「 いじめを粉砕する 九の鉄則 」
谷沢永一 (たにざわ えいいち 1929~2011)
株式会社幻冬舎 2007年1月発行・より
日本の戦後社会の、一番根本に嘘がある。
憲法の前文に、
「 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
とあるが、これがもう真っ赤な嘘なのである。
世界中の諸国民は、決して平和を愛してなどいない。
すべて、民族対立、民族紛争を起こそうとしているのであって、いまだに、ミサイルをぶち込んだり、国境線を侵入したり、無差別テロを行ったり、と盛んに世界中で争っている。
世界中の国民が平和を愛したのは、第二次世界大戦が終わった直後の二,三時間だけなのだ。
だれだって、病気になって病院に入れば、早く健康になりたいと思う。
やっと治って、医者に退院してもいいですよと言われた時は、
「さあ。これからは健康に留意して、暴飲・暴食を慎んで、平穏に暮らそう」
と、その日は思う。 しかし三日目から忘れる。
世界中がそうなのである。
それなのに、
「人間社会は、皆が平和を望んでいるんだ」
という、事実とまったく違うことを教えてしまった。
人間社会はトラブルの連続、紛争の連続である。
それは武器を取って傷つけようが、あるいは金(かね)を脅し取ろうが、やり方はいろいろあるにしろ、紛争、闘争、競争、恫喝(どうかつ)、だまし合い、出し抜きが常にある。
それが、人間社会の根本原則である。
人間同士がお互いに手をつなぎあって、ピクニックに行くような穏やかな平和な雰囲気に包まれているのが正常だ、と考えるのは間違いである。
戦後六十年間、世界中で戦争が絶えなかったし、現在も一触即発の状態がどこにでもある。
戦後の民主主義教育は、人間は平和に暮らしていることがノーマルで、ときどきアブノーマルな戦争が起こるという教育をしたしまった。
根本の人間認識や社会認識を間違えて教えた。
人間は争うものである。 社会は戦いの場である。
人類の存在する限り、世界中の平和など絶対にありえない。
朝霞(埼玉)市内 10月17日撮影