田中角栄とエリート官僚 | 人差し指のブログ

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「 少年の夢       梅原猛対談集 」

梅原猛ほか  (うめはら たけし 1925~2012)

小学館 1994年12月発行・より

 

 

 

 

~  リーダーシップの秘密 早坂茂三 (はやさか しげぞう 田中角栄の政務

      秘書を23年間務めた・政治評論家  1930~2004)  ~

 

 

 

 

早坂 僕が学者のことをほめるでしょう。

 

 

    そうすると、「学者なんてだめだ、あれは世間知らずで、何も世の中

    のことをわかっていない。そんな者の意見はおまえが聞け」 とい

    う。

 

    「じゃ、おやじさんはどうするんだ」 と聞くと、

    「やる気満々の若い役人を呼べ、局長以上はだめだよ、あとの次官

    コースと天下りで頭がいっぱいだから彼らはだめだ」 というんです。

 

 

梅原 それはおもしろいですね。

 

 

早坂 角栄さんはいつも言ってました。役人にはおれが方針を示す。

    役人の目線の高さは現行法体系、これを超えることができない。

 

 

    だけど、それは役人の属性であって、責めることはできない。

    日本の役人は生きたコンピューターだ。

 

 

    政治家は鳥になって、空の上から下を見て鳥瞰的、俯瞰的なものの

    見方を役人に示すことだというのが一つ。

 

 

    二つめは、役人は責任を取りたくない。

    それがスタートでありゴールである。

 

 

    だから、おシャカ(ダメ)になったことの泥はいっさい、政治家がかぶ

    ってやらねばならない。

 

 

    それから三番目は、役人は、みんな安い給料で信じられないほど働

    いている。

 

 

    現業をもっている役人は、業者と酒を飲むとき、テーブルの下から

    白封筒でひざ小僧をこつこつ触られる。

 

 

    それを役人だってほんとうは欲しい。

    だけど、受け取ってもし表沙汰になれば一巻の終りだ。

 

 

    彼らはそういう切ない思いをこらえながらやっている。

 

 

    だから、彼らが辞めたあと、安心して第二の人生を送れるような、

    そういう場所を政治家は用意してやることだ。

 

 

    この三つをやれば、役人はこの政治家についていれば損はない、

    うちの法案もよそより早くあげてくれる、予算もあまり削らないでやっ

    てくれる、と周りに寄ってくるよ。

 

 

    それを偉そうに、ひっくり返って、足をテーブルの上にあげて、ああ

    せい、こうせいといったって、あの勘定高い役人が寄ってくるものか

            という話をしていましたね。

 

     (略)

 

早坂 ロッキード事件があったでしょう。そしてかつての英雄はどぶに叩き

    落とされた。

 

    そして日本中からよってたかって叩かれているわけですよね。

 

 

    ところが、役人たちは大蔵省を先頭に注意深く、ふろしき包みをもっ

    て、これには書類、ノート、赤鉛筆が入っている。

 

 

    マスコミの目を注意深く避けながら目白の家や平河町の事務所にき

    ましたよ。

 

 

    なぜきたか。田中から知恵を借りたい。

    どこのボタンを押せばどういう音が出るか。

 

 

    角栄は議員立法を七十二法もやった人ですから。

    二十八歳で初当選してから議員立法を手がけてきた人ですから、

    立法のツボをよく知っている。

 

 

    ところが役人はオリジナルアイデアがなかなか出てこない。

 

 

    一方角栄さんは東京大学法学部では想像もできない発想を示し、

    しかもリアリティーがある。

    ということを役人たちは経験で知っている。

 

 

    そして、彼はいま刑事被告人になったけれども、依然として大ボスで

    ある。

 

 

     たとえば中曽根(首相)に何かやらせるためにはこっちから攻めて

     いって、角栄から中曽根に電話を一本させる。

 

 

    このほうが手っとり早い、まちがいないということを役人は知ってい

    る。

 

 

    ですから、彼らは書類を持ってロッキード事件で日本中がひっくり返

    るような騒ぎのなかでも通い続けた。

    これが実態ですよね。

 

        『 THIS IS 読売 』 (読売新聞社刊)1991年9月号収載 

         原題 「未知なる田中角栄 PARTⅡリーダーシップの秘密」

 

 

                                       

 

 

角栄の役人に対するお中元とお歳暮はすごかったそうです。

2019年10月2日に 『田中角栄からの 「お中元とお歳暮」』 と題して

城山三郎と京極純一の対談を紹介しました。コチラです。↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12529468617.html

 

 

「カレーの食べ方」 で白州次郎が田中角栄を叱った話を2016年11月

30日にちょっと書きました。  コチラです。 ↓

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12222141550.html?frm=theme

 

 

 

 

 

                            4月10日の奈良公園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                 東大寺の大仏殿