冬の西上州/烏帽子岳~シラケ山(岩稜ルート) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

シラケ山(1274m)/烏帽子岳(1182m) 群馬県

 

日程:2018年12月28日

天気:快晴

行程:登山口8:40→9:53天狗岩10:03→11:19マル→11:42烏帽子岳12:04→13:40シラケ山14:35→14:51おこもり岩→15:35登山口

■駐車場(11台)/トイレ(冬季使用不可.川の駅上野ですませましょう)/登山ポストなし

 

≪岩稜コースからの天狗岩~シラケ山≫

 

こんばんは。ひつぞうです。いよいよ年末休暇に入り、登り納めに西上州

ラケ山にいってきました。小粒ながらピリリと辛い刺激的な山が溢れる西上州。

アカヤシオが咲き乱れる早春も捨てがたいけれど、この季節ならではの登山が

できそうです。詳しくはいつもの山行記録で!

 

【烏帽子山~シラケ山縦走ルート】

 

★ ★ ★

 

二泊三日で戸台川から仙丈ケ岳に登る計画だった。そこに当たり前のように寒

波がやってきた。毎年同じことを繰り返している。仕方ない。セカンドベストの関

東山地横断に切り替えたが、これまた強風と降雪エリアに飲み込まれた。なか

ば自棄のように「じゃ西上州!」とあっさり日帰りに変更。

 

面白い山がたくさんあるのに意外に登っていない山域。アカヤシオと紅葉の季

節に拘りすぎているせいだ。考えてみれば、藪に覆われて眺望が今ひとつの西

上州も冬場は見通しが効く。それに雪が被ればグレードも上がる。俄然やる気

が湧いてきた。

 

「単純すぎる。やっぱヒツジや~ん」サル

 

 

経費節減のために入間から国道299号を通って上野村に入った。志賀坂峠を越え

ると降雪が見られるようになり、川の駅上野あたりで路面は完全にアイスバーンと

化した。

 

塩之沢方面に右折する。更に塩之沢トンネル手前で旧道に右折。塩之沢温泉

通過。路面に轍があるので先行者がいるかと思ったが、駐車場は蛻の殻だった。

 

★ ★ ★

 

無雪期で5時間程度。雪山ということで6時間を見込んだ。それでも余裕の8時

30分過ぎの出発。ピッケル・アイゼンは持たず、チェーンスパイクでの入山。

 

 

50メートルほど戻ったところに登山口がある。天狗岩登山口としか書かれてい

ないが、シラケ山烏帽子岳まで縦走できる。なぜシラケ山に登ろうと思ったか。

 

「シラケているのち?」サル

 

違うでしょ。多分だけど「白い木」が多い山だからじゃない?

 

「なに?白い木って」サル

 

白樺あせ…とか(ちと苦しい)?あ、そういえば江戸っ子ってヒをシって発音す

るよね。「開け山」つまり稜線の開けた山って意味なんじゃ?

 

「群馬は江戸っ子で溢れてるのち?」サル

 

…。

 

★ ★ ★

 

実はシラケ山には痩せ尾根の岩稜ルートがある。700メートル程度と水平距離こ

そ大したことないが、鎖やロープなどの確保手段がない。登るにはそれなりの経

験が必要。レベル的には二子山以上、赤岩尾根未満ってところか。

 

 

終日快晴だったが、気温が低くじっとしていると冷える。汗をかかないように小

まめなレイヤリングが欠かせない。

 

 

ふと気づいた。あれ?なんでチェーンスパイク付けてないの?

 

「聞いてないもん」サル

 

付けようって出発するときに言ったけど…。

 

ブツブツ言いながらしゃがんでつけ始めた。先に進んで振り返る。5分経過。

動きがない。10分経過。何やってんだろ。暫くして手にくだんのギアをぶら下

げて、やっぱりブツブツ言いながら近づいてきた。

 

「つかないよ。ゴムが冷えて硬くなってんじゃね」サル

 

そんなはずないよ。どれどれ。ん?確かにこりゃきつい。おかしいな。サイズ

小さかったのかも。

 

「今更遅いよ!Sサイズで良いって言ったのひつぞうだよ!どうしてくれん

だよ」サル

 

