国内随一の冷泉 寒の地獄温泉「寒の地獄旅館」(大分県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

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ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

サルヒツの温泉めぐり♪【第138回】

寒の地獄温泉 寒の地獄旅館

℡)0973-79-2124

 

往訪日:2022年7月22日~23日

所在地:大分県玖珠郡九重町田野257番地

源泉名:寒の地獄

泉質:単純硫黄泉

泉温:13~14℃

臭味:ほのかな硫化水素臭・極僅かな収斂味

色:無色透明

pH:4.3

湧量:2160㍑/min

その他:無濾過・非加水・非加熱(内風呂加温)・かけ流し

 

■営業時間:(IN)15時(OUT)10時

■料金:(本館)16,500円(税別)

■12室(本館4室+新館8室)

■支払い方法:CDカードOK

■アクセス:九重ICから約25分

■駐車場:約20台

■日帰り利用:(冷泉のみ)9時~17時(一般700円 小人400円)(水曜定休)

※日本秘湯を守る会会員

※冷泉は水着着用マストです

 

《一瞬入ることを躊躇う神秘の色》

 

ひつぞうです。投宿二箇所目は寒の地獄温泉でした。冷たさでは国内随一ではないでしょうか。冷泉好きな僕らの憧れの聖地にいよいよ迫ります。以下、往訪記です。

 

★ ★ ★

 

福元屋を辞した僕らは宝泉寺温泉の鄙びた温泉街を経由して一路、長者原(ちょうじゃばる)を目指した。言わずと知れたくじゅう連山の登山基地である。おサルと出逢う二十数年前までは、幾たびか、山の会のメンバーとともに法華院温泉に泊まって安酒を酌み交わす山の悦びに浸った。

 

久しぶりの長者原。着いてみて驚いた。駐車場は遥かに綺麗になり、東屋など憩いのスペースもできている。モンベルフレンドシップタウンの恩恵か。よく判らないが、山に登らない爺さん婆さんたちが、ベンチ持参で高原の憩いの時間を味わっていた。近くの土産物屋に走っていったおサル。さすがだ。ちゃんと大分名物・とり天とクラフトビールを手に戻ってきた。

 

「ビールめっちゃ高い!」サル

 

これモンベルのクラフトビールだもん。でも旨いよ。

 

「おごったげるだよ」サル

 

なんかあとが怖いけどあせ

 

チェックインまで四時間余りあると、余裕をぶちかまして酔い覚ましの昼寝をしていたら、もう二時半を回っていた。慌てて片づけて寒の地獄にむかった。といっても数分程度の距離なのだが。

 

 

ついた。ロードサイドに大きな看板が出ている。

 

 

高地トレーニングに最適な寒の地獄は陸上部の合宿のメッカ。この日も某有名企業の陸上部員が合宿中。なので一般客は四組だけだった。ある意味、風呂は空いててラッキーかも。

 

 

発見は嘉永二年(1849年)と言われる。宿の経営は昭和三年(1928年)から。その後、湯治宿として賑わいを見せてきた。平成のリニューアル後は、女子好みなテイストを多分に盛り込んでいる。温泉マニアから一般客まで幅広く満足できる宿と云えるだろう。

 

内湯棟と宿泊棟がコの字に両脇を固め、中央に玄関(事務所棟)がある。冷泉は裏手に独立している。

 

 

源泉がせせらぎとなって流れていた。

 

「すっごく冷たいよ」サル

 

すぐそこの地下から湧き出ているね。

 

 

心なし黄緑色しているのは硫化水素の影響かな。

 

 

早速記帳して、まずは冷泉の利用法のレクチャーを若女将からじきじきに受ける。最初はメチャ冷たいけど、二~三分我慢すれば平気になる。どうしようもないほどの震えがきたら、あがって隣りのストーブ小屋で浸かった時間の二倍の時間、身体を温める。これを《炙りこみ》と呼ぶ。この一連の動作をニ~三回繰り返すのだそうだ。

 

「わりにチョロそうだにゃ」サル

 

大丈夫?

 

「沢登り用のウェア着るし」サル

 

やる気満々だね。

 

 

お部屋は二階だ。昭和テイストを求める僕らは本館。

 

 

新館側は内外装ともにリニューアル。

 

 

ここが本館。廊下はちょっと地味(笑)。

 

「でも一番広い部屋だって♪」サル

 

僕らの部屋は角部屋の《うつぎ》の間だった。

 

ほんとだ。広い!

 

 

10畳間の広縁付き。充分なスペースだね。

 

「お菓子の他に茹で卵まであるよ」サル

 

いいじゃん。オサル好きでしょ。茹で卵。

 

 

「塩つけすぎなんじゃね」サル

 

高血圧になりそうだあせ

 

 

ということで、早速神秘の冷泉にいこう!

