当時の外務省の軍事知識 | 人差し指のブログ

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「人間はなぜ戦争をやめられないのか   平和を誤解している日本人のために

日下公人 (くさか きみんど 昭和5年~)

祥伝社 平成16年5月発行・より

 

 

 

 

一昔前、ソ連がバックファイアーという爆撃機をウラジオストクに配備したとき、これは最大進出距離が5500キロもあると騒がれた。

 

 

5500キロといえば、沖縄まですっぽり日本列島が攻撃範囲に入る。

 

 

ソ連の脅威が顕在化した、と一時期さかんに論議され、軍事評論家や外務省の高官がそれを言い出すと、シーンとして聞いたものだ。

 

 

 

 しかし、それはアメリカの国防総省やイギリスの研究所が発表したとおりを言っているのであって、日本の外務省で独自に調べた数字ではない。

 

なぜアメリカが発表したことを、外務省は信じるのか。

 

 

 そもそも、アメリカの軍人はバックファイアーに乗ったこともないのに、どうしてソ連機のことをそんなに詳しく知っているのか、という疑問が生ずる。

 

 

 最大の疑問は、バックファイアーは本当に日本全土を脅かすのか、ということである。

 

最大進出距離とは、爆弾を搭載していない時の航続距離の二分の一である。

でなければ、発進した基地に帰投できない。

 

 

その場合、爆弾を積んだら重量が大きくなるため、当然、航続距離は短くなる。

 

 

最大進出距離が5500キロと言うのだから、その時は当然、爆弾なしだろうと思って聞いていると、その高官は爆弾搭載20トンと言う。

 

 

ごっちゃにしていませんかと質問したら、彼は黙ってしまった。

当時の外務省の軍事知識はその程度だった、

 

だが、それが健全な日本人の水準だった。

 

 

 しかし、アメリカでそんなことを言えば馬鹿にされるだろう。

 

飛行機の性能について語る場合、爆弾とガソリンの重量はトレードオフ(二律背反)の関係になる。

アメリカ人は子どもでも知っている。

 

 

 

 ちなみに、最近の 『ジェーン年鑑』 などを見ると、バックファイアーの行動半径は1500~2410キロメートルと書いてあり、その後に搭載量は24トンと記述している。

 

出撃に際して搭載する爆弾とガソリンの重量を決定するのは、参謀(スタッフ)の任務である。

 

 戦後、日本の安全保障はすべてアメリカがやってくれた。

日本人は戦争に無関心でいられた。 軍事知識も必要なかった。

 

 

 

 

4月9日 多摩森林科学園(東京・八王子)にて撮影