霧積温泉山行(剣の峰~角落山)② | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

≪樹間より時おり頭を覗かせる角落山≫

「霧積温泉山行(剣の峰~角落山)①」の続きです。

★  ★  ★

澄みわたる青空がそこにあった。
無事山頂を踏めた感謝の念を静かに伝える。
ここも信仰の山だったのだね。

剣の峰と較べて標高も低く、三角点もない角落山が主峰の扱いなのは
やはり独特なフォルムに拠るのだろう。


登頂した瞬間、「あ~眺望ゼロ!」と落胆しかけたが
祠の裏側が開けていて、草津白根山から、果ては谷川岳に至る
上信越国境の山並みが見事だった。


あたり一帯は古い火山帯。そのため安山岩質の硬いピークが
人工的に造られたかのように幾つも屹立している。
浅間隠山の右肩の奥に、横手山、岩菅山、烏帽子山と
奥志賀と切明の分水嶺をなす山々がずらりと並ぶ。

二度上峠をへて北軽井沢に至る道も白く光っていた。


そのまま東側に視線を移すと笹塒山(1,402m)。
「ささとややま」と呼ぶらしい。平仮名で書くと読みづらい。
最果てには上越国境の中央分水嶺。


三人座れば一杯の手狭なスペースだが
誰かが現れる気配はない。

持参した粗挽きソーセージを軽く茹でて
胡麻つきのパンに挟み、マヨネーズとマスタードを
たっぷり塗れば極上の朝食ができあがる。

「ほれ!」サル


えっ!くれるの!

なんとできたおサルであろうか。
いや奥さんであろうか。

それよりも、本日馴らしで履いてきた
おサルの青い「マムート・マジックHigh・GTX」が眩しい。

ほんとは僕が欲しいのだけど、残念ながら純和人タイプの足なので
靴が合わないのだ…。


エゾハルゼミの大合唱になってきた。
もうあれだよ。ハードロックのライブが終わって
ホールから出てくると耳がわんわん鳴るじゃん?
あんな感じだよ。

いやマジで。

そして写真を撮ろうとすると、イヤイヤして、少しずつ
幹の向こう側に回り込もうとする。

そんな長閑な山でのひととき。
事件は起きた。

あろうことか、せっかく山で作った手作りチュウハイを
足癖の悪いおサルが蹴飛ばしてしまったのだ。

食い物の恨みは恐ろしい。

普段は仲睦まじい夫婦を演じるヒツジだが
「もう!ばか」と、やり場のない怒りを抱えて憤慨しきり。

最初はしおらしくしていたおサルも
(毎度ながら)逆切れ。サル

しばし冷戦状態が続いた。
(冷静に文章化すると、実に呆れた夫婦である)

どれくらい経っただろうか。

「熱っ!」サル

慌てて臀部をさするおサル。

蚊取り線香を置いたことを忘れて
マムートの短パンを焦がしてしまったのだった。

被害は下に穿いているサポートタイツにまで及び
直径2mmほどの孔ができてしまっていた。

落胆を隠せず、体操坐りでベソをかくおサル。


ミヤマカラスアゲハだろうか。
高速で翔ぶアゲハチョウの撮影は至難の業だが
周回する習性があるので
狙いを定めて待っているといい。

振り向くと、おサルは変わらぬ姿勢で項垂れている。
自業自得(外す必要のない上蓋を外したのが致命傷)とはいえ
さすがに可哀相になり、宥めすかして
ようやく立直ったところで、男女のパーティが登ってきた。

視線の遥か先に、真っ白な鹿島鑓ヶ岳が耀いていた。


おサルよ。

モノは壊れても、幾らでも買い換えることができる。
でも、おサルが怪我でもしようものなら
その傷が物理的に治癒できようとも
心の傷は一生癒えないよ。

「判った!」サル

★  ★  ★

一時間ゆっくりしたので下山することにした。
角落山はそのまま縦走して降りることも可能。
ただし「男坂」というスリルのある岩場が待っているそうだ。

岩好きな方、是非トライしてください。


再び山頂直下の緩い尾根を伝って…


分岐を越えると、苦労して降りてきた剣の峰への道。


でも予想したとおり、登りは踏み込みが効くので容易かった。


この張り出した岩を巻いて、ホールドの乏しい岩の急登が
続くあたりが核心かなあ。


一見、なんてことなさそうでしょ。
でも足場が滑ってイマイチ決まらないのだ。
 
剣の峰山頂の手前で、別の男女パーティと離合。
この日出逢ったのは二組だけだった。
(出発が早すぎただけで、そのあとハイカーがいたかもしれない)


後は来た道を黙々と戻る。

いや、黙々ってことはなかったな。
いつも我が家はアホなことを大声で議論している。
そんな家だ。


登山道というよりも、軽井沢と横川を結ぶ生活のための
峠道の一部だったのだろう。
尾根を伝わず、水平な巻き道基調。
気持ちよい山歩きが堪能できる。


往路の難所ふたたび。
安山岩の露頭。ちょっと落石が怖い。
板状節理しているので、温度変化が激しい季節は要注意。


スズタケもこうしてみると美しい。
開花しているのもあるけれど。
鹿の食害でこうした景観を見ることも段々なくなっていくかもね。


戻ってきた。さぁてと。


いよいよ霧積温泉♪

おサルの足取りが軽い。
300mと距離標示してあったが、あっという間だった。


ここは若き日の作家・森村誠一さんが足繁く通った宿。
登山好きな森村さんは、その体験を『人間の証明』に反映している。


秘湯の宿「金湯館」に到着!
ちょうど12時を迎えた。往復5時間しか掛からなかった。

歓んでいいのか、悲しむべきか
そこが思案のしどころだった。

(温泉篇に続く)

【今回の行動時間】 3時間+2時間


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