 

=寒の地獄旅館の特徴=

 

■泉質

・水温13~14度の冷鉱泉。しかし流水なので体感的には零度

・単純硫黄泉だが万病に効くと言われる

 

■利用法(冷泉)

・水着着用。混浴スタイル

・冷泉と暖房室を交互利用

・飲泉可能

・7月~9月限定

 

■浴場

・冷泉…日帰り開放

・男女別大浴場×各1、家族風呂×2…宿泊者のみ

 

■部屋

・新館…ロッジ風モダンテイスト

・本館…昭和の温泉宿テイスト

・いずれもトイレ共同、洗面台部屋つき

 

■料理

・オシャレで美味しい料理、ボリュームあり

・酒としっかりマリアージュ

 

■もてなし

・八面六臂の活躍の女将さんがとっても明るく親切丁寧

 

=当館の攻略法=

 

■利用時間

・(冷泉)15時~18時、翌朝8時30分~チェックアウト

・(内湯)15時~23時、翌朝6時~チェックアウト

 

■日帰り利用(冷泉のみ)

・9時~17時

 

■家族風呂

・岩湯、切石湯の二箇所(檜湯は現在不使用)

・鍵が開いてれば利用自由

・目安45分

 

■大浴場

・加温泉(熱湯・ぬる湯)+冷泉

・翌朝6時男女入替

 

いかがだろうか。意外に冷泉の利用時間が短い。滾々と湧いているのでいつ入浴してもバージン湯。いやバージン水。到着一番に入ることにした。つけたしの家族風呂は開いている時間に入ればいい。ということで大浴場で汗を流して早速、冷泉に向かった。

 

 

玄関で下履きに替えて移動する。

 

 

ストーブ用の大量の薪がすごい!全部スタッフが割るらしい。

 

 

おーっ!想像していたよりも広くて深い!

 

(しばし感動)

 

浴場は中央で仕切られている。

 

 

なぜこんなに神秘的な緑青色なのだろう。銅成分が混入しているとか?いずれにしても最初に入ろうと思ったひとがすごい。

 

 

源泉は黒い覆いの下。

 

 

手前は飲泉所。飲んでみる。思ったほど硫化水素の収斂性は感じない。幾らでも飲める。飲めばいいってものでもないけど。

 

 

つわ者はここに頭を突っ込むそうだ。そこまで頭に悪いところないつもり。

 

「いーや。ヒツは頭を冷やすべきだ」サル

 

酒熱から?

 

 

なになに。“最初の1~2分は大変冷たいが、そのうち感覚がなくなる”?不穏な表現だね…。“それからは各自の体力と忍耐で忍んで、震えが止まらなくなったら、急いであがって火で身体を炙れ”?信じていいのだろうか。これこそまさに民間療法=似非科学なのではないだろうか。

 

 

しかし、信じる者は救われる。黙って入ることにした。

 

 

男女別の更衣室で着替えておサルと合流。

 

どう。大丈夫そう?

 

「たぶん。ウェア着ているしにゃ」サル

 

登山の渡渉のたびにサメザメと泣き出すおサルのこと。大丈夫かな。

 

 

お!入りましたね。

 

 

「つ、つめたい!足場が不安定すぎる」サル

 

腕組みすれば寒さを感じにくいってよ。

 

 

浸かりましたね。三分頑張れ!

 

 

「もうムリ!」サル

 

なんだよ。バスタブに落ちたにゃんこみたいに。たった10秒だよ(笑)。

 

「じゃ、自分もやっておみよ」サル

 

 

なんで大騒ぎするのか私にはさっぱりですな。

 

 

5分経過。

 

「入れてる!」サル

 

その後10分くらい入っていたが…飽きた。とにかく水中で身動きしないのがコツ。そのうち慣れる。

 

 

湧出部を覗く。やっぱり緑青色。銅イオンが含まれているよね、これ。

 

 

反対側からも常時気泡が。ガンガンに湧いている。

 

そろそろ炙り込んでみよう。

 

 

なかなかの灼熱。

 

(陸上部員たちの青春の悶えが壁一面に)

 

「今日はこれくらいにしといてやる」サル

 

なに威張ってんの。負けたでしょ。

 

 

もう一回だけチャレンジ。20秒で敗退したけど。

 

「もうよい。満喫すた」サル

 

あんだけ来たい来たいって言っていたのに(笑)。

 

 

ということで、家族風呂で温まることに。

 

 

現在二箇所のみ利用可能。まずは切石湯へ。

 

 

脱衣場は綺麗。

 

 

立派な石風呂だね。熱いくらいだ。不思議と窓を開けても虫が入ってこない。

 

 

岩湯も入っておいた。中央の柱は凭れると動くの注意しよう。

 

《成分表》

 

硫酸イオンは比較的多め。それ以外は、ナトリウム、カルシウムかな。確かに単純硫黄泉。

 

