昨年の12月に開催された首記会議の概要が先月後半に国土交通省のwebsiteに掲載されました。

その時に提出された「JR肥薩線復興方針(案)」に対しては既にココで当ブログなりの提案をしましたが、今回は出席者からの発言を踏まえて今後の推移を予想し、対策を考える機会とします。

■日 時 令和5年12月13日(水)13:30~14:30
■場 所 熊本県防災センター 災害対策本部会議室
■構成員 田嶋  徹  熊本県 副知事(田嶋副知事) 
     岸谷 克己  国土交通省大臣官房技術審議官(鉄道)
                            (岸谷技術審議官) 
     森戸 義貴  国土交通省九州地方整備局長
                            (森戸九州地方整備局長)
     吉永 隆博  国土交通省九州運輸局長(吉永九州運輸局長) 
     松下 琢磨  九州旅客鉄道株式会社
                             取締役常務執行役員総合企画本部長
                            (松下取締役常務執行役員)

 

 

これ迄の流れから、熊本県と国土交通省は、基本的には肥薩線復興を推進する立場であるのに対して、JR九州の松下取締役常務執行役員は反対ではないものの慎重でした。

よって、今回の会議においても松下取締役常務執行役員の発言を中心に見て行くこととしますが、始まりは、岸谷技術審議官の挨拶からでした。

続いて、田嶋副知事が「JR肥薩線復興方針(案)」(以下、復興方針(案))を報告する旨の発言、松下取締役常務執行役員の関係者の尽力に対する感謝の言葉を経て、

「JR肥薩線復興方針(案)」の説明を(取りまとめと資料の作成を担当した?)野村総合研究所より説明

され、田島副知事から、

施策を実施したとしても肥薩線単体の収支が黒字になるのはなかなか難しいと予想しているが、地域への波及効果を含め、地域が存続するための投資として関係者全員が取り組むことで地域に便益が還元される。

との補足がありました。


でも、これは、


頑張っても肥薩線は黒字にならないかもしれない。


と正直に言ってしまっているように思えますし、復興方針(案)もコンサルの野村総研に任せるのではなく、熊本県が自分の言葉で説明したほうが良かったのではないかと思います。

続いて、

JR肥薩線の鉄道復旧に向けた費用負担に係る市町村負担軽減の方向性について熊本県より説明

により、熊本県がより大きく責任を持つ旨の話をされましたが、これに対しては岸谷技術審議官が評価をされました。


そして、ここでJR九州の登場です。


同社の松下取締役常務執行役員は先の復興方針(案)に対して、

  1. 鉄道の存在が地域の存続に不可欠なものだということで位置づけをした上で、地域の将来像を描いた内容である
  2. 将来の人口集積のための施策あるいは日常利用の増加に対する打ち手というよりも、観光に大きく軸足を置いた内容だ
  3. (復興後も)鉄道そのものの収支は大きく改善しないことが示された。

の3点を指摘していますが、要するに、


人吉球磨にとって肥薩線が大事なのかもしれないが、

復興後も観光依存で日常の利用は増え無さそうなので、

収支の大きな改善も期待できない


と判断しているように見えます。

それだけでなく、

今後の検討すべき具体的な課題は、まずは「利活用策の深度化」についてだと思う。利活用策の深度化は、責任主体や継続性について関係者で十分に検討を進めていく必要があると考えている。 

とワザワザ念押ししています。


つまり、


肥薩線の利活用策は誰が責任をもって進めて行くのか

 

と敢えて質しているのは、


皆で頑張りましょう≒誰も何もしない

 

なんてことが往々にして有るからです。


更には、

「利活用策の着実な実行」により想定された効果を確実に発現させていく必要があると考える。これに対しては、関係者一同の努力が不可欠だと考えている。また、肥薩線が存続する限り継続して必要なものだとも考えている。

とは、利活用策は必ず効果を出さなければならないという当たり前のことを言っています。

すなわち、


「頑張ったけど駄目でした。」が無いように出来るのか?


ということです。


くどくど言っているように見えるかもしれませんが、

コロナ禍で明らかになったが、観光需要も安定的に担保できるものでないと思う。

ので、


本当に観光依存の計画で良いのか?

 

或いは、

熊本地震で被災した豊肥本線についても2020年に復旧したが、肥後大津~宮地間の利用の状況は被災前と比較して大きく減少した状況である。

という事例を挙げて、


同じことが肥薩線ではないと言えるのか?


と改めて問うた上で、

鉄道の復旧には多額の投資を必要とすることから、鉄道事業者としては鉄道の持続可能性、その観点が大変大事だということ

を再度強調しています。

そのことは熊本県も承知の筈ですが、田嶋副知事が指摘した、

豊肥本線が運転再開したことで、世界的なホテルが立地するといった動きもある。やはり繋がってこその役割も非常に大きい

については、熊本県の利益であってJR九州の利益ではないと考えなければなりません。

何れにしても、田嶋副知事としては、

蒲島知事は自身の任期中に肥薩線の鉄道復旧について道筋をつけたいという思いで取り組んでいる。12月議会で今期での退任を表明し、4月15日までの任期を全うしたい、県政に残された課題の中で肥薩線の復旧・復興は大きいと発言されている

ので、知事の花道を飾れるようなタイミングでの回答を求めています。

しかし、松下取締役常務執行役員は、

持続可能性も含めた観点からしっかりと社内で議論・検討し、次回以降のこの場で考えを示したい

と述べるに留めていますし、岸谷技術審議官も

課題はまだ残っており、詳細かつ深く議論をしなければならないが、時間も限られる。このメンバーでこの場でとなると、また何ヶ月か経ってしまうため、JR九州の担当レベルの方から膝詰めで、利用促進策や上下分離する場合の想定など事務的に議論を進めていただきたい。

と締めくくりに当たっての発言をしているので、今年の春に復興が決まる可能性は薄いと考えられ、


肥薩線復興を踏まえながら

持続可能性に関する協議を継続したい


という玉虫色の結論を一旦出した上で延長戦に入るのではないかと予想します。

だからこそ、当ブログがココで提案した幾つかの「今から出来ること」を前倒しで実行して少しづつでも成果を出すことこそが、延長戦で決着をつける為に最も重要な対策となるのだということを改めて申し上げておきます。