サルヒツのぐるめ探訪♪【第139回】
カフェレストラン・リュードヴァン
℡)0268‐71‐5973
カテゴリ:フレンチ
往訪日:2022年3月5日~6日
所在地:長野県東御市祢津405
食事時間:(D)18時~(B)8時~
■宿泊:2組
■アクセス:上信越道「東部湯の丸IC」より約10分
■料金:(宿泊)11,000円+(夕食)8,000円+(ワイン)4,000円
ひつぞうです。《シャンブルドット・リュードヴァン》往訪記の後篇です。
★ ★ ★
お待ちかねのディナーです。メニューは6皿。それぞれにマリアージュされたワインがつきます。
グラスもワインの個性に合わせて変わります。
まずは瓶内二次発酵させたスパークリング。贅沢ですね。たった二杯のための抜栓です。
美しくきめ細やかな気泡。本場シャンパーニュのそれと比較しても遜色ありません。
=第一の皿=
三種の盛り合わせ
(手前左より時計回りに)キャビアとサワークリームを載せたブリニ。シカ肉のジャーキー。猪肉と野沢菜が入ったおやき。小粒ながらどれも濃厚な味わいです。
=第二の皿=
春野菜と山菜のサラダ
ロマネスコを中心にアスパラ、タラの芽などを生ハムで包んでいます。そして基層のソースにはパルミジャーノ・レッジャーノやブルーチーズを惜しげもなく使ってあります。縁には蕗の薹とそら豆のピューレ。大人の味ですね。盛りつけが美しいです。
「フォーク入れるのが勿体ないにゃ」
合わせるワインはソーヴィニョン・ブラン2021。青林檎のような爽やかな香りがストレートに伝わってきます。
赤ワインが練り込まれたパンは表面カリカリで中がもちもち。温かいです。無塩バターで戴きます。
=第三の皿=
帆立のポワレ
バターと帆立の肝のソースは旨味の塊り。焼き菓子のチュイールがソースに絡みやすいですね。
ワインはピノ・ノワール2019クレール。華やかな香りに満ちた美しいロゼです。
=第四の皿=
ジビエグラタン
鹿肉のミートソースのグラタン仕立て。リュードヴァンでは鮮度のいい鹿肉を調達しているので、いわゆる“獣っぽさ”は微塵も感じられません。適度な焦げ目があってチーズも香ばしい!
もちろん赤ワインでしょう。Trio’20はカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フランのアッサンブラージュ。濃いガーネット。欲情の色ですね。
「ヒツは食情なんじゃね?」
まだまだお腹に入りそうよ。
なんて会話をしていたらソムリエのスタッフが「オーナーからのサービスです」とこんなものが。
=サービスメニュー=
チーズ三種(パルミジャーノ、ウォッシュ、ブルー)。猪肉のリエット。胡桃の入ったパテ。サービスとは思えないボリューム!リエットはパンにつけて頂きます。
ワインつきです!ピノノワール2020。優しいブーケ。エレガントな舌ざわり。造り手の思想が伝わりますね。美味しかったので、もう一杯自費で戴きました。
「よく飲むね」
自分で云っているよ…。
ここで小山さんが挨拶に出てこられ、ワイン造りのお話を聞かせてもらいました。
=第五の皿=
林檎の一皿
もはや宝石です。
タルト&ムースをホワイトチョコでコーティング。柄の部分もチョコです。
映画『チャーリーとチョコレート工場』みたいですね。
「オーガスタスが喰いまくっていたあれにゃ」
マリアージュはシードルのポムドール。“黄金の林檎”という意味です。ちなみにイタリア語でトマトはpomodoro(ポモドーロ)。そう。同じ語源なんです。
「確かに色形は似ているといえば似ているにゃ」
=第六の皿=
苺のミルフィーユ仕立て
バターがふんだんに使われているのでしょう。極薄の層が重なる繊細な食感です。苺の酸味、バニラアイスの濃厚な甘み。そしてアーティスティックま盛りつけ。感動しました。
シャルドネから造られた甘口デザートワイン、Vin deux“Coco”です。葡萄由来の糖分がデザートに合います。ボトルに注目しましょう。ブルーのネッカチーフがついてますね。これはリュードヴァンのマスコット、黒猫のココをイメージしたものだそうです。