一旦部屋で休憩して、夕食前に大浴場へ。翌朝入替えになるからね。

 

 

陸上選手たちはあくまで練習にきているので、浴場で出逢うことは皆無だった。

 

 

ぬる湯、熱湯、そして、冷鉱泉の三槽に分かれている。

 

 

ご覧ください。この源泉さまの美しいこと。

 

 

ここにも茹で玉子。結局一個もらってしまった。

 

「食うんかい!」サル

 

 

竹田市の郷土玩具の姫だるま。会津の赤べこと同じで無病息災の守り神でもある。早く日常が戻ってこんかなあ。

 

=夕 食=

 

宿での時の経過は早い。夕食になった。

 

 

お昼はとり天+ゆで卵×2個だけで我慢したので大丈夫。

 

《献立表》

 

「すごいボリュームにゃ」サル

 

 

食前酒(梅酒)

 

いよいよお料理。

 

「立派だにゃあ」サル

 

料亭並みだね♪

 

 

前菜九品

(左上からZ順に)

 

①馬鈴薯鮪酒盗添え

②枝豆小海老炒め

③干し椎茸と貝柱アヒージョ

④ムール貝と彩豆山椒甘辛焼き

⑤地獄風卯の花

⑥南瓜と薩摩芋のハニーローストナッツ添え

⑦ニジマス昆布締めなめろう

⑧燻製鴨白トリュフの香り

⑨いぶりがっこクリームチーズ和え

⑩塩茹で落花生

⑪炙りへしこ

 

「完全に酒の肴だの」サル

 

 

国東の萱島酒造《西の関》。普通酒なんだよね。史上初の大吟醸を醸した蔵として名高いんだけど。(日本酒応援団㈱リリースの限定《KUNISAKI》は瑞々しい直汲み無濾過原酒で絶品だった。どうしてこの酒質で勝負しないのか不思議。)

 

 

オサル。恐る恐る口にする。

 

「おう!ザ・日本酒だにゃ」サル

 

やっぱり?酒はも少し考証の余地ありかな。大分にはちえびじん宗麟だってあるしね。ただ、出しても注文がなかったら続かないけれど。麦焼酎だけではないですよー。

 

 

オクラの胡麻和え

鮎塩焼き

白きくらげ梅肉えのき和え

 

ちょっとしたひと手間が嬉しい。鮎は炉端でゆっくり焼いたもの。

 

 

豊後牛と九重夢ポーク盛り合わせ

 

鉄板はアツアツになっている。なのでいつ焼いてもいい。好みの問題だ。

 

 

八寸

 

石尊蒟蒻辛子酢味噌

湯葉刺し牡蠣

鶏たたき柚子胡椒三杯酢

 

前菜に八寸がつくというのもすごい。普通どちらかでしょ。やはり全部酒の肴。

 

 

ワインは海外のデイリー系。

 

「その方が気軽に飲めるかも」サル

 

 

九重鶏卵茶碗蒸し オマール味噌添え

 

「すばらしく濃厚だにゃ」サル

 

美味しいうえに綺麗なんだよね。

 

 

高原トマトの白ワイン煮

 

甘くて冷たい。酸味もなくてほとんどデザート。

 

 

そろそろ焼くことにした。

 

 

鱧揚げ焼き大葉ソース

 

 

鶏飯 白湯

 

贅沢だよね。自分で具を盛りつけて白湯をかける。

 

 

白米は館主栽培こしひかり。御馳走様でした。たいそう美味しかったです。

 

 

デザートは小玉西瓜。皮が薄くて甘い!

 

 

毎度思うのだが、どうして掛け布団を広げないのか。

 

=翌 朝=
 

翌日も頗るつきの好天だった。

 

 

もうこれで運は使い切った。今後の週末は雨だよ。きっと。

(この予感はその後リアルに的中している)

 

 

こんな(だらけた)生活もこの日まで。

 

 

朝六時に大浴場に向かう。男女の暖簾は変わっていたが、内部は線対称になっているだけで大きな違いはない。今回の旅では、ずっとひとりか、おサルとの混浴だけ。タイミングがよかった。

 

=朝 食=

 

 

朝食も温かくて美味しかった。

 

 

最後にもう一度、ぬる湯につかってひとりの時間を愉しむ。

 

 

過去訪ねたなかで一番の冷たさだった。料理も美味しく、食事の給仕にお客の案内、更にはお会計と何役こなしているのか判らないほど、若女将は走り回っていたが、いつも素敵な笑顔を絶やさない。本当の人気はこの笑顔にあるのかもしれない。いよいよ湯めぐり旅も終わり。しかし、帰りのフライトまで十分時間がある。

 

「どこか寄るとこないのち?」サル

 

う~ん。あ!あるよ!あそこに行こう!

ということで次回“大分湯けむり紀行”最終回。

 

(つづく)

 

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