官僚による不況の大罪 | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

『 「わがまま」 のすすめ』

堺屋太一(さかいや たいち 1935~)

東京書籍株式会社 平成16年12月発行・より

 

 

 

 まず 「不況の大罪」。これは経済財務官僚の無能が招いたものです。

 

はじめバブルを引き起こし、次ぎにそれを無残に潰(つぶ)して不況を招き、その後は景気の回復を妨げ続けました。

 

この十二年間、経済が回復しかけると、必ず官僚が出てきてその動きを破壊しています。

 

 

 

  そもそもバブルの発生は、官僚の予想能力の欠如に端を発しています。

 

1985年、国土庁は 「東京のオフィス・ビル不足」 の予測を発表しました。

 

近い将来、東京にはビジネスや人口が集中し、深刻なビル不足に陥るため、霞ヶ関ビル何百本分ものビル建設が必要だというものでした。

 

この大はずれの予想が、土地ブームの火付け役となったのです。

 

 

 

 

 この予測に象徴されるように、

官僚の予測はこのところ当たったためしがありません。

 

 

その原因は単なる杜撰(ずさん)や時流迎合ではなく、

官僚が経済原則をまったく理解していないという点にあります。

 

 

 

  このビル需要の例でいうと、ビルが不足して、オフィスの家賃が上がれば、必ずスペース節約技術開発が進むし、事務所の分散も起こります。

つまり、需要の伸縮は価値の変動に応じた関数なのです。

 

 

ところが官僚はこんな基本的な経済原則を無視して、気分と自己都合だけで需要を予測してしまうのです。

 

 

このような市場原理の無視は、平成官僚につきまっとっている大欠陥であり、何度失敗しても直そうとする気配すらうかがうことができません。

 

 

  官僚は需要の過大予測やバブルを作っただけではなく、金融緩和や公共事業でそれを増幅させました。

 

 

そして地価上昇への非難が激しくなると、突如、金融引き締めに転じて大不況を招きました。

 

 

しかも不良債権処理のチャンスもことごとく逸して、日本経済をガタガタにしたことは、ここで詳述するまでもないでしょう。

 

 

 そのうえ、九六年に景気が回復しかけたとき、財政再建を強引にやろうとして、その芽を摘んでしまいます。

 

 

私が経済企画庁長官を務めた二年余りには、景気も相当に回復しましたが、そのあとではまた官僚たちが不況化を企んでいることは見逃せません。

 

 

 

 

4月9日 多摩森林科学園(東京・八王子)にて撮影