東赤石山(1706m)/八巻山(1698m)/物住頭(1635m)/西赤石山(1626m)/西山(1429m)
愛媛県
日程:2020年9月21日~22日
天気:(一日目)晴のち霧
行程:(一日目)筏津登山口5:22→6:42ルート分岐→7:50最終水場→8:55水平路分岐9:00→9:35東赤石山10:20→11:00八巻山11:20→12:30石室越12:40→13:40物住頭→14:25西赤石山14:33→15:33東山→15:45銅山越→16:05銅山峰ヒュッテ(幕営)
■筏津駐車場:10台ほど(橋を渡った筏津山荘跡前)
※登山口のスペースは私有地につき停車不可
■トイレ:あり(バス停横)
■登山ポスト:あり
≪茶褐色の橄欖岩で構成された山頂≫
こんばんは。ひつぞうです。四連休の後半に愛媛県の名峰・東赤石山に登りました。ご存じのように瀬戸内海と並行して伸びる石鎚山脈は、中央構造線に接して隆起した三波川帯で構成される巨大な山脈。かつて笹ヶ峰から石鎚山まで四日かけて縦走したものの、東側の赤石山系はそのままになっていたのです。詳しくはいつもの山行記録で!
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【東赤石山~銅山峰縦走コース】
水平距離=16.8km 累積標高=1667m
それは思いがけない報せだった。丸山荘の管理人・片山さんご夫妻が常駐をやめたという。お二人との出逢いは四年前の11月。笹ヶ峰の登山口・下津池から丸山荘を目指した。テント泊の僕らに炊き立てのご飯を山盛り恵んでくれた。更には自力で登った褒美と言いながらツマミまで。また、宿泊のパーティとの酒盛りにも招いてくれた。
この神対応に感激した僕らは、次回往訪する際には、酒瓶を掲げてその夜のお礼をしようと心に決めた。次に狙う稜線は二百名山の東赤石山から、ちち山、笹ヶ峰へと繋ぐ二泊三日のコース。できればアケボノツツジか、シコクギボウシ、キレンゲショウマの咲く季節に訪ねたい。そう思った。
だがしかし。四国は遠かった。
休みと季節、そして好天が重なる機会は容易に得られず、時間ばかりが虚しく過ぎてゆく。気がつけば僕自身五十の坂を越していた。その結果が山の神が山を降りたという報せ。いつまでも好機ばかりを狙っていられない。
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前日750kmの距離をひた走って四国入りした僕らは、別子銅山の遺構記念館「マイントピア別子」の付属施設「別子温泉」で風呂を浴びて車中泊した。ここは道の駅を兼ねている。午前四時に登山口のある筏津(いかだづ)まで峠道を走る。ちょうど30分ほどで目指すバス停についた。
トイレのあるバス停横のスペースに駐車可能と記した記録もあるが、ご覧のとおり≪私有地につき駐車禁止≫と記されている。正面の橋を渡り、右折した先に駐車場が別にあった。見上げれば満点の星。期待できそうだ。準備を済ませて登山口まで5分ほど戻る。登り始めは巻き道基調の緩い勾配がつづく。
テント泊は八月頭の東餓鬼岳以来、実に二箇月ぶり。不安は的中して、脚力が衰え、バランスをとるのに四苦八苦。先が思いやられる。午前六時近くになると(西日本とはいえ)さすがに明るくなる。足許にはキラキラ光る石の欠片がたくさん転がっていた。
これ、雲母を含んだ結晶片岩だよ。
「夜露に濡れているかと思っただよ」
暫くすると石垣の跡が現れた。おそらく別子銅山の遺構だろう。そう。ここ赤石山地は住友グループ発祥の地なのだ。鉱脈が存在したのであれば、変成岩や石英の巨大な塊りがゴロゴロしているのも肯ける。
最初の水場に出た。マグカップがふたつ残置してあった。飲んでみる。癖はないが切れるような冷たさはなかった。
ところどころ急な登りもある。
この辺りで立て続けに二人のソロハイカーに抜かれた。皆日帰りの恰好。殆どはピストンだろうが、健脚であれば、今回とった縦走コースも日帰り可能。ただし、下山後車回収の車道歩き1時間が待っている。ゆっくり歩いてどっぷり山に浸かることが信条の僕らは、銅山峰ヒュッテのある角石原で幕営する計画。これならば翌朝10時「日浦」発のバスにも余裕で乗れる。
