さるひつの温泉めぐり♪【第48回】
八塩温泉「神水館」
往訪日:2018年8月8日~9日
所在地:群馬県藤岡市浄法寺6番地
泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
泉温:14.9℃
色合:無色(浮遊物によっては僅かに茶褐色)
味臭:重曹を含んだ柔らかい塩味/無臭
pH:6.48
■(冷鉱泉)自噴/無濾過/非加熱/かけ流し (温泉)加熱/循環式
■営業時間:(IN)15時~/(OUT)~10時
■宿泊料金:11,000~25,000円
■駐車場:敷地内手前左側に7台ほど
※日帰り入浴不可
≪極上の古代塩が膜をなす源泉≫
こんばんは。ひつぞうです。抜糸も終わり、遂に自由の身となった。これで
気兼ねなく登山に行ける。と喜んだのも束の間。ずっと雨模様の日々。ただ
秋雨の到来を見込んで手術の日程を組んだので然程悔しくはない。
ということで、この週末は群馬の八塩温泉に投宿することにした。
★ ★ ★
ここ数年、上野村や神流町を観光や登山で幾度か訪れている。児玉ICを降りて
10kmほど走ると八塩温泉の看板が目に入る。古くから皮膚病や関節痛の効能
で知られる薬湯で「塩の湯口八箇所」から「八塩」の名が付いたという。塩分を
含んだ冷鉱泉はリラックス効果が高い。ならば暑い夏の終わりに訪れてみよう。
そうおサルと語り合いながら今に至った。
八塩温泉には三軒の宿がそれぞれ離れた場所に居を構えている。なかでも
神流川に面する「神水館」は絢爛な建物と本館一階のガラス越しの映し絵の
ような眺めが売りだという。ま、豪華さや和風モダンを売りにした客室でのお
泊りには食指を動かされないサルヒツジなんだけど、ここは日帰り入浴できな
いのだ。逆に言えば日帰りNG=宿泊客重視の宿とも判断できる。
しかも、外見の重厚さとは裏腹に、当代の主夫妻による家族的もてなしの宿
と知るに及び、やっぱここでしょ、ってことになったのだ。
立派な門を潜ると玄関までロータリーになっている。おサルを降ろして駐車場に
車を入れる。満車になれば、このロータリーに縦列するのかな?向かって左が
昭和八年建造の本館。右側が昭和二十八年に増築された数寄屋造りの別館。
「良いね~。お金足りるのち?」
それは主婦の腕次第でしょ?
日本秘湯を守る会の会員でもあるそうな。豪華保養地系だったら窮屈だなあ
って余計な心配してたけど、スタッフは皆笑顔で家族的。よかったよ。
広い玄関には豪奢な大正ロマン風のラウンジが隣接。
その前に楓や桜などの樹々の緑。六曲一双の日本画のようだ。ま、投宿す
るなら紅葉の季節がベストかもね(笑)。でもね。冷鉱泉は夏を逃すとどうし
ても寒いのよ…。
余談だけど窓外の小屋に一頭のコリーが飼われていた。難しい性分みたいで
「犬にかまわないでください。咬みつきます」と書かれてあった。面白がって
おサルが構うから、気が触れたように吠えまくっていたよ。
「わんこ挑発するの滅茶得意!」
だってサルだもんね。
部屋の配置はこんな感じ。本館と別館では造りの豪華さ、広さが違う。また同
じ本館でも部屋によって料金は当然異なる。秘湯の会のHPの予約プランから
選ぶのがいいみたい。勿論スタンプも押してくれる。
僕らは二人だけだし、どうせ温泉入って酒飲んだら即寝なので、リーズナブル
な本館の八畳一間にした。それでもさすがは保養地系のお宿。そこそこの料
金。これで僕らのお小遣いは無くなった(笑)。
廊下の作りもシンプル。
こんな感じね。無駄がない。金庫・冷蔵庫・テレビつき。
別館よりも幾分古いので多少は年季が入っているけど、昭和好きには却っ
てノスタルジーに浸れて好いかもね(笑)。
なんと奥にもひとつ部屋があった。角部屋の眺めのいい場所だったよ。
さて早速温泉探訪に向かうかね。この日の気温は33℃。冷泉に入るには
うってつけだよ。
では恒例の
当館の温泉の特徴
①内風呂は男女別。入れ替えはない。
②至高の冷鉱泉は内風呂のみ。
③半露天の岩風呂は男女混浴。ただし殆どの時間が男女別になっている。
④岩風呂は湯あみ使用不可。
ということで
当館の攻略法!
①何はさておき冷鉱泉のヴァージン湯をゲットしよう。(というのも冷泉の
湧量は雫並み。他人の皮膚が溶け込んだ湯の入れ替わりに一晩は必要)
②温泉は普通の沸かし湯に近い。ただし、冷泉と交互に入ることで皮膚が
ピリピリと刺激され、自律神経にも効果大。
つまり、岩風呂よりも内風呂メインに攻略することだ。
こんな感じで岩風呂と内風呂の入り口は隣接している。
鬼石(おにし)の地名にちなんで?
