北八甲田縦走(高田大岳~赤倉岳)① | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

高田大岳(1,552m)/小岳(1,478m)/八甲田大岳(1,585m)

/井戸岳(1,537m)/赤倉岳(1,541m) 青森県

 

日程:2018年9月15日~16日

天気:(1日目)曇のち晴

行程:(1日目)谷地温泉7:25→10:35高田大岳11:10→12:50小岳13:08→14:25八甲田大岳14:47→15:00大岳ヒュッテ

■谷地登山口駐車場(15台ほど)/登山ポストなし/トイレなし

 

≪小岳方面より望む高田大岳≫

 

こんばんは。ひつぞうです。今年の秋も週末の度に雨。気がつけば九月も半ば

を過ぎようとしている。登山もひと月ご無沙汰。だから三連休は天気に振り回さ

れないように、西は四国から北は岩手に至るまで登山計画を遍く組んだんだよ。

そんな僕の努力を嘲笑うかのように、先週末の晴れの予報は青森県だけ…。

 

それも晴れ間が覗くのは土曜と日曜の早い時間だけ。これには参ったよ。青森

の未踏ルートと云えば櫛ヶ峰を最高峰とする南八甲田の稜線。だが情報の少

ない領域だけに、いきなり飛び込むのは無謀というもの。

 

ふと思い出した。最高峰の八甲田大岳こそ残雪期にピークハントしているが北八

甲田も他の峰は登っていない。谷地温泉を振り出しに主要ピークを踏んで草紅葉

毛無岱を経て縦走すれば最高の山旅になる。ギリギリ日帰りも可能だが、早朝

発がマスト。金曜の晩に750kmの距離を一気に走り抜けるのはつらい。ゆっくりス

タートして、避難小屋に泊まって二日に分けて下山する。車回収のバスも好都合。

これなら悪くない。

 

ここまで整理がつけば後は速い。一泊分の装備をザックに詰めて、定時退社

後に横浜の自宅を飛び出した。

 

★ ★ ★

 

【北八甲田連峰縦走コース】

 

途中で4時間仮眠をとり、黒石ICで降りて国道394号を城ヶ倉温泉方面にひた走

る。岩手県境まで低い雲に覆われていた。残念ながら青森も高曇り。ま、雨が降

らないだけ良しとしよう。酸ヶ湯を過ぎ、猿倉温泉を過ぎ、谷地(やち)温泉に辿り

着いた。温泉宿は土曜の朝だというのに満車に近かった。人気の程が伺える。

 

 

登山者用の駐車場は別に用意されていて、15台ほどは停車できそうだ。酸ヶ湯

登山口は8時で満車らしいが、ここは一台しか停まっていない。その後二台現れ

たきりだった。

 

 

温泉宿の正面に登山口がある。温泉客が「やあ。ご苦労なことに山なんか登っ

てるやつがいるよ」ってな感じで、僕らを物珍しそうに見遣っていた。

 

谷地温泉から高田大岳のコースは(ネット情報が正しいとすれば)2016年に刈

払われるまでは笹薮が深かった健脚コースらしく、急登で知られる。リハビリ登

山にはまず向かない。それをおサルに伝えるのは心苦しい。黙っておくことにし

た。

 

「どーりできついと思っただよ」サル

 

 

ちょいと辛い斜面を登り詰めると、平らな若いブナの森に変わる。高曇りとはい

え、三連休の深田百名山だ。この静けさはやはり最果ての森だからこそ。

 

ひと月余りの天候不順の跡が、沢山の塵芥として登山道に残っている。それに

しても蒸し暑かったね。無茶苦茶身体も重い。酒とバラ肉の日々だったもんな。

 

足許に目を凝らすと、テングタケやイグチの仲間が頭を出している。こりゃ何や

ら期待できそうだ、と思って、森の奥に眼をやったその時だった。

 

 

見事なブナハリタケが!

