モディリアニは酒飲みで喧嘩ばかり | 人差し指のブログ

人差し指のブログ

パソコンが苦手な年金生活者です
本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

「 徳川夢声の問答有用 3 」

徳川夢声 (とくがわ むせい 1894~1971)

朝日新聞社 昭和59年11月発行・より

 

 

 ~ 国際画家のパリ画壇交遊録   藤田嗣治(1886~1968) ~

 

 

 

藤田   ベルギーでは、「絵かき」 ってのが わるくちになってますね。

 

 

夢声   パリじゃ、まさか わるくちになってないでしょう。

 

 

藤田   なってません。

      ピカソ、モディリアニ、ユトリロ、みんな貧乏のどん底までいった

      ひとですけども、いまは1枚の絵が五百万、六百万フランにもな

      る。

 

 

      こないだ、セザンヌの八号の絵が三千五百万で売れましたが

             ね。

 

 

      そういうことになるんですから、やっぱりフランスでは、絵かきを

             ばかにしませんね。

 

 

      非常にだいじにしてくれます。

 

 

夢声   モディリアニってひとは、どういうひとがらですか。

 

 

藤田   酒飲みで、けんかばかりしてるんです。

 

      先日死んだキスリングなんかと、しじゅうけんかしましてね、

             あたしがいつも仲裁役ですよ。

 

 

      柔道を知ってるというので、ぼくが出ると、けんかがおさまるわけ

             ですね。

 

 

      第一次欧州戦争中に、モディリアニとスーチンとぼくと三人で、

             ルノアールが住んでいた南仏のカーニュという村へいったことが

             あります。

 

 

      モディリアニが、監獄へ二度くらいはいってたことのある悪党をつ

             れてきましてね。

      「お前、柔道をやってみせろ」 ってんですね。

    

      そこのテラスで、ぼくはその男をたちどころに投げた。

 

 

      それをみて、モディリアニが恐れをいだいてね、以後、サロン・

             ドートンあたりの連中は、ぼくには手を出しません(笑)

 

 

      ・・・・・・モディリアニが絵をかくときには、しかめっ面して、大きな

             声でどなったり、うなったり、たいへんなもんですね、あれ。

 

 

夢声   そういう絵にゃみえませんがね。

 

 

藤田   ええ、とてもやさしい絵ですよ。

 

                             (昭28、7、1日 対談)

 

 

 

             八重の藤の花  4月27日 奈良・興福寺にて撮影