米国の「韓国とベトナム移民」  | 人差し指のブログ

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「 地球を舞台に     ボーダーレス時代をよむ     」

編者 梅棹忠夫 (うめさお・ただお 1920~2010)

日本放送出版協会 1994年6月発行・より

 

 

 

 ~ 悩めるアメリカン・サラダ・ボウル  石川好(いしかわ・よしみ) ~

 

 

 

 

石川 1980年代にカリフォルニアでいちばん問題になってたのは、

    民族的にいうと韓国人だったとおもうんです。

 

 

    日本人の場合は、外側に経済大国日本がありますから いいんで

    すけれども、韓国人の場合は、突然プチブル的にはいってくるわけ

    です。

 

 

     移民社会というのは、まず丁稚奉公的にさきにきた人たちをもうけ

    させて、すこしずつステップをふんでいくわけですが、韓国人は小銭

    をもってきて、いきなり最初からもうけるところから はいっちゃうん

    ですよ。

 

 

    ロサンジェルスならロサンジェルスの黒人や、メキシコ人のやすく住

    めるところに、韓国人の小さい経営者がみんなはいって いるわけ

    ですね。

 

 

    そこで黒人やメキシコ人は韓国製のやすい車にのって、韓国人経

    営するリカー・ストアで酒をかって、韓国人の経営するコイン・ランド

    リーで洗濯をする。

 

 

    家に帰れば韓国製のやすいテレビを見て、韓国人のオーナーに

    家賃をはらう (笑)。

 

 

    自分はアメリカに住んでいるのに、カネをはらう相手は、みんな

    韓国人だ。

 

 

    稼いだカネはすべて韓国人のコミュニティにつかわれている。

 

 

梅棹 それで、摩擦は おこりませんか。

 

 

石川 おこってます。

    韓国製品ボイコットや韓国人の店での不買運動がおこっています。

 

 

    いくらおカネを稼がせても、一円も黒人とかメキシコ人のコミュニティ

    ーにおとさない。

 

 

    コントリビューション(貢献)がないといういい方をするわけですね。

 

 

    日本のテレビでもずいぶん報道されていますが、ニューヨークでは

    完全なボイコット運動が半年ぐらいつづいています。

 

 

梅棹 ベトナム人はどうですか。

 

 

石川 ベトナム人のコミュニティーも、また別なかたちで、いろいろな話題を

    つくっているんです。

 

 

    ベトナム人は、ベトナム戦争のあとに難民として はいってきました

    でしょう。

 

 

    アメリカがめんどうをみなきゃいけないということがあるわけですね。

 

 

    アメリカ人というのは人がいいですから、難民収容施設に、

    いろいろなことを おしえにいったりするわけです。

 

 

    で、有閑マダムたちが、ペットのイヌをつれてくる。

 

 

    ちかくの学校を借りて、ベトナム人の子どもたちに英語やクッキー、

    パイのやき方を おしえる。

 

 

    おわって外にでてみると、イヌがいないんですよ。

    全部食べられてしまった (笑)。

 

 

    アメリカ人は、イヌを食べるなんてことは信じられないし、

    しかも自分が飼っているかわいいイヌでしょう。

 

 

    それで、たいへんなことになっちゃったんですね。

 

 

     いま、アジア系の人たちがもちこんだ生活様式が、はじめてカリフ

    ォルニアという場所でヨーロッパの生活様式と激突しているんだと

    おもいます。

 

 

    いままでヨーロッパから移民がはいってきても、どこか共通の価値

    観がありましたから、なんとかやれたとおもうんですけれども・・・

 

 

梅棹 それはそうですね。ヨーロッパ文化とアメリカ文化というのは基本的

    には共通ですからね。

 

 

石川 ところが、ビバリーヒルズかなんかのおばさんたちがイヌを食べられ

    ると (笑)、そういうことにたいして、アメリカ人の心理的な調節が、

    まだ ついてないとおもうんです。

 

                    ~ 『月刊みんぱく』 1991年3月号 ~

 

 

 

 

 奈良・東大寺二月堂の夕焼け、夕日の左に大仏殿の屋根が見えます。

                                                                             9月17日撮影