よく考えてものを言うべきだったあせ。でももう後の祭り。

(Mサイズだと明らかに大きい。おサル説正解かも)

 

 

力業で装着して事なきを得た。前方に廃小屋が見えてきたよ。

 

「ひつぞうとはもう口を利かない。トモダチ解消だよ」サル

 

え?友達かよ。ぼくらあせ

 

 

トタン葺きの建物自体は別として、ベンチは新しい丸太で作られていた。風を凌

ぐにはいい場所かも。ここで二股になり、天狗岩経由とシラケ山直登に分岐す

る。まず天狗岩に向かうので右側に進む。

 

 

一点のくすみもない雪のベールに覆われていた。ただ湿雪らしく、巨大な雪

だんごが落としても落としてもできてしまう。やっぱりアイゼンだったかな…。

 

 

登り詰めるとコルに出る。暖かくなるとニリンソウが群生するらしい。「地理院

地図」にはここが「天狗岩」と表記されているが誤り。

 

 

コルから天狗岩まで地獄の急登。

 

 

ついたみたいだ。

 

 

石祠があった。これから始まる縦走の安全を祈願する。

 

 

最高点は少し南側に張り出した稜線上。最高の眺望だった。ただし痩せた尾根

なので歩行に注意しよう。

 

 

シラケ山山頂が見えた。右側には一本岩峰。

 

 

ズームしてみる。切り立った岩場だというのが判るよね。

 

 

左最奥の三宝山から三国山を経て、右端の御座山まで関東山地主稜が続く。

 

★ ★ ★

 

天狗岩からコルまでくだり、岩稜ルート横道(巻き道)ルートに分岐する。分岐に

指導標識はない。赤テープが目印。横道ルートで進みたい人は道なりに進めばい

いい。つまり岩稜ルートは踏み跡が薄いってこと。標識がないのは、未経験者の

安易な進入を拒みたいからなんじゃないかな。

 

 

まず横道ルートで(シラケ山山頂はパスして)烏帽子岳に向かい、岩稜ルート

で戻りシラケ山にゴールする計画。というのは烏帽子岳の方が標高が低いた

め。危険な尾根はできるだけ登り基調で進みたいし、登りの方が面白い。

 

 

とは言いつつ、歩きにくい雪だんご付きの斜面の行軍は結構難儀。チェーンスパ

イクは面で捕らえることはできても、線で捕らえるのは不向きだよね。

 

 

でもなんだかんだ言ってあっという間に距離を稼いだ。まずはマルへ。

 

 

稜線上はところどころ開けていて、西上州の名峰を望むことができた。

 

 

マルはこっちの稜線の方が登りやすい。

 

 

無雪期は籔に覆われて、眺望がないと不人気なマルだけど、この時期は多少景

色が覗いて見える。ただ何も標識がなかった。ちょっと淋しい雰囲気。

 

 

烏帽子のコル目指して別ルートで下る。こっちは急下降。樹間からは目指す烏

帽子岳が見える。マルより標高が低いので、最初はひと際低く見えた山体も圧

倒的な存在感で迫ってくる。

 

「本当に登れるのち?」サル

 

大丈夫だよ。多分。

 

 

実際に取りついてみると、ロープが設置してあり斜度も緩い。ただこのロープ、

結わえてある樹根が枯れて折れかけている(特に二本目)。全体重をかけて登

るのは危険。

 

 

今回は僕ら以外だれも入山者がいなかったけれど、西上州の山は岩が脆く、人

為落石の危険性があるのでヘルメットの装着をお薦めします。

 

最後はピークを巻くように登り詰める。断崖際際なので、石や根っこに爪先を取

られないように注意しよう。

 

 

山頂についた。ここにも石祠が祀ってあった。

 

 

360度の最高の眺望だった。ただ風があってじっとしていると寒い。

(上の写真中央から右寄りに)天狗岩、一本岩峰、シラケ山の山塊。

 

 

記念写真を撮って、行動食でエネルギーを補った。

 

 

ズラリと並ぶ名峰の数々。荒船山がもうすぐそこにあるんだね。次の日は一

泊して、この中からもう一座狙う予定。

 