意外にこの架け橋が難物。雨の日にテン泊装備でくだるのは考え物。
今回のコースのうち「東赤石山~前赤石山」間は、赤茶けた橄欖岩が剝きだしになった岩稜帯。一方、その先の稜線はなだらかな笹原と馬酔木のトンネルが続く穏やかなコース。嶮しいアップダウンが連続する前者をコースタイムなりに歩けるか。そこが成否の分かれ道。
ここ数年の台風や大雨の影響だろう。無数の枝や倒木が散乱している。
この架け橋を渡ると、赤石山荘コースと東赤石山コースに分岐する。短時間の後者を選択。
架け橋の下にはエメラルドグリーンの淵が口を開けていて、イワナだろう、魚影が揺らめいていた。
渡った先が分岐だ。
ここまで標高を稼げば陽光も差し始める。南面の登山道なのだが、谷が深いので、特に日が短くなるこれから先は日蔭になる時間が長くなる。
だが、この日はそれでよかった。連休後半は気温がさがるという週間予報だったが無性に暑い。前線は過ぎ去ったが、湿った大気の帯が居残ってしまったようだ。
「でもなんか涼しいよ」
沢に近くなったからね。
巨大な八間滝の先に、もうひとつスケールのある滝が現れた。
この落ち込みの直上を渡渉する。増水時は危なくて使えないね。
規則正しく筋目の入った粘板岩の一枚岩を渡渉。
紅葉の季節はさぞ美しいだろうね。
「サルでも渡れるにゃ!」
平日も令和版ビリーズブートキャンプで飛び跳ねているおサルは絶好調。しかし、僕の方はなかなかペースが上がらない。
「ひつ、ブログばっかり書いて全然運動してないもんにゃ」
む~。判ってはいるんだけど…。
最終水場を通過する。
するとご覧のとおり、岩質ががらりと変わったのだ。
赤茶けた岩は明らかに橄欖岩。超アルカリ性のこの岩が水に触れると蛇紋岩に変質する。蛇紋岩といえば至仏山や早池峰のそれが有名だが、ご存じのようによく滑る。特に濡れた石は要注意。
この辺りは(登りの際は)涸れ沢を登山道と見間違いやすい。注意深く赤テープを追っていこう。
巻き道コースに合流して、赤岩山荘方面に5分ほど進むと稜線に至る分岐に出た。
まだまだ夏の雲だね。暑いはずだよ。
峠の赤石越に着いた。もう10分で山頂だ。
稜線にでれば一気に視界が広がる。おサル、あれが“岩の殿堂”八巻山(はちまきやま)だよ。
北側には旧土居町の街並みと瀬戸内の海が見えるね。
山頂についた。気温が高いせいだろうか。瀬戸内海から温められた水蒸気が幾重にも湧き上がってくる。残念ながらガスの多い一日になりそうだ。実は三角点ピークはここではない。1分ほど東に移動してみると…
あった。あった。でも何も見えんな。
ということで腹が減ったので、カップ麺を作ることにした。
「静かだにゃあ」
眺望の優れた二百名山の東赤石山は地元で人気の山であるはずだが、花の季節には遅く、紅葉の季節にはまだ早い。そんな中途半端な時期だからだろうか。大型連休にも拘わらず、ここまで出逢ったのは7人程度に過ぎない。
一泊なので結局は丸山荘に辿りつけない。今回は銅山峰から日浦に降る計画。再度の往訪で、銅山峰から笹ヶ峰まで赤線を繋いで完成させることにした。
遅めの朝食を終えて、いよいよ縦走開始だ。まずは八巻山を目指す。
ふと振り返ると、ちょうどガスが抜けて東赤岩山が頭をだした。
景観が早池峰にそっくりだ。
登ってきた山肌を見下ろす。奥の稜線の向うは高知県だよ。
アップダウンがあって神経を使うコースだ。ザックが重いから大変だよ。
超アルカリ性の岩質だから、発育できる植物も限られている。
このリンドウだけがたくさん咲いていた。そして忙しく働くトラマルハナバチ。
怪我することもなく八巻山に着いた。ここは信仰の山らしい。蔵王権現の立派な祠が設えてあった。
しばらく辿ってきた稜線を眺めたあと、石室越方面に向かうことにした。
(つづく)
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