 

 

間違いない。この猫の舌のようなカサの裏。刺激的な特有の甘い香り。これだけ

見事で、状態のいいブナハリに遭遇したのは初めて♪だいたい喜んだのも束の

間、よく見たら中はキノコバエの蛆がウジャウジャってのが殆どだったもんね。

 

「ひぃぃぃ~っ!」サル

 

【ミニ情報】

※ブナハリタケそのものには味はない。香りと食感を愉しむキノコ。綺麗な個体

は虫もいない。ただ石づきに蛾の幼虫と思しき、芋虫が入り込んでるので石づ

きは思い切ってナイフで落とす。さっと塩水に潜らせてよく絞り、油で炒めたの

汁物や炊き込みご飯の具に使うといい。沢山取れたら塩蔵にする。

 

ただし、ここは国立公園なので採集は禁止なのだ。

 

 

こんな感じで道標も極新しい物が設置されていた。これじゃ道迷いのしようがな

いよ。

 

「ほんち?」サル

 

いや。君は別格だからちゃんと見張るようにするよ。

 

サル

 

 

おっ!あんな処に丸い物体が?こんな状態は初めて見るけど、たぶんカンバ

タケの幼菌じゃないかと。

 

 

で、肝心の登山道なんだけど、斜度がない代わりに、泥濘だらけでほんと歩き

難いんだよね。暫くずーっとこんな感じで変化が少ない。

 

 

低い枝にもびっしりとブナの実がついている。今年は豊作の年なんだってね。

するとね。熊は枝に登って熊棚を作りながら、旨い旨いと食べるんだそうだ。

 

 

いよいよ斜度が増してきた。谷地温泉から高田大岳まで2.5時間なんだけど、水

平距離1/3を残して2時間を経過した。絶対予定通りには着きそうにない。

 

「なんかメチャきついよぅ」サル

 

それはね。有体に言って身体が鈍ってるんだよ。

 

「デブのひつぞうなんかに言われたくないよぅ」サル

 

否定しませんけどね。

 

 

溶岩台地の直下に谷地温泉(〇の中ね)があるのが判る。右奥に見えるのが

戸来岳だな。しかし、全然晴れる予兆すらないね(怒)。

 

 

スーパーのろのろのおサルに文句を言わないのは、ゆっくり登って晴れるタイミ

ングと登頂を合わせようとしたからなんだ。

 

 

南八甲田のノペーっとした広がりの中に猿倉温泉(〇の中ね)が見える。それ

以外は森、森、森。これは道迷いしたら大変だよ。

 

 

高曇りだけでなく、中層の雲まで湧いてきたじゃん…。

 

高田大岳の登山道は直線コースなので全く変化がなかった。その代わり植物

の垂直分布が観察できる。最初はブナやナラに始まり、アオモリトドマツなどの

針葉樹。そして最後にハイマツの群落へと遷移するのが判るよね。

 

 

ようやく山頂のようだ。

 

 

僕に遅れること15分。

 

 

高田大岳山頂に着いた。酸ヶ湯からの縦走者が数名休憩していた。お話すると

皆が皆青森県民だと判る。そして、明らかに言葉の響きが違う僕らに「どごから

きたの?」って訊くから「横浜です」と答えると、皆一様に「え~!そりゃ大変だ」

と驚くのだった。

 

気づいた人もいるかも知れないが、おサルも新しいザックに替えた。愛用のモン

ベル・ゼロポイントは過酷な登山の連続で、修復不可能の域に達したからなの。

 

「誰のせい?」サル

 

しかし、機能性において後継モデルは今の僕らの山行に合わず、オスプレイ

カイト47に変更したのだった。使い勝手とコストパフォーマンスでは最高なので。

 

 

山頂は360度の大展望。ガスが張り出してきたが、田代平(たしろたい)湿原

が見える。因みに八甲田連峰に八甲田山という山はない。八ヶ岳連峰に八ヶ

岳というピークがないのと同様に。「八」は具体的な数字ではなく八百万と同

じく「たくさん」を表し、「甲」は峰の形容、「田」は湿原の謂い。つまり沢山の峰

と湿原が織りなす複式火山という訳なんだ。

 

