サルヒツの温泉めぐり♪【第145回】
咲花温泉 一水荘
℡)0250-47-2231
往訪日:2022年9月23日~24日
所在地:新潟県五泉市佐取7209
源泉名:咲花温泉6号井
泉質:含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉
泉温:(源泉)48.3℃(浴槽)約42℃
匂味:豊かな硫化水素臭・無味(香ばしさの余韻あり)
色調:透明なエメラルド色
pH:7.8
湧出量:450㍑/min
その他:動力揚湯(配湯式)・非加水・消毒濾過
■営業時間:(IN)14時 (OUT)10時
■料金(一般和室):13,000円(税別)
■12室
■アクセス:磐越道・安田ICから約10分
■駐車場:25台
■日帰り利用:要確認(宿泊者が多い時は利用できません)
《やっぱりダイヤモンドよりもエメラルド》
ひつぞうです。再び颱風に蝕まれた三連休。最終日に僅かな期待を寄せた僕ですが、水曜日の就寝前、ブログの原稿書きに忙しい僕の真横に棒立ちになって、おサルがブー垂れてこう言いました。
「三連休どこも行かないのちにゃ…」
最終日は晴れそうだから登山に行こうかなって…。
「どこに」
まだ決めてないけど…。丹沢?
「そー言ってまた家でゴロゴロじゃないのちにゃ」丹沢アキタ!
拗ねたまま寝室に引っ込んでしまいました。
仕方ない。ひょっとするとキャンセル出ているかも。颱風の影響が少ない新潟の温泉が脳裏に浮かびました。ダメ元で行きたい宿に当たってみよう。以前から気になっていた咲花(さきはな)温泉の一水荘の予約サイトを検索すると…あれ?ひと部屋空いている。え!マジ?おサルのもとに駆け寄り、事の次第を説明しました。
「え!温泉行けるのち?」夢なら覚めないでくれ
夢ではありませんでした。以下、往訪記です。
★ ★ ★
金曜日。朝から雨だった。渋滞も見込んで早めに出発する。途中、圏央道、関越道と順調に渋滞。関越トンネルを越えたところで、定刻どおりの投宿がみえてきた。新潟市内回りでわざわざ遠回りする必要もない。三条燕ICで一般道におりて五泉市を目指した。最後に訪れたのは残雪期の銀太郎山~矢筈岳縦走。あれからコロナ禍が席捲し、二年の間、関東の人間は新潟県民の忌み嫌うところになってしまったのだった。
「ヒツ、落ち込んでたもんね」
だから、こうして再訪できるのは掛け値なしに嬉しい。
阿賀野川沿いに国道290号を進む。黄色い看板が見えてくると温泉街はすぐだ。
全国的にはややマイナーな咲花温泉も新潟市民には憩いの温泉郷。今でも複数の宿が軒を連ねている。組合管理の配湯ゆえに“自家源泉”や“かけ流し”ブームに取り残された感もあるが、効能豊かな個性的な泉質としてマニアにも支持されている。
一水荘はロードサイドからJR磐越西線を越えた一画に建っていた。
脇にそれてこの車一台分の踏切を渡る。
そこが一水荘だ。
赤い欄干の小さな橋を越えると四台分のスペースがある。ここに止めて定刻を待つ。一水荘のチェックイン開始は14時とやや早い。
時間前だったが入れてもらえた。大旦那じきじきの案内である。最初に貸切風呂の予約についての説明がある。一番風呂が取れた。早出に拘った理由もここにある。早速部屋まで若女将に案内していただく。
共同の大浴場は向かって左の突き当り。貸切風呂はこの階段を昇りつめた廊下の奥だ。
ここが和モダンの広めの部屋の並び。部屋にも拘りたい処だが、なにぶん直前の予約。部屋はおまかせである。
おまかせ和室は反対の並び。食堂の前を通過する。
その食堂の角を回り込んで直進。
ここで両翼に分かれる。左に僕らの部屋がある。
ここ《水苑》の間が今夜のお部屋。
窓外には雰囲気の好い空間が広がっていた。
内部はこんな感じ。元は八畳ひと間の一番狭いタイプだったようだ。
だが、奥の広縁を潰して三畳足してトイレと洗面台を後づけしたらしい。
なので、御覧のようにとても綺麗で清潔。これならばどの部屋でも十分満足できると思う。
部屋の配置は御覧のとおり。
それでは温泉探検へ!
