『 「民主主義」 を疑え!』
徳岡孝夫 (とくおか たかお 1930~)
株式会社新潮社 2008年2月発行・より
米軍は1973年1月のパリ協定によって、順次ベトナムから撤収した。
それより前、たとえば72年10月の時点で、ベトナムに駐留する最大の外国軍隊は、すでに韓国軍だった。
私は美しい浜を持つニャチャンの旅館で、韓国人の政府契約業者から
日本語で話しかけられたことがある。
彼はいった。
「日本人はいいですねえ。ベトコンに捕まっても無事に返してもらえるから」
コリアンの民間人はどうなんですかと訊(き)くと
「みんな殺されます」 と言う。
なぜ?
「われわれの軍隊は、捕虜を取らないからです」
どういう意味?
「捕らえたベトコンは、みな殺します」
隊旗を立てた車を先頭に、ジープを連ねてニャチャン市内を行く韓国軍は、なるほど見るからに強そうだった。
その頃は首都サイゴンでも、夜の紅灯の巷(ちまた)を歩くと、
女が 「アンニョン・ハシムニカ」 と私を呼んだ。
あれは韓国から連れていく手間を省いた 「常置慰安婦」 ではなかったのか?
昨年11月27日 平林寺(埼玉・新座)にて撮影