「わたくしたちの旅のかたち」
兼高かおる(かねたか かおる) / 曾野綾子(その あやこ)
株式会社 秀和システム 2017年2月発行・より
<曾野> それから、わたくしの経験では、地元の本屋と骨董店というのは、情報の提供主です。
たいていの本屋は買わずに何時間聞いてもいい。
店のおじさんはヒマで、わたくしが質問するといろいろな話をしてくれます。
ご近所の噂話からその国の危険な土地の最新情報まで、いろいろなお話を聞けるんです。
そして骨董屋は、その時々の社会情勢を映す鏡のようなもの。
たとえば棚の 「ここからここまで二万円で買ってくれ」 などと言い出したら要注意。
それは、近く、戦いが起こる前兆なんです。
骨董屋は商品を持って逃げられません。
ですので、安くてもいいから売れるだけ売りさばき、逃げだそうとしているんですね。
実際、シリアのダマスカスで、そういう経験がありました。
骨董屋がやけに慌てているので 「これは何かあるな」 と思ったら、すぐ後で、サダム・フセインの騒ぎになりました。
骨董屋はそういう情報を取る場のような機能がある気がします。
<兼高> それはまたいいことをうかがいました。
情報が不安定な国では、骨董屋の動向に注目しませんとね。
青葉台公園付近(埼玉・朝霞)にて 昨年11月29日 撮影