先日は台湾文化センターにて映画『星月無盡』上映会にお越し下さり、誠にありがとうございました。

台湾影視研究所の稲見久仁子さんからのお声がけで、トークショーに出させて頂きました。

100名以上のお客様にご来場頂きました。

驚きました……。改めて台湾がいまブームになっていることと、台湾の文化が受け入れられていることをとても嬉しく思いました。

 

さてさて、映画『星月無盡』は2009年に台湾で劇場公開されていますが、残念ながら日本では上映されていません。ですから、この間は日本”初”上映会ということになりましたが、如何でしたでしょうか。

この映画は、金門がオールロケ地です。

青春映画+金門観光PR映画?と思うほど、金門の観光スポットが余すところなく映っています。私としては、金門と言う土地を知るためのヒントが、山のようにつまった入門書ではないのかな、と思う内容でした。

金門の歴史、人、自然、建物、文化……。

いろいろと出てきますが、あくまでもヒントであって、深く、詳しくは描かれていません。

お勧めの見方としては、見て面白かったり、疑問に感じたりしたことをメモに取り、本で調べてみること。そして実際に行って確かめて、楽しむ。そんな利用のしかたができる映画ではないのかな、と。

 

トークショーでもお話しましたが、私がもっとも興味をひかれたのは、金門の人たちが「台湾に行く」という言葉を使ったところです。

私たちにとっては、金門も含めて台湾であると思いがちです。ですけれども、実際に金門は台湾ではありません。というのも、行政上、中華民国といういまの台湾の政治体制からいえば、台湾省のなかに高雄、台北、台中などがあり、金門は台湾省ではなく、福建省にあるからです。ちなみに、馬祖もそうです。

ですから金門は「台湾ではない台湾である」、ということに改めてハッと気づかされました。

 

金門にはかなり純粋に福建文化が残っています。

主人公が住んでいる家は閩南建築の代表的な建築“四合院”でした。台湾にもありますが、金門のように完全な形で多く残ってはません。さらにそのような建物のなかで、人々が日々の生活を営んでいるのを目撃することが出来ます。

建築好きな人にはたまらない場所かもしれませんね。

 

また、トークショーでは時間がなく多く触れることができませんでしたが、やはり金門と言えば、大きなテーマは「戦争と軍人」です。

国共内戦の最前線にあった金門。

映画に登場する「阿美」という奇妙なおばあさん。あの女性は何者か—。

以前、中国大陸から何十発もの砲弾が打ち込まれた金門では、軍人だけでなく、一般の人も多く巻き込まれ、亡くなりました。家族を失くした被害者が大勢まだ金門に残っています。ですから、大きな音を聞くと反射的に体が縮こまってしまう高齢者もまだいらっしゃいます。そんなかつての緊張した状態が、夫を失い、精神を病んでしまった「阿美」の行動からわかるのではないでしょうか。

 

物語の中心は、2つの時代をまたいだ金門育ちの姉妹の恋愛話しです。姉は、若い兵士が3−5年の軍役につき、地元の若い女の子と恋愛していた時代です。必ずしも幸せにはならなかった恋が多かったと聞いております。だから家族は猛反対し、兵士との恋愛は御法度と言われていました。

反対に妹の話しは、地雷が撤去された砂浜で楽しく遊べる平和な時代です。一昔前の親世代は心配し、兵士との恋愛には否定的ですが、若い二人にそんな心配は無用。

変わりゆく金門の立ち位置と、時代に翻弄された恋愛も見所のひとつでした。

 

映画を撮った唐振瑜監督は、兵役を金門で過ごしたことから、金門に興味を持ち、金門に関する作品を撮り続けていると、稲見さんから伺いました。

きっと、ドキュメンタリーはあまり見ない人たちにも、金門とはこんなところだ、ということを伝えたく、作り上げたものではないかと思います。

 

またこのような機会があり、一人でも多くの方に金門の魅力が伝わればいいなと思いました。

 

最後に、この映画がきっかけで金門に興味をもたれた方にお勧めしたい映画が2本あります。

1つ目は『軍中楽園』。1960年代後半の、金門を描く傑作だと思っています。

詳しくは以前のブログに書いてありますので、一読して頂けると嬉しいです。

 

2つ目は『刪海經(The Lost Sea)』。これは2000年以降の、最近の金門を描いたドキュメンタリー映画です。元々金門は戦地だったため、大型の動物はほとんど棲息できませんでしたが、海の生物は豊富で、カブトガニの生息地としてとても有名でした。なんでも昔は捕れすぎて、地元の人々はカブトガニを炒めたりして食べていたそうです。ところが、近年は海岸線の開発が進み、カブトガニが絶滅の危機にさらされている……。

台湾本土、大陸からの観光客で賑わう金門。大型の免税店やホテルも建ち、少し前までの金門とは様変わりしています。その裏で、現実にはどういうことが起きているのかがわかる作品です。

 

金門の名産は「高酒」と「貢糖」です。お酒も飲めず、ピーナッツが苦手な私とは縁がない二品ですが、美味しい海鮮(特にカキとカニ)を食べられるので、金門のファンになりました。

秋はカニのシーズンです。

戦争の場所から平和を象徴する場所になった金門。

そんな金門に是非遊びにいらして下さい。必ず、違う台湾が発見できると思います。