外回りはかなり改装されているけど、中は往時のままのようだ。
なんかよくない(笑)?窓外の景色が廃園みたいで。昭和の初めにこれだけの
アールデコ調のモダンな温泉旅館を建てた先代の資産って凄いなあと感心。
群馬県って一代で財を成した資産家って多いよね。なんせ3000坪ですよ。
「どれくらい広いのち?」
ごめん。平米換算できないの。僕。
そしてこれこそが幻の冷鉱泉。凄いね。温泉成分が付着してパムッカレ状態。
早速入ってみた。なんと大量の沈殿物が堆積している。それも比重が重いみ
たいで巻きあがっても直ぐに澄んでしまう。多分カルシウム成分なんじゃない。
洗い場は御覧のとおり。
判る?源泉様から滴る水滴が。こんだけしか湧き出てないのよ。なので僕が
入った後洪水が起きて大変なことに…。ちょっと舐めてみた。重曹を含む古代
の海水で、第三紀の付加体の地層から湧き出ているんだよ。群馬の平地に
はこうした塩分濃度の濃い冷鉱泉が沢山ある。怪我やアトピーでお悩みの方
には是非お試しいただきたいです。
ある程度浸かったら温水に入る。すぐにピリピリ、ジカジカしてくるよ。
因みにこれが女性風呂の「赤鬼」。湯船の配置と採光が違うね。この御宿に
関しては女性風呂の方が贅沢だと思うよ。
それにしても誰も来ないね。
源泉さま。再び。
すっごく好い湯だった。手首の手術痕をマッサージしてたらどす黒くなった。
効きすぎ?
じゃ岩風呂にも行ってみよう。
時間帯はこんな感じ。なので男性は17時までに入っておくこと。19時以降は
酒が入っちゃうし。
扉を開けると野趣満点の河原が見える。って唯の籔だよ。これ(笑)。
ま、真夏と違って殆ど羽虫もいなくなったのでまだいいけどね。
違った意味で野趣満点の岩風呂だった。
★ ★ ★
塩水の湯は長風呂すると逆に疲れちゃうのでほどほどにね。
18時から夕食タイム。
お食事は別室に案内してくれる。個室のお座敷で上州料理を頂く。
糸ウリと烏賊の酢の物
季節ですな。
長芋のゼラチン綴じ
長芋の摺り下ろしと短冊切りの異なる食感が愉しい。
八寸(零余子、生麩の胡桃味噌和え、揚げしんじょ、ジュンサイ)
鰤の照り焼きに辣韭を添えて
夏大根と生麩の椀物
そしてワインは秩父ワイン「源作印」。端麗な辛口の白。和食によく合うよ。
んでいよいよ名物の三波石焼だよ。神流川一帯で採取される緑色の結晶
片岩だね。熱熱になった焼石に葱と鶏肉を載せるんだ。
最初はこんな感じ。果たして焼けるの?
大丈夫。こんなにカリカリに。これをだし汁に着けて頂く。
最後に鉱泉で炊いた名物の黄飯と郷土料理のとっちゃなげ汁。つまりスイトン。
普通の白米なんだけど、なぜか黄色くなるんだって。そして糯米のような弾力の
ある炊きあがりになる。これマジで旨いよ。ほんとはお代わりしたかったけど、恥
ずかしがり屋だから、もう一杯くれって云えなかった。
「酒くれ!」
はいはい。君には羞恥心ないもんね。
ま、食事の量については多少物足りなさを感じたけど、大人の事情ってものが
あるのだろう。お客への応対は申し分ないので沢山お客が来てくれると好いね。
【翌 朝】
折角なので別館を探検してみた。我々しもじもが闖入するなど烏滸がましい限り
だが、そこはそれ。このヒツジを哀れと思って見逃して欲しい。
お~天井高い!床も天井も綺麗!
そして見よ!この数寄屋風の豪奢な構えを!
これが一番大きいお部屋。お大名様がお泊りになるのでしょうね。
ということで身の丈にあった部屋に戻り、朝食の案内を待った。
朝食も夕食と同じ座敷で頂く。残念ながら朝は普通の白米だった。が~ん。
「でもお櫃空っぽにしたんじゃね?」
まーね。
んでこの湯豆腐も温泉水なんだよ。独特の塩味が効いて豆腐もトロトロ。
昆布も食べたのは言うまでもない。何でも喰うのだ。
ということで宿泊しないと味わえない幻の古代塩泉を体験できた。嘗ては
大保養地温泉として殷賑を極めたことだろう。今はちょっとだけ背伸びす
れば手が届く、静かな大人の贅沢が満喫できる秘湯の御宿になっていた。
折角藤岡まできたのだ。ちょっとだけ寄り道していくことにした。
(ちょっと続く)
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