーロード。一度は歩かなければなりません。ならば面倒な積雪のない今こそチャンス。幸いにも晴れの予報。期待に胸が膨らみます。以下、山行記録です。
★ ★ ★
【女峰山(霧降高原コース)】
水平距離=12.6km 累積標高=1370m
この日は前夜車中泊で臨んだ。理由は単純で、奈良旅行で車中泊の愉しみを再認識したからだ。確かに準備は面倒だし、渋滞のない深夜に走るに如くはない。しかし、翌朝に控えた山行への期待と、かつての山の失敗談や過去遭遇した絶景の数々を肴に、安酒を酌み交わす愉しみはまた格別だ。ということで某所で仮眠したのち、翌朝一番に東武鉄道・日光駅から高原道路を遡り、霧降高原駐車場にたどりついた。三箇所に別れた駐車場には、既に数台の車が止まっていた。午前五時半、気温8℃の中で準備する。
午前六時、レストハウス前の階段から出発する。
(左が小丸山。右は丸山)
廃業したスキー場跡に周遊施設キスゲ平園地ができたのは2015年。小丸山展望台まで1445段の階段が続き、天空回廊と呼ばれている。その展望台からの御来光を拝むために、地元の若者が大騒ぎで抜いていった。
「むっちゃ単調な階段歩きだにゃ」地味すぎる
まだ登山じゃないよね。これ。
やがて空は漆黒から群青に変わり、月と星の明滅も僅かながら頼りなさを増していった。
展望台からは高原山の山群が頭をだし、手前の栗山ダムの湖面が際立ち始める。
女峰山までは往復8時間の健脚向けとされる。そのためだろうか。ソロの男性が目立った。総計25名ほどだった。やはり人気のコースなのだ。
笹原とツツジ科の灌木が織りなす緩斜面をゆっくり登っていく。
「やっと静かになった」
平野は靄に覆われていた。絶景だ。獣道が発達している。本道が判らないので適当に歩いていく。
丸山の向こうに大笹牧場が僅かに顔を覗かせている。右奥は那須連山だろうか。
午前6時18分。朝日が昇った。
「めっちゃキレイ!」
賽の河原のようだ。焼石金剛というのか。これは。
自分の影が映る季節になった。初冬の訪れはもう近い。
コメツガの森に入った。
張り出した根を跨いで越えて…歩きにくい。
最初のピーク、赤薙山は巻くこともできる。往路はきちんと稜線通しで。
山頂には立派な鳥居と祠が祀ってあった。赤薙山は信仰の山だった。
樹間からは男体山と女峰山が見えている。氷瀑で有名な雲竜渓谷を挟んでいるため尾根が遠い。
尾根歩きになると風をまともに受ける。
「ハードシェル脱げないにゃ」
ここから赤薙奥社跡(2203峰)までは痩せ尾根のアップダウンが続くらしい。
幾重にも尾根が重なって見える。右のコブが奥社跡だろう。ゴールは左奥。まだまだ先だ。
こんな感じでロープもきちんと整備されている。くだりは慎重に。
このあと展望のない地味な樹林の尾根をワシワシ登っていった。
奥社跡に着いた。時刻は午前8時を回ったところ。いいペースだ。
「でもみんなメチャ早いよ」
いいんだよ。自分のペースで登って、明るいうちに無事に下山できれば。計画に狂いが出るかどうか。それが一番の問題なんだ。
ここで水分と行動食を補給した。
藪の向こうにこれから辿る一里ヶ曽根の稜線が見えている。どれほどアップダウンがあるのか、それが不安材料だったけれど、地形図で見るとおり、ほぼ水平な稜線みたいだ。
「安心すた」~♪
一度軽く下ってコルから再び登り返す。この程度の登り返しであれば、おサルも文句を言わない。大普賢岳では大騒ぎだったからなあ(笑)。
「そんときの気分にもよる」
岩場を通過。
まだまだ遠いね。
あれ?男体山はガスを被っているね。
「ほんとだ」
実は冬場の霧降高原からのルートは遭難事例も少なくない。日光連山は関東平野にあって“前衛”に位置するため、不安定な空気が入り込めば、途端に霧や風など悪天要素に一気に飲まれてしまう。加えて、ほぼ水平で遮るものが乏しい一里ヶ曽根は、吹きつける冷たい風や雪で、あっという間に体温を奪うという。そのため、低体温症による遭難事故が発生するのだ。
など、独り考え事をしている僕の前を、枝から枝へと伝っていく一羽の小鳥の存在に気付いた。鳥はさほど人に警戒する様子を見せない。まるで道案内しているようだ。
その姿からルリビタキの雌であることが知れた。雄と違って地味な草色の羽毛だが、火焚きの尾羽は眼の覚めるような空色。それでルリビタキと正体が知れる。
鳥が飛び去ると、突然のように二人とも空腹を覚えた。
「小腹が減ったにゃ。ザックからパンを出しておくり」
取り出した豆パンを二人で分け合って食べた。甘納豆が詰まったパンは腹持ちがよさそうだった。
いよいよ尾根が細くなり、灌木が薄れていく。独標が近いようだ。
独標到着。先行するハイカーは立ち去ったあとで、ゴーロの山頂には人の姿はおろか、外の生き物の気配すら皆無だった。
いよいよ山頂が視界に入った。目立ち始めたガスが気になる。早いところ山頂を目指そう。
「判った!」
(つづく)
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