「世界で一番他人(ひと)にやさしい国・日本」
マンリオ・カデロ/加瀬英明
祥伝社2016年11月発行・より
<加瀬> 翌日、私たちは鹿児島を巡った。桜島が眼前に広がる。
旧島津(しまづ)藩邸があった仙厳園(せんがんえん)のなかに、猫神社がある。
日本には、猫だけではなく、馬から蛇までを祭神とする神社がある。
いまから四〇〇年前に、秀吉が朝鮮征伐を行ったときに、
島津藩も出兵したが、七匹の軍用猫を連れていった。
このうち、五匹が討ち死にし、二匹が凱旋したといわれる。
島津藩主が五匹の猫に感謝して、神社を建立したのだった。
いったい、猫たちがどのように活躍したのだろう?
鳥居のわきに大きな看板があったが、それによると、
猫の眸(ひとみ)を見て、時計替りにして、時刻をしったのだ。
キリシタンの宣教師(バテレン)が、何台かの南蛮時計を貢物(みつぎもの)として持ってきたが、それしかなかったから、猫に頼ったのだった。
日本では古来、動物や森を拝んできたが、素晴らしいことだと思う。
日本では人も動物や魚、虫、山川と一体だと信じて、
人間がその上にあるという発想がなかった。
4月12日光が丘公園(東京・練馬)にて撮影