科挙のせいで科学技術が衰退 | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

「 日本人だけがなぜ日本の凄さに気づかないのか 」

ケント・ギルバート (Kent Sidney Gilbert 1952~)

石平 (せき・へい 1962~)

株式会社徳間書店 2017年8月発行・より

 

 

 

 石平 中国や朝鮮でも流動性はありました。

 

 

     それは科挙の試験を受けて合格すれば、誰でも朝廷の官僚に

     なれたのです。

     ただこれは、建前上のことです。

 

 

     試験を受ける権利は誰にでもあるのですが、実際はそんなことは

     ありません。

 

 

     農民の子供が受験しようと思っても、まず無理です。

 

 

     しかし、一応は、一般にも開放されていますから、そういう意味

     では流動性があるといえるでしょう。

 

 

     ただ、そこから別の問題が起こってしまいました。

     誰もが科挙を目指すということです。

 

 

     優秀な頭脳の青年がやることは、一つしかない。

     科挙の受験です。

 

 

     そして官僚になる。そのために四書五経を必死で暗記する。

 

 

     その結果、科学を研究する人も、技術を磨く人もいなくなった。

 

 

     朝鮮と中国で成功者となるのは官僚ばかりで、詩人すらも官僚で

     す。

     文化人がそのまま官僚になる。

 

 

     王朝から独立した知識人は存在しないのです。

     だから科学技術も発達しない。

 

 

     日本の江戸時代のように町人文化が花開いたりすることもなく、

     あるいは市井(しせい)の学者もほとんど生まれてこなかった。

 

 

     中国では、現在でも共産党幹部になることがいちばんの栄達への

     近道です。

     賄賂(わいろ)もとれますしね。

 

 

     企業も共産党とつながった国営企業でなければ成功者にはなれ

     ない。

     民間企業ではほとんど成功できないのです。

 

 

     成功するためには、共産党幹部に賄賂を贈らないとうまくいかな

     い。

 

 

ケント 現在の韓国でいえば、財閥系企業に入ることですね。

 

 

     そういったことに汲々としているから、韓国からはノーベル賞受賞

     者が出ないのでしょう。

 

 

 石平 そうですね。なぜ韓国からノーベル賞受賞者が出ないのかが話題

     になったこともありますが、財閥系系企業に入ることがすべてで、

     純粋にひたすら研究に打ち込むという気概がないのでしょう。

 

 

     だから、韓国ではいい大学をでて財閥に入ることが自己目的化し

     て、受験地獄になっているのだと思います。

 

     (略)

 

 石平 もう一つ、科挙制度から出た弊害があります。

 

 

     それは前述したように、儒教の教えが入試に合格するための、

     ただの道具にすぎなくなったことです。

 

 

     受験に必要だから勉強するだけで、合格したら、みんなすぐ忘れ

     てしまう。

 

 

     儒教を手段としてしか見ないから、儒教の精神が形骸化したので

     す。

 

 

     だから、「仁義礼智」 も言葉だけで社会に定着しない。

 

 

     むしろ表では道徳を説きながら、裏では平然と不道徳を働くような

     不健全な社会になってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

                        8月15日の奈良興福寺