「とる」を漢字で書くときは・・・ | 人差し指のブログ

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「漢字と日本人」

高島俊男 (たかしま としお 1937~2021)

株式会社 文藝春秋 平成13年12月発行・より

 

 

 

 

 よく わたしに こういう質問の手紙をよこす人がある。

 

 

           「とる」 という語には、「取る」 「採る」 「捕る」 「執る」

 「摂る」 「撮る」 などがあるが、どうつかいわければ よいか、教えてください。

 

 

あるいは、「はかる」 には、「計る」 「図る」 「量る」 「測る」 などがあるが、どう つかいわける のか教えてください。

 

 

 わたしは こういう手紙を受けとるたびに、強い不快感をおぼえる。

こういう手紙をよこす人に嫌悪を感じる。

 

 

こういう手紙をよこす人は、かならず おろかな人である。

 

 

おそらく世のなかには、おなじ 「とる」 でも漢字によって意味がちがうのだから正しくつかいわけねば ならない、などと言って、こういう無知な、

おろかな人たちをおどかす人間がいるのだろう。

 

 

そういう連中こそ、憎むべき、有害な人間である。

 

 

こういう連中は、たとえば わたしのような知識のある者に対しては、そういうことは言わない。

 

 

「滋養分をとる」 はダメ、「摂る」 と書きなさい、などとアホなことを言って

くるやつはいない。

 

 

ほんとに自分の言っていることに自信があるのなら知識のある者に対してでも言えばよさそうなものだが、言わない。

 

 

もっぱら自分より知識のない、智慧のあさい者をつかまえ ておどす。

 

 

「とる」 というのは日本語(和語)である。 その意味は一つである。

 

 

日本人が日本語で話をする際に 「とる」 と言う語は、書く際にもすべて 「とる」 と書けばよいのである。

 

 

漢字でかきわけるなどは不要であり、ナンセンスである。

 

 

「はかる」 もおなじ。 その他の語も もちろんおなじ。

 

 

 

 

 

 

7月9日の三条通り