鍾乳洞なみの付着物の湯 入之波温泉「湯元 山鳩湯」(和歌山県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

サルヒツの温泉めぐり♪【第146回】

入之波温泉 湯元 山鳩湯

℡)0746-54-0262

 

往訪日:2022年10月8日~9日

所在地:奈良県吉野郡川上村入之波

源泉名:山鳩湯

泉質:ナトリウム・カルシウム‐塩化物・炭酸水素塩泉

泉温:(源泉)39.6℃(浴槽)39.0℃

匂味:まろやかな塩味・甘味・炭酸味、淡い金属臭

色調:明るい黄褐色

pH:6.6

湧出量:380㍑/min

その他:掘削自噴・非加水・非加熱・かけ流し

■営業時間:(IN)15時(OUT)10時

■料金:(6帖間)12,000円(税別)

■7室(6帖~10帖)

■アクセス:奈良市内より2時間

■駐車場:(第一)4台、(第二)6台、その他縦列10台ほど

■日帰り:10時~17時 一般800円、子供400円

 

《肝心なものが剥ぎとられていた…》

 

ひつぞうです。奈良周遊一番の目的は温泉でした。登山もセットだったのですが、こう天気が悪くては中止も仕方がありません。目指したのは極上の泉質で知られる入之波(しおのは)温泉です。明治の頃まで「塩之葉」などとも記されていたそうです。舐めてみると、確かにミネラル豊かな塩の味わいがありました。“塩分豊かな湯の湧く山の端(は)”という意味かもしれません。以下、滞在記です。

 

★ ★ ★

 

奈良市内から一路南下を続けた。桜井市を経て三百名山・竜門岳の山裾から、吉野川に沿って山に深く分け入っていく。大台ヶ原や紀伊半島の脊梁、大峰山釈迦ヶ岳の登山口に至る道である。最後に訪れて既に六年の歳月が過ぎ去っていた。その吉野川の最奥に巨大ダムが現れる。アーチ式コンクリートダムの大迫ダムだ。入之波温泉へはこの堤体を渡って対岸の道にそれてゆく。

 

 

「ひゃー。でっかいダムだにゃー」サル

 

黒部ダムと同じ構造形式だよ。

 

 

なかなかスリルのある道だ。温泉宿まで4㌔の道程。ただし、すべてがこのような狭く嶮しい道ではないのでご安心を。クネクネ道の途中に「入之波温泉あと●㌔」と記された表示が安心材料だ。

 

 

ついた。建物は崖にへばりつくように建っている。昔の写真では屋根は赤いが、経年劣化で退色したらしい。最上階がフロント兼食堂、その下に宿泊棟、休憩室、湯小屋と続く。吐き出されたような析出物が生生しい。

 

 

駐車場は入り口前の四台と橋を渡った処に六台分のスペースがあるが、すでに日帰り客の車とバイクでいっぱい。仕方ないので崖下に路駐した。雨だし、落石が気になったが仕方ない。

 

 

少し早かったが入れてくださった。親子三代で経営しているのだろう。とても皆さん気さくでフレンドリー。

 

(夜撮影したものです)

 

玄関の靴箱に入れて木札は自分で管理する。紛失すると弁償しないといけない。

 

 

一段下の宿泊棟まで大女将に案内してもらった。

 

 

御覧のように階段を挟んで両翼に部屋が並ぶ。僕らの部屋は一番狭い六畳間の6号室。

 

 

部屋はこんな感じ。畳、壁ともに手直しされている。清掃も行き届いていて、山奥の秘湯宿にありがちな黴臭さは無縁だ。これならば若い女性客も安心だろう。

 

 

それでは早速温泉にいってみよう。

 

=入之波温泉の特徴=

 

■泉質

・塩分、鉄分、炭酸豊富な含炭酸重曹泉

・カルシウム分豊富で析出物の量はトップクラス

 

■部屋

・質素な湯治スタイル(洗面所共同)

・テレビ、金庫、エアコンつき

 

■料理

・丁寧な家庭風郷土料理

・鴨鍋が名物!

