「 逆検定 中国国定教科書 中国人に教えてあげたい本当の中国史 」
井沢元彦(いざわ・もとひこ) / 金文学(きん・ぶんがく)
祥伝社 平成17年9月発行・より
井沢 日露戦争というのは、もう一度言いますが、「人類年表」 という
ものを作るとしたら、その項目の一つに選ばれるほどの重大事
件です。
日露戦争で 「非白人が初めて白人に勝った」 というのは、単に
一国の勝利に留まらず、世界の人種による不平等の解消に繋が
ったのです。
中国では孫文が、「黄色人種が白人人種にはじめて勝った」 と
大変に喜んだし、インドもすごくよろこんだ。
また、トルコのように白人の国家に圧迫されていた人たちも、もの
すごく喜んだ。
つまり、日本の勝利で 「これでアジアの夜明けが訪れた」 と思っ
た人たちが沢山いたのです。
当時、日本の勝利は白人国家にとっても衝撃的な出来事でした。
「これで世界の歴史は一つ大きく変った」 という評価をロンドン
の 『タイムズ』 はしています。
ですから、そういう世界的にも影響の大きかった出来事とその意
味に全く触れない中国の歴史教科書は、やはりおかしいのです。
金 そうですね。これもやはり中国のコンプレックスでしょう。
中国にすれば、非白人のリーダーはあくまで中国であるべきなん
です。
日本がリーダーになるなんてあり得ない。
それなのに現実は、日本がロシアとの戦争に勝ち、非白人のリー
ダーの座に就いてしまったものだから悔しかったんでしょう。
ですから、そうした事実を書かないのは、中国のコンプレックスが
最大の理由だと思いますよ。
中国というのは、ロシアには常にやられてばかりで勝ったことは
一度もないんです。
勝つどころか、まともに戦ったこともないのです。
中国がロシアとまともに対峙し、ロシアは悪い国だと非難するよう
になるのは、文化大革命に入ってから、つまり1960年代になって
からです。
ですから教科書を見ても、この時期のロシアのアジア侵略につい
ては、ほとんど触れていません。
ましてやこの時期のロシアの南下政策ということに触れてしまう
と、日本の苦しい立場を正当化することに繋がるので、そうした重
要な歴史的事実にさえ触れていないのです。
9月3日 青葉台公園(埼玉・朝霞)にて撮影