=一水荘の特徴=
■泉質
・エメラルドグリーンの硫黄泉
・動力揚湯の配湯式(循環濾過)
■部屋
・和モダン、一般和室の二種類あり
・エアコン、金庫、テレビあり
■料理
・ひと手間かけた田舎風郷土料理
・こだわりの日本酒あり!
■もてなし
・笑顔と会話ありの家族経営のもてなし
=当館の攻略法=
■浴場
・大浴場(内風呂)+貸切半露天風呂
・男女入替なし
■利用時間
・14時~23時、翌朝6時~9時
■貸切風呂の利用法
・フロントでの事前予約制
・利用時間30分
・フロントで鍵を借りる
・一回無料、二回目以降は有料
■日帰り
・時節柄週末は対象外と思われる
貸切風呂のスタートは14時30分から。それまで時間があるので、大浴場で汗と垢を落とす。利用時間は30分と短め。なのでチェックイン後余裕をもって確保した方がいいだろう。内風呂、露天風呂ともに泉質は同じなので、どちらかでバージン湯をゲットすれば申し分ない。ただ循環なので、いずれもできるだけ早めに浸かった方がいい。湯の入れ替えは一週間が目安らしい。推測だが、週末前に替えているのではないかと思う。
では内風呂へ。まだ後続は一家族だけ。
暖簾の掛け替えはない。その理由は入って判った。
とにかく天井が高くて開放的。
籠も三段ある。そしてマイスリッパ用のタグもある。
ふむふむ。では心して入場。
おお!これは!美しい緑色!
中に入ると豊かな硫化水素臭で満ちていた。新潟らしくややゴムが焦げたような匂いも感じる。
左がぬる湯。右があつ湯。仕切りで温度調節されているだけ。加水はない。
硫黄成分の影響でカランの金属部分やタイルもすぐに経年劣化するそうな。
それにしても美しい。比較的近傍の月岡温泉に似ているが、あちらよりもマイルドな感じだ。湯の花も沈殿していないので見立て通りに清掃直後と思われる。勇気を奮って飲泉、いや、テイスティングする(味だけみて吐き出した)。強烈な鹹味や塩味を想定していたが、意外に無味。少し経つと、焦げ目のついたパンのような、香ばしい香りが口中に残る。
当然あつ湯が源泉さまなので、しばし湯治タイム。神経痛とドライアイがひどいのだ。
「ブログ中毒のせいだよ」
使命感と言って欲しい。二人の思い出のための。
そういえばさ。ここの湯って、熱いと透明になって、ぬるすぎると白っぽくなるんだよ。だからエメラルド色で見られてよかったよ。国見温泉や七味温泉と同じだね。
これ、見て判るだろうか。実は前庭の先10㍍にJRの線路があるのだ。ときおり列車が通過する。それでこっちが常時男湯なのである。
「そりゃ入れ替えできないにゃ」
ちなみに女湯はというと…
こんな感じ。線対称になっているだけで意匠は変わらない。
「源泉さまを暫く独り占めできた♪」
ということであわただしくも14時30分になった。いったんフロントに戻って貸切風呂の鍵を借りた。
暖簾をくぐって鍵を開ける。
二つ目の潜り戸を開けると草履がある。
これで離れに向かうのだ。
ここも超清潔!
「女子ウケしそうにゃ」
手前に洗い場。普段であればおサルに背中を流してもらうのだが。30分は短い…。
一転して貸切風呂は岩風呂だ。
四囲を緑に囲まれていい雰囲気。紅葉するともっと素晴らしいだろう。
硫化水素以外にカルシウムも豊富みたいね。
「極楽にゃ~」
よかったよ。二日前までおサル般若の形相だったよ
(成分表)
ナトリウム(233㎎)、カルシウム(76㎎)、塩化物イオン(286㎎)、硫酸イオン(282mg)が群を抜いているね。肌を擦るとキュキュッとする。アルカリ性の美人湯で、疲労回復、代謝促進にも効果がありそうだね。
泉質が強烈なので、ここで一度部屋に戻ることにした。本を読んだりおしゃべりしたり。温泉宿にはテレビやスマホはいらない。
=夕 食=
そして時刻は午後6時。夕食である。一水荘はメシが旨いらしい。なので恒例の新潟ラーメン行脚はこの日は止して、おにぎり一個で我慢した。正解だったな。うひひ。
全員ここです。
この日は満室。でも一巡目を選ぶお客は少ないようで僕らだけ。
(※6時、6時30分から選べます)
まずはウェルカムビールのサービス。
「ぷひゃー!ビール飲むの久しぶりにゃ」ウメー♪
こないだ浅草橋でアサヒビール飲んだでしょ。
「…」ガクゼン
そして桃の食前酒。
八寸は12時の位置から時計回りに…
カキノモト(食用菊)の胡麻ダレ和え、半熟卵、蓮根のショウガ味噌和え、サンマのワタ焼き、ミョウガ甘酢漬け、南瓜、コケモモ。
とても美味しかったので全部掲載!
