ローマ時代と馬のアブミ | 人差し指のブログ

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本を読んで面白かったところを紹介します

 

 

 

「文明が衰亡するとき」

高坂正堯(こうさか まさたか 昭和9年~平成8年)

株式会社新潮社 2012年5月発行・より

 

 

 

 

五十年ほど前に、技術と歴史の関係を捉えて種々の興味ある研究をおこなったフランス人ブリュネは、ローマ時代の馬の使い方に注目した。

 

 

ローマでは、牛馬につけるくびきが組馬の背みねにつけてあり、くびきの両端から、それぞれ屈伸自在の二本の革帯が出ていた。

 

 

その一本は前脚のうしろにかかる腹革であり、もう一本は顎にまきつくようになっており、それが馬の喉笛をおさえて、牛馬を制動するしくみとなっていた。

 

ところが、このしくみでは、重いものを引張らせると馬の喉がつまってしまう。

 

 

現在われわれが知っているくびきと比べて四分の一ぐらいの力しか出せなかったという。

 

 

そのため、ローマ時代にはきわめて非能率な馬車しかなかったのであり、ローマのすばらしい道路にもかかわらず、陸上の物資輸送力はまことに限られていた。

 

(略)

 

中世ヨーロッパを描いた映画には、重い甲冑に身を固め、

片手に槍を、片手に盾を持った騎士が槍試合をおこなう情景が出てくるが、あの姿を思い浮かべてもらえばよい。

 

 

この重装騎兵は、技術的には鐙が一般化したことによって生まれた。

 

 

騎士の姿を見て鐙に目をとめる人はすくないし、今日ではごく普通のものであるが、ヨーロッパでは九世紀に初めて普及し、それまでの戦術を一変させたのであった。

 

(略)

鐙はアジア及び東ヨーロッパで早くから使われており、西ヨーロッパにも七~八世紀には知られていたが、それが普及するのには一~二世紀の年月がかかっている。

 

 

 

ドウダンツツジの紅葉 青葉台公園(埼玉・朝霞)にて 昨年11月29日 撮影