 

■もてなし

・気さくで丁寧なもてなし

 

=当館の攻略法=
 

■浴場

・男女別(入替なし)

・内風呂、半露天風呂の二箇所

・三年に一度くらいのペースで析出物を掃除する(22年春に実施済)

 

■宿泊者の浴場利用時間

・10時~21時/翌朝7時~9時

・夜間清掃

 

■日帰り利用

・10時~17時

・無料休憩室あり

・11時~15時まで食堂利用可

 

■営業期間

・11月~3月は火曜・水曜定休

 

日帰り客主体の経営なのだろう。10時から17時と、週末は暇がないほど日帰り客が押しかける。そのため、投宿初日の泉質は期待しないで、翌朝一番を目指そう。なお、毎分380㍑の大湧量なので、源泉さまに貼りつけば一日目でも十分泉質は愉しめる。ただし、極上泉につき、長湯はかえって体に悪い。ある程度のところで切り上げて、清潔な部屋から窓外のダム湖を眺めたりして、日頃の疲れをいやすのがお薦めだ。

 

 

壁も綺麗でしょ。トイレと洗面台は共同。ここだけ昭和スタイルだが、手入れは行き届いている。

 

 

こういう共用スペースは昔のまま。

 

 

一段降りると広い休憩ルーム。ここも綺麗に清掃済。

 

 

その奥には源泉様が見て取れる。実は元の山鳩湯は、大迫ダムが完成した1973年に水没してしまったそうだ。しかし「入之波温泉を絶やしてはならない」と一念発起した初代・中村英一さんは現在の場所、地下150㍍に新たな湯脈を発見した。以前は沸かし湯だったが、これぞ怪我の功名、源泉かけ流しの極上炭酸泉として甦ったのだ。

 

 

もう一段降りないとね。

 

 

ここで両翼に別れて男湯へ。

(※以前はこの隣から飲泉汲み場に続いていたそうだが、今は立入禁止の看板が出ていた。残念!)

 

 

ロッカーは100円コイン式。これは宿泊客も同じ。まあ、ほとんどの人は、そのまま使っていたけど。でもそうすると、開けると知らないおっさんのパンツがあったりして、夕食を前に食欲喪失という悲運に見舞われないとも限らない…。リスク満載である。

 

 

どうです。素晴らしいでしょう。もちろん、日帰り客が退散したあとの、絶妙な時間を狙って撮ったものだ。山鳩湯は夜は21時まで、朝は7時から9時までと、意外に宿泊者の利用時間が短い。チャンスは絶対逃せない。

 

「相変わらず忙しいね」サル全然寛ゲナイニャ

 

 

しかし、すごい析出成分だ。実はこれ、杉の丸木が並んだ柵。そこに豊富なカルシウム成分がコーティングされて厚さを増したのだという。

 

 

最初はこんな感じ。そのため、三年に一度はスタッフ総出でスケールの除去作業を行うそうだ。それが今年に当たっていた…。詳しくは後で触れる。

 

 

源泉様はこのようにして天井から落ちてくる。

 

 

浴槽が広いので、端っこにいると非常にぬるく感じるが、落ち込みに寄ると、確かに39℃ほどの適温と判る。ここは段差もあって腰かけにちょうどいい。抑えるべきポイントとして紹介しておこう。

 

「長湯するにはいい温度にゃ」サル

 

ほんとはまずいんだけどね…。湯あたりするから。

 

 

自己責任で飲泉してみる。ほのかに甘味を伴う塩の味だ。つまり、ダシを飲んでいるように旨い。鉄分由来の金気もさして気にならない。逆に炭酸はあまり感じなかった。泡付きもゼロだったし。

 

 

この落ち込みから屋外の半露天風呂に続いている。

 

 

こんな感じ。なので泉質的には内風呂に劣る。でもね。山鳩湯の真骨頂はここにある(いや、あった)。

 

 

おいおい。肝心かなめの鍾乳洞のような塊がなくなってやんの。

 

「取ったって」サル

 

 

あー。なんと無残なことよ。と嘆いても仕方ない。大女将に伺ったところ、三年程度で湯船の底と露天風呂の木枠が厚みを増して、特にこの木枠を越すのに、大股を開かないといけなくなる。男性はいいかもしれないが(ほんとはよくない。お互い様ならぬ、お互い玉さがりになってしまう)、女性の場合は…かなり深刻だ。経営者としての気遣いは理解できる。