丸茄子の煮びたし
ゴーヤのミョウガ和え、枝豆
クリーム豆腐
最初は地元の《菅名岳・生原酒》。60%精米の五百万石で醸した、新潟らしいすっきりしたテイスト。旨味、甘味の輪郭がはっきりしている。料理に合う酒だね。
すき焼きはスタッフにおまかせ。
魚すり身のおすまし
小ぶりながら立派なスキ焼き鍋だよ。
「うまそー」
おサルは関西風スキ焼きが大好物なのだ。
およそ火が通れば卵をといて頂戴する。
刺身(真鯛・蛸・甘エビ・鮪)の氷室盛り
実はメニュー以外にも酒はあるらしい。
なにこれ。一般販売していない《金鵄盃・じゅんぎん生》。当館のプライベートブランドで生き残っているそうだ。それと《蒲原・純米吟醸生》。地元消費用の少量生産品。こういうお酒がいいよね。
一合ずつ注文。金鵄盃はキレのある越後の酒。味もコシもしっかりしている。蔵の造りで鑑評会常連だったというから驚き。他方、蒲原はもっと穏やか。純米吟醸ながら清酒らしい男っぽい骨格だった。
「酔ってよく判らん」ひっく
五泉市の名産レンコン“五泉美人”をつかった郷土料理の蓮蒸し。鶏ひき肉やキノコなど、数種の具材の旨味がしっかり餡と絡んでいる。繋ぎが卵白なので柔らかいね。あしらいが本ワサビなのが嬉しい。
最後は味噌汁とご飯だ。新米ではなくて、少しボソボソなのが唯一珠に瑕だったかな。新潟だけに米にも拘ってもらえれば…
「もっと嬉しかったかも」
それでも十分美味しかったけれどね♪ ご馳走様でした。
デザートのプリンも極上。神田酪農の安田牛乳とキムラファームの卵。一度食べたら忘れることのできない、とろとろふわふわプリンだよ。ここだけの味で美味さは保証します。
ということで、このひとはいつものごとくである。決してやらせではない。
一方の僕はまだまだ元気なのだが、神経痛になってアルコールの量を抑えたので、ここで打ち止め。読書タイムだ。今読んでいるのは鳥類学者の川上和人先生の著書。めっちゃ面白い。
半身浴しつつ読書を続けた。保養客の多い宿では遅い時間は誰も来ない。
=翌 朝=
午前六時起床。ちょうど浴場も暖簾がかかる。
意外にも朝一番は大混雑。
気づいた?ここの湯の花って黒いんだよ。
そもそもなぜエメラルド色になるのか。それは黄色味を帯びる硫化水素分子がレイリー散乱を起こすためと云われる。この過程は以前投宿した国見温泉(岩手)で学習済み。だが、ここ一水荘では「金属カチオンが原因」と説明されている。金属カチオン、つまり金属陽イオンは(成分表を判読する限り)ストロンチウムということになる。だけどレイリー散乱はケイ素やカルシウムの働きによるもので金属イオンは関係ないはず…。これって温泉アルアルな“トンデモ理論”だろうか。
「以上ヒツの戯言にゃ」
7時30分から朝飯である。
わーまた沢山あるんだね。
このあたりは普通の宿の朝食。
海老のお頭入り。
塩サバの文化干し
香りが逃げないようにフィルムで包んで管理した特産品。脂がのっていてご飯が軽く三杯はいけた。二杯でやめるのに苦労したよ。
「結局二杯食べとるし」ダメナヒト
大根と舞茸の青唐辛子味噌のホイル焼きも美味かったな。神楽南蛮かな。
「おうちでもできそう。真似してみる」
朝食も大層満足しました。
最後にもう一風呂浴びて部屋に戻った。まだ十分時間がある。このあとどうするか。そうだ。やはりあの店に行かねば。ということで、もてなしへの礼を述べて暇乞いした。雨はこの日も止む気配はない。今年の颱風は意地が悪い。
「とってもベリーハッピーだったにゃ!」蓮根買って帰る
(つづく)
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