「歴史の見方」平川祐弘 | 人差し指のブログ

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「 米国大統領への手紙 」

平川祐弘 (ひらかわ すけひろ 1931~)

株式会社 新潮社 1996年2月発行・より

 

 

 

 過度の愛国主義は他国民に害を加えるばかりか、自国民にも測りがたい災いをもたらす。

 

 

歴史はバランスの感覚が大切で、表裏を見ることが大切だから、日露戦争を一方的に侵略戦争ときめつける中国人学生に追随する気持は私にない。

 

 

日露戦争について中国人でも南方出身の孫文は何と言ったか、レーニンは何と評価したか、白人不敗の神話が破れたことをネルーは自伝で何と回顧しているか、H・G・ウェルズやアナトール・フランスのような西洋知識人は何と言ったか、当時日本に留学中の中国青年がなぜ日本を支持したのか、そうしたさまざまな面を語るのが歴史の授業ではないだろうか。

 

 

中国の公式歴史教科書にいま何と出ているかに従って黒白のレッテルを貼るのが学問としての歴史だとは私は考えない。

 

 

ましてやかつて社会主義陣営に媚を呈した日本の一部の歴史学者の自虐的な日本史観に従うつもりはない。

 

 

それは自誇の歴史観と同様、醜く歪んだものであるからだ。

 

 

また日本の歴史教科書に当時の連合艦隊司令長官の名前が載るのはイギリスの歴史教科書にネルソン提督の名前が載るのと同じくらいに当然なことだろう。

 

 

中国では乃木希典は悪玉中の惡のように言われているらしいが、そして日本でも評価は左右で分かれているが、私には森鷗外が親しく接して見聞きした乃木像などがきわめて客観的で、その人間をよく伝えているように思える。

 

 

日露戦争は帝国主義の侵略戦争である、乃木大将はその司令官の一人である、よって乃木大将は悪者である、という断罪の論理の組み立て方は、おおまかに過ぎてそら恐ろしい気がする。

 

 

しかし東郷や乃木の名前が日本の歴史の教科書に復活するのが、もし愛国心の過度の強調が狙いで行われるのだとしたら、それもまた問題だろう。

 

                                     

 

 

8月24日に~「歴史の見方」福田恆存~と題して福田の文章を紹介しました。コチラです。 

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12392516115.html

 

 

 

6月16日に~マルクス主義は「復讐の哲学」~と題して山崎正和の文章を紹介しました。コチラです。

https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12359368172.html

 

 

 

 

 

朝霞(埼玉)の花火大会  8月4日  中央公園にて撮影