 

帰りは巻き道をつかってマルを巻く。尾根を進むと、岩稜ルートの分岐につく。

 

 

ここでストックを仕舞う。今回念のためにロープとハーネスを持参した。

 

 

まずは北側に下降するようだ。このロープも緊縛された樹が折れかけていた。

 

 

すぐに巻きあげて稜線に取りつく。細い枝しかないため、安心して掴めるもの

はない。実はこのまま尾根を進んだのだが、最後にギャップに阻まれた。無雪

期ならばなんとか(それもホントになんとか)いけそうだが、危ないので巻き道

を探す。

 

 

普通にあったよあせ

 

「ひつぞう、ルーファイダメになんじゃね」サル

 

 

ギャップに登って先程の場所を再確認。こりゃ完全に両サイド切れ落ちてるよ。

一応、「烏帽子岳→」の標識は随所に設置されていた。ただ「くだり」前提にな

っているね。

 

 

シラケ山までの間に7つのピークがある。

 

 

ここはちょっと段差が大きいので、おサルには無理。スリングを設置して回避。

 

 

半分くらい来たかな。数えてなかったので、どこかどのピークか判りません(笑)。

 

 

ここが核心部だったかな。大岩を抱きかかえつつ、靴幅くらいのテラスを巻く。

ホールドになる突起が岩にないのでスリップしたらお陀仏。ロープを出そうか

迷っていると、おサルがひょこひょこパスしてしまった。

 

すごいじゃん!

 

「え?全然怖くないよ。これくらい」サル

 

最近のおサルの進化はすごい。以前であれば泣き出して岩にしがみついて

しまったんだけどね。

 

 

あと四つはピークあるね。ってことはここがP5

 

 

P5は比較的広い岩峰で眺望が最高にいい。そのあとは必死で通過したので

写真なし。ま、似たようなもんだし。

 

 

P2~P1間の緩い稜線を進めば最後のP1。

 

 

ここを歩いてきた。といっても判り難いかも。

 

 

最後に緩い斜面を越えると、そこがシラケ山山頂だった。五人もいれば一杯

になる狭いスペース。この岩の反対側は50mくらいありそうな絶壁。絶対に

乗り出さないように。

 

 

ここでランチ。今日も熊本棒ラーメン。変わり映えしないけれど安定の味。

 

 

日影山白髪山方面。けっこう平たい稜線なんだね。左端に特徴的な稲含山

も見えるよ。

 

小一時間ほど休憩した。このあと、少し戻れば安全な横道ルートに復帰できる

が、ここまで来たので、最後まで稜線通しで進むことにした。

 

 

ちょっとね。痩せてるから怖いけどね。大丈夫なんじゃない?

 

 

想像どおり左側がすっぱり切れ落ちてる。ゆっくり降りよう。総じてチェーンスパ

イクではグリップ力に不安があった。雪の付き具合が微妙なので、難しいところ

だが、八本歯のアイゼンが確実だった気がする。

 

「やっぱり、ひつぞうとの関係はトモダチくらいにしておく」サル

 

信用ねーな。

 

★ ★ ★

 

ということで山頂から先の危険個所はここだけで、斜面を降ると横道ルートに

復帰できた。あとは道ははっきりしている。途中にある「おこもり岩」なる洞窟

を見学。ここまではピストン。必ず分岐まで戻ること。

 

 

「ふむふむ」サル

 

天然の岩小屋だね。祠が祀ってあった。

 

★ ★ ★

 

あとはとっとと下山。

 

 

登山口とは目と鼻の先の塩之沢温泉「やまびこ荘」で汗を流した。循環泉だけど

泉質は素晴らしく保温効果が並大抵ではなかった。冬場の登山ではありがたい。

 

このあと塩之沢トンネルを越えて、下仁田の道の駅で車中泊。年末にしては少し

質素な食事となったが、車中で酌み交わす酒は、安酒もなぜか旨い。翌日の登

山に備えて大人しくシュラフに入った。一段と強まる風に一抹の不安を抱きつつ。

 

(続く)

 

【行動時間】 5時間28分

 

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