日本の契約書には、必ず 「契約について問題があったときは、
甲乙、誠意をもって協議するものとする」 という条項が入ります。
しかし、この条項について、アメリカサイドからは、
必ず、削除しろと言われます。
曖昧にするのは嫌だからと。それでは契約書とはいえないと。
私は、この条項の意味をアメリカサイドに何度も説明します。
「日本では、この条項を入れることで訴訟にならないで済む」、
「それが入っていれば、日本側は誠意をもって協議してくれる」
と説明しますが、アメリカサイドからは、
「そんなことがあり得るか!」って言われます。
アメリカサイドにとっては、この条項は意味がありません。
誠意ってなんだ、はっきりしないじゃないか、
だから、むしろそれがないほうがいいとアメリカサイドは言います。
私が、この条項を残したい一番の理由は、
この条項があることで、日本の企業は本当に誠意をもって協議してくれるからです。
最終的に関係が壊れてしまえば、別にこの条項があってもなくても、
ダメなものはダメですが、それでも、それまでは誠意をもって協議してくれます。
だから、アメリカサイドには、この条項はあっても困らないじゃないか、
絶対にあった方がいいんだよって、私はいつも説明していました。
しかし、アメリカサイドは、そんなことを信じません。
そもそも契約相手を信じていたら、
あんな細かい契約書なんて作成しません。
契約相手の誠意なんて信じないのです。
契約書に書かれた文言がすべてです。
「日本覚醒」
ケント・ギルバート (Kent Sidney Gilbert 1952~)
株式会社 宝島社 2016年8月発行・より
4月12日 光が丘公園(東京・練馬)にて撮影