夜の散歩から戻ったココがご挨拶。猛烈なスピードで撫でるのが嫌だったようです。
「がぶって咬まれた!」
甘咬みだよ。どれどれ。と余裕で構おうとしたら
「やられとるやん」
猫飼ったことあるのに…。面目まる潰れでした(笑)。
=小菓子とコーヒー=
コーヒーと一緒にシガーの形をした生チョコが。シガー同じ大きさは小菓子のレベルを超えています。
最高のディナーでした。
最後に小山さんから「良ければもう少し飲みませんか」と誘って頂きました。
「受けて立つ!」
そうでしょうね。
戻ってきました。街燈がないのでランタンを貸してくれます。
着替えて一階のサロンの入り口でノックしました。
「這入ってもいいですかにゃ?」
どうぞと言われて入ってみました。すると…
そこはまさに大人の隠れ家でした。極上のソファに音響の優れたオーディオ。照明もワインボトルで造ったオリジナル。いいなあ。僕も広い秘密基地欲しいなあ。
洋梨発泡果実酒ポワレを頂きました。洋梨は果実酒としては生産が難しいらしいです。上品な甘みと香り。さらりとした舌ざわり。バランスの良さが際立ちました。美味しすぎて勧められるままに飲んでしまいました。
★ ★ ★
このあと、小山さんのワイン造りへの想いについて伺いました。ワイン好きが高じて二十代の終わりに勝沼の醸造会社に転職。そこで国産ワインの実態を見たそうです。ワインは生食用ブドウの規格外品の再利用。これではいいワインはできない。その後、長野の勤務先でも同じような環境だったそうです。今のワイン造りの哲学はフランスでの修業によるものです。ワイン造りは気紛れで“修業”したり、“転業”や“経営”できるほど甘くはない。業界の裏話もたくさん聞かせていただきました。
興味深い話ばかりで、つい長居しすぎました。ありがとうございました。
=朝 食=
翌朝八時にサロンに向かいました。
ここで小山さんと一緒に朝食を頂きます。緊張します。
「緊張しやすい性格だもんね」
ジャムは手製。クロワッサンもパリパリで巨大!
フランスではワインを中心に人々が語り合う生活があるそうです。小山さんが数十年前の国産ワイン造りに失望したのは、ビジョンもなく、ただ工業生産品のようにワインが作られる実態です。たしかに生産者間にも消費者との間にも“会話”はないかもしれませんね。ただし、いいワインを造ろうと思うと、一本4000円超になってしまう。安く提供するには如何に“手を抜くか”。それが一番の課題だと言われていました。
10時まで部屋でゆっくりしてお暇しました。
★ ★ ★
曇りの予報ですが、さいわい朝方は晴れ間が広がりました。
支払いに一度カフェに寄ります。
ここで支払いをすませて、好みのワインを購入しました。
予約すれば、宿泊なしでもランチがいただけます。
スカイブルーのプジョーの横に一本のマロニエの樹が植えてあります。この樹が大きくなって、その下でワインを飲みながら、次世代が引き継いだワイナリーを眺める。それが小山さんの理想なのだそうです。
大切なことはワイン生産やシャンブルドットのような民宿業が、東御の街の産業として根づき、自身が起こしてこられた思想を次世代が繋いでいくことだと語られていました。
最後にココに挨拶。
ワインは生産される土壌、気候の産物でもあります。小山さんは東御の林檎農地跡がワイン用葡萄栽培に適していると判断。自ら開墾にあたったそうです。巨大な花崗岩を撤去して、林檎の株を掘り起こして。次回往訪する時は青く葡萄の葉が繁っているかもしれません。美食と安らぎの極上の二日間。ありがとうございました。
「オウ・ルヴォアール!」
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《リュードヴァン葡萄畑概要図》
(おわり)
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