サルヒツの温泉めぐり♪【第139回】
七里田温泉 下湯
℡)0974-77-2686
往訪日:2022年7月24日
所在地:大分県竹田市久住町大字有氏4050
源泉名:七里田温泉下湯
泉質:含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉
泉温:36.3℃
臭味:鹹味・苦味・鉄味・炭酸味
色:無色透明
pH:6.3
その他:掘削自噴・無濾過・非加水・非加熱・かけ流し
■営業時間:8時~21時(第二火曜のみ)8時~20時
■料金:500円
■アクセス:大分市内より約1時間
■駐車場:20台
■利用時間:1時間
■飲泉可能
※現在コロナ禍で入場制限中です
※木乃葉の湯に停車・支払いします
※利用時に鍵のデポ1000円を徴収されます
《猛烈な気泡に少し怯んでしまった》
ひつぞうです。大分湯けむり紀行の締めは七里田温泉・下湯(したんゆ)でした。国内最高レベルの炭酸泉。温泉マニアなら知らない人はいない。そんな“名湯”です。遙々大分までやってきて危うく往訪の機会を失うところでした。危ない危ない。以下、往訪記です。
★ ★ ★
ということで、寒の地獄温泉を辞した僕らは、牧ノ戸峠を越えて久住町の七里田温泉を目指した。
いずれの高速ICからも離れているために、訪ねるだけで一苦労。大分市内から国道442号経由で約一時間。近傍まで来ればこの看板が現れる。
ついた。七里田温泉館・木乃葉の湯。下湯(したんゆ)に入るにはここで料金を前払いして鍵を受け取る。1998年に旧久住町が建設。2015年に民間に払い下げられて現在に至っている。
到着したのは11時頃。下湯の浴場は男女別だが、6~7人も入れば窮屈に感じるほどのスペース。そのため時節柄、入場制限中だった。間の悪いことに一番混雑しているらしく、30分以上待てばゆっくり入れるという。待つことにした。このあと特段の予定もないし、あわよくば貸し切りで入浴できるかもしれない。
=七里田温泉下湯の特徴=
■泉質
・最高レベルのラムネ炭酸泉
・換気しないと炭酸ガス中毒する可能性もあるレベル
■利用法
・木乃葉ノ湯での前払い制
・鍵を受け取る
・利用時間:1時間
■浴場
・内湯のみ
・洗い場なし
・男女入替なし
=当館の攻略法=
基本的にバージン湯を好む僕だが、この下湯は猛烈な湯量を誇る。なので常時バージン湯といって差し支えない。加えて現在入場制限中。となれば客足が鈍る昼時が狙い目。ま、どの道チェックアウト後の往訪なので自ずとそうなるわけ。果たして貸し切りになるかどうか。
★ ★ ★
管理人は地元のおばさんなのだが、とても腰が低くて、待たせることを大層恐縮している。こっちが心苦しくなるほどだ。とってもいい人なのだろう。そんななか、暇つぶしに掲示板を読んでいた僕は、思わぬニュースに驚愕した。
なんと!下湯の建物が新築されるという。またこれは綺麗になって…。これではせっかくの鄙びた感が台無しではないか。と言った処で、それは一見の観光客のエゴ。時流を受け容れるしかない。ということで営業は10月31日まで。11月から工事着工し、来年三月には完成予定。これも巡りあわせ。いいタイミングで往訪したと喜ぼう。
今年2022年1月22日に発生した地震の影響で、下湯の湯量が10%まで減ったそうだ。その後5月には持ち直して、むしろ泉質は良くなっていた。しかし、2015年の熊本地震の例もある。もし完全に止まってしまったら地元の収入源が奪われてしまう。そこで改築案が急浮上した。一方で、世間には僕のような輩がいるらしい。もう暫らく今の施設を味わいたい。そんなファンの要望を聞き入れて10月までの営業継続となった。
「ふだんメッチャ間の悪いヒツにしては超絶間がいいんじゃね」
人生の運の大半をここで使った気がする…。
いよいよ時間になった。下湯までは少し道なりに進んで右折。川沿いにあると言われた。
ここを右ね。
なるほど。小川の畔に看板が。
奥の黄色い建物がそれらしい。
ついた。“日本無類”という表現が奥ゆかしい。入浴不可能な源泉も含めた場合、本当に日本一か誰も調べたことがないので、歯切れの悪い表現になったそうだ(笑)。
近くの長湯温泉《ラムネ館》も捨てがたいが、今、目指すべきはここだろう。
「両方行けばいいんじゃね?」
日帰り温泉ラリーって性に合わないのよ。
「サルも。区別つかなくなる」
まず鍵で戸を開ける。
早い時代から温泉として認知されていたみたい。寛文三年(1663年)には湯小屋が立って商売が始まっていたそうだ。岩屋、広瀬屋、鍛冶屋、恵比寿屋。結構な数があったんだね。
「湯処も下湯だけじゃなかったのきゃ」
神の湯、御殿湯、上の湯、下の湯、新湯など、幾つもあったらしい。昭和に入って幹線道路(久住庄内線)が開通すると、旧道筋の温泉街は急速に客足を失ってしまったそうだ。
今は温泉宿はない。では男女別に。
脱衣場も充分綺麗。湯船は一段下にある。
(二人先客がいたがひとり去り二人去りして一瞬だけ貸し切りに♪)
結構深い。そのため、嫌でも他の客の頭の脇を大股開いて入浴する。不作法の限りである。
すかさず源泉様に貼りつく。炭酸ガスが充満しないように換気扇が舞っていた。コップをしっかり濯いで飲泉してみた。まろやかな鹹味、炭酸の味に、マグネシウム由来の苦み。飲んでもベリー美味い。以前、マツコの番組で《飲んでも旨い三大源泉》として紹介していた。濃密な炭酸はバリウム検査みたいに猛烈に喉元にこみあげてくる。他にお客がいる際は(時節柄)要注意だ。
すごいね。注ぎ口から遠く離れていても、炭酸飲料をぶち撒いたように泡立っている。以前訪れたどの炭酸泉よりもすごい!
析出成分もすごいね。鉄分豊富なので赤い湯の花が沈殿しているけど、湯そのものは無色透明。
もうびっくり。炭酸泉は血管を拡張させるから疲労回復にも効果がある。そして、ここも絶妙なぬる湯。
「大分はぬる湯天国だにゃ♪」
ドバドバのオーバーフロー。
あっという間の一時間だった。
いろいろ忙しく取材している僕を見て、管理人のおばさんが詳しい成分表(コピー)を見せてくれた。
含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉
泉質名称でこんなに長いの、恐らく初めてじゃないかな。
一度は訪ねるべし。いい湯だったよ。
満足して一路大分空港に向かった。予報通り次第に雲が目立つようになり、別府を通過する頃にはポツポツ降り始めたが、大過なく空港に戻ることができた。最近トラブル続きなので二人ともホッとした。搭乗まで二時間ある。ラウンジの鮨屋で一杯やることにした。週末だったし、ネタは限られていたが、ちえびじんと宗麟を二合ずつ冷酒で頂戴する。おかげで普通の刺身に花が咲いた。これにて大分旅行も終了。
気がつけば富士山と駿河湾。日本は広いようで狭い。
今回はどの宿、どの施設でも笑顔と優しい言葉に触れてばかりだった。
怒りっぽい、取っつきにくいのが九州人というイメージがあるが、決してそうでもなかった。
「カガミを見たまえ」
昭和の九州男児はすでに化石の部類らしい。
(おわり)
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