 

「確かに…こまゆ」サル

 

 

まさか、満を持しての往訪が撤去と重なるとは…。

 

「やっぱりMr.バッドタイミングだのー」サル

 

因みに女子風呂は…

 

 

こんな感じで一直線。少しデザインが違うんだね。

 

 

お湯の肌触りはヌルヌルでもキシキシでもない。じんわり効いてくる感じ。

僕のように神経痛や腰痛持ちには効果がある。ということで数度に分けて湯治だ。

 

 

「おサルも湯治すゆ」サル♪湯治湯治

 

キミはどこも悪くないでしょ。

 

「あらま」サル

 

 

ナトリウム570㎎、カルシウム170㎎、塩素920㎎、そしてなんと、炭酸水素2127㎎!まさに高濃度の温泉だ。しかし、火山もない紀伊半島で、なぜ、このような高濃度の温泉が湧くのか。それは、日本の造山運動の中心である構造線が走っているためだ。プレートの活動によって、マグマが働き、豊かな熱泉を生み出すわけよ。

 

「おサル、部屋でお酒飲む」サルソーイウ話ハモウヨイ

 

はいはい。

 

 

そろそろ夕飯の時間だよ。

 

=夕 食=

 

 

夕食は18時から。一階の食堂で。座敷とテーブルを選べる(以前はすべて座敷だったみたい。バリアフリーだね)。結果論だけど、照明は座敷の方がいい。綺麗な映える写真を撮りたい女子は座敷を選ぼう。

 

 

鴨胸肉の燻製。山菜塩蔵(ゼンマイ、わらび、蕗)。小鮎とミョウガ。堅豆腐。エノキのおひたし。

 

 

そして山鳩湯名物の鴨鍋。とっても具だくさん。二人で食べるにはすごいボリューム。

 

「でも鍋は不思議と食べられるね」サル

 

売店で猪鍋、鴨鍋セットが販売中。日帰り利用の方どうぞ。

 

 

オリジナルレーベルの生貯蔵酒。酒蔵確認するの忘れていた…。きりっとしたアル添酒。鍋に合う。

 

 

最後はうどんで。コシがあって美味かった!

 

 

デザートは抹茶アイス。

 

 

珍しく、この晩は僕が布団に倒れ込んでしまった。最近ちょっとお疲れ気味だったしね。

 

 

他方、おサルは貸し切りの湯船を満喫したそうな。

 

「よかったよー」サル

 

=翌 朝=

 

 

朝一番を狙った。想像どおり、表面には析出成分の膜ができていた。バージン湯は意外にぬるかった。夜中に湯を抜いて溜めなおしたせいだろうか。

 

(女湯の半露天風呂です)

 

二日目は雨。山の風景も霧雨に煙っている。

 

=朝 食=

 

朝食は午前八時から。

 

 

朝ごはんも美味しかった。たった七部屋しかないので予約の競争率は高い。人気があるから部屋数を増やせば集客もあがるだろう。しかし、家族経営にはこれが最適な規模なのかもしれない。

 

 

釜炊きのご飯は温泉水で。だから少し黄色味を帯びている。

 

 

艶艶。そしておこげがまたウマい。

 

 

「ご馳走さまでした」サル

 

朝は九時までで風呂の利用は終了する。なので、もう一風呂浴びたい人は早めにね。

 

「忘れてた!髪洗わないと!」サル

 

連休二日目。みなさん次なる観光地を目指すのだろうか。九時過ぎには続々とチェックアウトしていった。最後の客となって、大女将に挨拶して玄関を出た。外には既にソワソワしている日帰り客が、大勢陣取っていた。

 

「…人気だね」サル残念ナガラヴァージン湯デナクッテヒツ汁ダヨー

 

 

湖面にかかるバランスドアーチ橋から温泉宿を見てみた。ハト谷に貼りつくように建物が見えた。先代の努力の結晶は、これから先も多くの温泉好きに支持されて続いていくだろう。そう願いつつ、緑濃い秘境の温泉を後にして、再び桜井市方面におりていった。

 

「浴槽は綺麗になってたけど泉質最高だったにゃ」サル♪大満足

 

(つづく)

 

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