相続税と階級 | 人差し指のブログ

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「日本の正論」

平川祐弘・は正確にはという字です(ひらかわ すけひろ 1931~)

株式会社河出書房新社 2014年8月発行・より

 

 

日本は今や革命のない世界一安全な国である。

 

 

これは暴力革命を恐れた日本の官僚が二十世紀の前半、遺産に相続税を課すことで、富の再分配を行ったからで、その処方が功を奏し、貧富の格差が少ないのだ。

 

 

能力の有無により稼得(かとく)所得にある程度、差が生じるのはやむを得ない。

 

 

しかし個人の死亡に際し、蓄積した富の一部を相続税の形で社会に還元する。

 

 

それが福祉国家的な相続税のイデオロギーで、だから日本で共産党の勢力は弱い。

 

 

半世紀前、イタリアでは共産党が強かった。

 

 

党書記長のトリアッティがペルージャへ演説に来たとき留学生だった私は丘の下の広場へ聞きに行って驚いた。

 

 

小作人、職人、労働者が動員されていたが、皆小柄で平均身長が見た目にもはっきりと丘の上のペルージャの都市住民より低い。

 

 

階級が固定され何代も続くと肉体的にも差がついてしまうのだ。

(略)

 

日本では、親の財産がそっくりそのまま子孫に伝わりはしない。

 

 

しかしイタリアにはそんな遺産相続税はなかった。だから資産家、名望家が今でも続く。

 

 

いいかえると祖先の財産はそのまま継承される。一家の血筋と富は守らねばならない。

 

(略)

 

だが戦後、ヨーロッパでも考えが変わった。相続税は労働党政権下の英国で導入され、貴族は没落した。

 

 

かつての社会的地位を保持したい人は、城を公開し、入場料で収入を得ている。

 

 

イタリアでも導入されたが、政権交替のたびに税率が上下する。

 

 

「そもそも日本みたいにきちんと税金の取れるお国柄じゃないんだよ」と在日イタリア人が笑った。

 

 

光が丘公園(東京・練馬)のケヤキ 11月12日撮影