「誰に話しているのち?」サル

 

もちろん、おサル。

 

「意味があるのち?」サル

 

難しい質問だな…。

 

 

さて、次なる八甲田大岳を目指そう。正面左ね。右側が井戸岳と赤倉岳ね。

 

 

鞍部に草紅葉が広がっているね。

 

ここから次のピーク「小岳」まで道が悪い。泥濘。笹薮。洗堀。全て揃っている。

 

 

これよ。これこれ。

 

 

田代平への分岐。この区間が一番難路だと書かれている。

 

 

高田大岳を振り返る。八甲田で一番秀麗なピーク。アオモリトドマツが中腹を覆

っている。雪の季節はモンスターが現れ、残雪期には山スキーのメッカと化す。

 

 

静かな山だった。

 

 

まもなく小岳だよ。

 

 

ここにテント張って寝ころんだら、さぞかし気持ちいいことだろうね。

勿論ダメだけど(笑)。

 

 

その前に難所越えを終えないとね。とにかく洗堀が激しくて、粘土質でよく滑る

んだよ。

 

 

ガスが次々に南から押し寄せて来るけど、少し明るくなってきた。

 

 

小岳に到着した。ここも眺望抜群だった。

 

 

硫黄岳方面。鞍部に避難小屋の仙人岱ヒュッテが見えるよ。

 

 

いよいよ八甲田大岳への登り返しだな。三年前の五月の連休に残雪の八甲田

大岳を酸ヶ湯から周回した。その際のルートに合流する。とは云っても、雪の中

に登山道は埋もれていたから、この景観は初めてなんだよ。

 

 

小岳からは綺麗に刈払われていた。

 

 

ようやく晴れ間が出てきた!

 

 

鞍部を過ぎ、小岳を見返す。緩やかな稜線だった。

 

 

もう山は秋だった。

 

 

樹林帯を抜け、火山特有の砂礫地帯を登ると沼がある。鏡沼と云ってクロサン

ショウウオや希少生物が棲息しているんだって。

 

 

もうちょい。

 

 

いやいや錦繡でしょ。やっぱ山は。高田大岳と小岳と八甲田大岳の火口のへり。

 

 

そしてヘロヘロのおサル。

 

 

太っても登れる僕。

 

 

ってな感じで山頂に着いたよ。残念ながら山頂から奥はガスが掛かっていた。

そして三年前は綺麗だった標識の下半分が壊れてしまっていた。風強いから。

 

 

避難小屋の大岳ヒュッテまでは15分ほど。もう着いたようだもんだ。翌日登る

井戸岳を写真に収めて最後のくだり。

 

 

時刻は午後3時近く。日帰りハイカーがウロウロする時間は過ぎている。

やーな予感。無人小屋だし、日帰りできる山だし。混んでる筈ないんだけど。

 

 

東北の避難小屋はどこも綺麗。だから折角なら泊っていこう。そう考えるハイ

カーは多いのだろう。中二階つきの二階建ての一階は既に二組に占められ

ていた。中二階に上がったけど、薄暗くて窓がないので蒸し暑い。おまけに天

井が低いので、早晩頭をぶつけるのが落ちだ。二階は後から来た二人組が

シュラフを広げているが、十分なスペースがある。問題は長い垂直梯子。酒を

飲んだ後、酔って落ちないようにしないとね。

 

 

ってことで快適な場所に移動できた。この夜は僕らを入れて9名。詰めて寝る

前提で、キャパは1階6名、中二階6名、二階8名(合計20名)ってところかな。

綺麗な小屋で、中にあるトイレはドアで仕切られ、思ったほど臭わなかった。

 

 

小屋の前には長椅子が設置されているので、食事を摂るのに丁度いい。

そして、この井戸岳の古い側面火口の跡。千切れ雲が時折飛んでくるが

それにしても素晴らしい天気になった。やはり泊りにしてよかった。

 

【一日目の行動時間】 6時間20分

 

(続く)

 

いつもご訪問ありがとうございます。久々の山の記録です。