「 まなこつむれば・・・ 」
吉田直哉 (よしだ なおや 1931~2008)
筑摩書房 2000年1月 発行・より
ナスカの地上絵も、なんのために描かれた、あるいは誰のために描かれたのかについては何もわかっていない。
地上最大の天文図、かつてこの地を訪れた惑星間飛行士のための航空標識 。 議論は果てなくつづくだろう。
と、ここまでは外国の話だったが、数ある、天からみなければわからぬ図形のなかで、極めつきは日本のそれかもしれないのである。
といっても、線が引いてあるわけではないから、空からみただけではわからない。
国土地理院の精密な二万分の一地図を何枚もつないで正確に直線を引くと、息をのむ壮大な図形が出現してくるのだ。
これは地図がテーマの月刊誌 『 ラパン 』(ゼンリン) に多田克己氏が連載した 『 歴史の謎を探査せよ!』 で知ったことなのだが、たとえば関東甲信地方の国分寺(金堂跡)という厳選されたポイントを線で結ぶだけで、いくつもの実に正確な二等辺三角形が現われるのである。
▶ 常陸国分寺を基点に、上野国分寺と相模国分寺で二等辺三角形が
形成される。
▶ 相模国分寺を基点に下野国分寺と上野国分寺で二等辺三角形。
▶ 相模国分寺を基点に安房国分寺と甲斐国分寺で二等辺三角形、
などなど。
これにさらに諸国の一の宮が加わると いくつもの平行四辺形の出現とともに、さらに壮大な幾何学図形が現われるのだ。
多田氏は八世紀の末までに創建された六十二か国の国分寺にも、
十一世紀末までに整った諸国の一の宮の聖定にも、高度の三角測量技術が用いられた、という仮設を立てておられる。
二万分の一地図六枚をつないで縮小しなければならないので、図示できないのが残念だが、偶然だろうと疑われる方は たとえば福岡の志賀海(しかうみ)神社と香椎(かしい)宮、住吉神社を結び、さらに香椎宮と宇佐神宮、肥後国分寺跡を結んでほしい。
日本全体が精密測量の軌跡で蔽われている、と気づくことであろう。
畏怖の念を抱くか否かにかかわらず私たちは確実に、息をのむ図形のなかで生きているのだ。
初出 「Φ」 1997年12月号
~これも面白いです~ 216年11月12日に 「地球の裏側に同じものが!」 と題して吉田直哉の文章を紹介しました。 コチラです。 ↓
https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12216208177.html
朝霞(埼玉)の花火大会 8月4日 中央公園にて撮影