サルヒツの酒飲みライフ♪【第133回】
大倉 山廃特別純米 直汲み無濾過生原酒 2021BY
製造年月:2022年9月
生産者:㈱大倉本家
所在地:奈良県香芝市
タイプ:山廃特別純米 直汲み無濾過生原酒
原料米:岡山県産備前朝日100%
使用酵母:協会701号
精米歩合:60%
アルコール:17度
日本酒度:-5
酸度:3.0
販売価格:1,300円(税別)
※特約店販売品
※味覚の表現は飽くまで個人的なものです
ひつぞうです。今夜紹介するのは山廃仕込みにこだわる奈良の酒蔵、大倉本家が醸す《大倉》。明治29年(1896年)創業です。戦前より奈良神社本庁の委託を受けて“御神酒”を手掛けてきましたが、諸般の事情で平成12年(2000年)に一時酒造りを中断。三年後に四代目の大倉隆彦さんが帰郷し、家業の命脈は保たれました(蔵HPより)。そして花開いた特約店銘柄が大倉。県外での購入は限定されています。これは愉しみ。待望のテイスティングです。
★ ★ ★
紫外線防止フィルムで厳重に保護されていた。酒米は備前朝日。あまり馴染のない品種だ。
無加圧のふなくち搾り。なのでガス感充分の仕上がりらしい。瓶詰めも全て手作業。とにかく、酒に対する愛情が半端ない。なのに1300円で買えるとは…ほとんど神の所業。
主たる銘柄は《金鼓》、《濁酒》、そして《大倉》。元は地元特約店対象の裏銘柄だったそうだ。
久々のスペック・フルオープン。酵母は泡なしの協会701号。
「なに?泡なしって?」ヒツジは能無し
醪が発酵する過程で泡を吹くタイプと吹かないタイプが酵母にはあるんだよ。泡なしタイプは番号の末尾に「01」がつく。つまり協会7号(真澄酵母)の「泡なし」が701号。
「どっちがいいのかにゃ?」聞いてもすぐ忘れるけど
泡がない方が小汚くないし、雑菌も繁殖しにくいよね。
「そーいえば、10年以上前に福井で泡ブクブクの仕込みを観たにゃ」
酒泉洞堀一さんの企画旅行だね。なつかしいよ。でも、発酵具合を泡で見極める杜氏もいるので絶対に一方が優れているとは言えないんだって。
では、頂戴してみよう。お薦めは冷や(常温)か、ぬる燗らしいけどね。
10℃くらいに冷やしてから温度をあげていく。邪道と知りつつ、我が家ではそれが王道。酒の飲み方は人ぞれぞれ。雑誌の蘊蓄を幾ら仕入れようとも、長年舌が覚えた風味、舌触りというものはそう簡単に変わらない。駄目と云われれば、ますます拘りを深くする。酒飲みとはそういうもの。
「そいそい」←このひとが一番典型的
山廃仕込みの直汲み無濾過生原酒。力強さと繊細さが同居するスペック。複雑さも期待できる。
開栓と同時に、おサルいう処の“ガッツリ味醂系”の香りが広がる。飲んでみた。これはまた濃い飲み口。しかも(想像どおり)味わいは複雑でコクがある。しかし、そこで終らず、フルーティな余韻も。生原酒らしく、生きたプチプチした舌触りも心地いい。これホントに1300円?おカネの話で申し訳ないけど。
「アルコールの反動は思ったほどないね」
そうなんだよ。普通ウヒってくるでしょ。こういうお酒。それが案外きつくない。カドも棘もない。
「ボディはあるけど繊細だのー」
では、酒肴はなにをお供に頂こうか。
こうやって頂くのだ。
まずは奈良漬けだろう。カリカリサクサクの旨味充分な本場の奈良漬け。合わないはずがない。
「月桂冠で買ったんだけどにゃ」ごめんライバル掛けあわせて
そして生湯葉に奈良の醤油を垂らして頂戴する。美味い。
「豆腐料理こんどうのパクリだけどにゃ」
しかし、旨味たっぷりの山廃系の酒のポテンシャルが一番引き立つのは鍋料理。
今夜は豚しゃぶ。
しかし、いったい何人家族なのだ。うちは…。
「一匹と大食い」期待しとるよ
近頃、胃が弱っているからそんなに食えないよ。
結局喰ったけど…酒が先になくなった。
「一本じゃ足りんね」ニ三本買ってきて欲しい
飲むペースが早いんだよ。しみじみじっくり味わって。頼むから。
初めて雑誌で表ラベルを見たときは“大君”(たいくん)と勘違いした。しかし、それもあながち間違いではない。山廃の王様。飲めば判る。そう思わせる酒である。すぐに開けずとも数年寝かせて味の載りを愉しんでもいい。購入した酒販店で教わった。また、新たな贔屓の酒ができた。
(おわり)
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