「日本と台湾 なぜ、両国は運命共同体なのか」
加瀬英明(かせ ひであき 1936~)
祥伝社 2013年9月発行・より
習新体制は 「海洋強国」 を実現することと並んで、役人の綱紀粛正を中心に据える改革を、前面に押し出している。
だが、今回の全人代の3000人の代議員のうち、90人が18億人民元(約280億円)以上の資産を所有する。
90人は代議員全体の3パーセントにしか当たらないものの、代議員がみな人民中国富裕な特権階級に属していることが、想像できよう。
中国では 「権貴(特権)階級」 と、呼ばれる。
中国の歴史を通じて、どの王朝をとっても中華帝国は、役人が上から下まで、競って不正蓄財に耽(ふけ)った。
今日の中国は、毛沢東と共産体制を築いた古参幹部の血を享(う)けた太子(たいし)党と、太子党に忠勤を励むことによって引き上げられた共産党青年団を加えた、およそ300の一族が、中国経済を支配している。
太子党と共産団は同じ穴の狢(むじな)だが、人民の幸せを思いやることなく、人民を抑えつけて、ひたすら特権を維持することにしか関心がなく、蓄財に走っている。
2012年に、アメリカの 『ブルームバーグ・ニュース』 が、全人代の2987人の代議員のなかで、上位70人の富裕者の私財を合計すると、4931億人民元(約4兆9000億円)にのぼると、報じた。
そして、535人のアメリカ上下院議員の上位70人の私財を合わせても、その十分の一の48億ドル(約4800億円)でしかないと、論評した。
米中の一人当たり国民所得を較べると、アメリカは中国の十数倍だから、中国の代議員の私財は、途方もない巨額となる。
中国には政治家の私財を公表する制度がないが、日本の国会議員の私財と較べたら、小沢一郎氏や、鳩山由起夫、邦夫兄弟なども、貧しいものだ。
2012年の 『ロンドン・タイムズ』紙によれば、中国のトップの12の不動産会社が、党最高幹部の子によって支配されている。
巨額の利益を生む有料道路のオーナーの85パーセントが、高官の子弟である。
同紙によれば、2010年に中国で1600万ドル(16億円)以上の年収があった、3220人の91パーセントが、党幹部の子であったという。
中華人民共和国は、巨大な同族会社となっている。
収賄、横領などの腐敗が、日常茶飯事となっている。
これは中国社会の数千年にわたる常態なのだ。