寺院のテーマ———政治の中心地およびその建物(首都と国会)
「このテーマには24篇の四行詩が属している。シンボルとしての”寺院”はもちろん”財宝”のテーマやそのほかの五つのテーマと結びついている。それは、前の”財宝”のテーマの詩、”ランプの火が消えずに燃えさかるとき、ヴェスタルの寺院で発見されるだろう……”(『諸世紀』Ⅸ-9)によく示されている。つまり、”財宝”はヴェスタルの寺院にあるのだという。
では、”ヴェスタルの寺院”とはいったいなにか?
それはローマ神話のかまどの女神ヴェスタを祀った神殿だ。神話のなかでヴェスタは、サトゥルヌス(ギリシャ神話ではクロノスのこと、すなわち年代学(クロノロジー)の父)の娘であった。
そのヴェスタルの寺院が、フランスのトゥールーズ近郊のサルドン河とネマン河のあいだにはさまれた地域のどこかにあると、さきほどの詩のなかでノストラダムスは教えている(”ニメスは水で破壊され、トゥールーズで市場は落ちるだろう”)。『諸世紀』のⅧ-30のなかでも”ベルゼからそれほど離れていないトゥールーズで/深い穴を掘っていると、すばらしい宮殿があらわれ/財宝が見つかって大騒ぎとなるだろう……”と予言している。
La grand cité sera bien desolee,
Des habitans un seul n'y demoura:
Mur, sexe, temple & vierge violee,
Par fer, feu, peste, cannon peuple mourra.
やがて大きな都市には閑古鳥が啼き
そこに住む人はだれもいなくなるだろう
壁も、性も、寺院も、処女もすべて奪い去られ
暴力や疫病や砲弾で人びとは死んでいくだろう (『諸世紀』Ⅲ-84)
<解釈>
いよいよ滅亡のときが近づいてきた。人びとはもう都市を捨てて農村地帯へ移動しはじめるだろう。都会よりは田舎のほうがまだ食糧が入手しやすいからにちがいない。そしてこれも世界的な現象とみていいだろう。繁栄をきわめた都市もゴーストタウンと化していく……三行目の”壁も、性も、寺院も、処女も、すべて奪い去られ”とは、原子爆弾(四行目の”砲弾”)の投下によって、爆心地周辺のあらゆるもの、コンクリートの壁も、寺院も、男も女も、一瞬のうちに蒸発してしまうことを暗示しているのではないか。」
「ノストラダムスの遺言書」ダニエル・ルゾー著・流 智明監修より
感想
>”ランプの火が消えずに燃えさかるとき、ヴェスタルの寺院で発見されるだろう……”(『諸世紀』Ⅸ-9)
ノストラダムスの大事典からも引用しよう。
詩百篇第9巻9番
消えない火の灯るランプが
ウェスタリスの神殿で発見されるであろう時、
水が網目状に流れ、幼子が死体で発見される。
ニームは水で破壊され、トゥールーズでは市場が崩れる。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1360.html
前回と同様に1,2行目は「真理の御霊」(契約の使者)の暗喩と解釈する。
「18 そこで、ユダヤ人はイエスに言った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せてくれますか」。
19 イエスは彼らに答えて言われた、「この神殿をこわしたら、わたしは三日のうちに、それを起すであろう」。
20 そこで、ユダヤ人たちは言った、「この神殿を建てるのには、四十六年もかかっています。それだのに、あなたは三日のうちに、それを建てるのですか」。
21 イエスは自分のからだである神殿のことを言われたのである。」
「ヨハネによる福音書」第2章18節~21節(口語訳)
また、
訳について
3行目は、普通「火」と訳す feu をラテン語 fatutus から「死んだ」と訳し、crible を格子状(grille)の意味にとらえたジャン=ポール・クレベールの読み方に従った。
tribleをcribleとする校訂に従った形だが、上述の通り、tribleには「網(の一種)」の意味があるので、そちらを採用しても「網目状」といった意味合いを想像することは可能だろう。
feu を「死んだ」と訳すのはやや強引だが、故人を表すときにつける feu に近い意味と解釈したものと思われる。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1360.html
普通に「火」の意味があるのに「死んだ」と訳すのはおかしいと思うので、3行目は自分で訳してみる。また、tribleをcrible(ふるい,選別機)として、さらに意訳として「格子状(grille)の意味」にするのもおかしいと思う。
Enfant trouué feu, eau passant par trible:
「Enfant」(子供,子孫,末裔、など),「trouué」は、ノストラダムスは「u」と「v」を入れ換えたりするので、「trouvé」で「trouver」(見つける,見い出す、など)の過去分詞。「feu」(火,明かり,輝き,光,ひらめき,霊感,など),「eua」(水,聖なる水,など),「passant」は「passer」(越える,など)の現在分詞。「par」(~を通って,~によって),「trible」は辞書にないし古語辞典や古い辞書の横断検索でもヒットしないので、ノストラダムスの合成語と考える。そこで、「tri」+「ble」とすると、「tribulation」+「trouble」の合成語で「tribulation」(1 [複数で]苦い体験,苦難,2 [古]悩み,苦悩,[宗教的]懊悩),「trouble」(1 [心・精神の]動揺,不安,狼狽,2 [複数で]騒擾,紛争,暴動,3 [文]混乱,不和,4 [複数で][医]障害)
Enfant trouué feu, eau passant par trible:
苦悩(と混乱)によって火と水を越えて来た子供が見い出される
現在分詞はジェロンディフ的に訳した。(「越えている」で訳しても良い。)
ところで、「火と水」は「洗礼」の事と考えている。
「11 わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。しかし、わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。」
「マタイによる福音書」第3章11節(口語訳)
念のため、「バプテスマ」とは「洗礼」の事である。また、「子供」にはこんな意味がある。
1巻95番の詩
Deuant monstier trouué enfant besson
D'heroic sang de moine & vestutisque:
Son bruit par secte langue & puissance son
Qu'on dira fort eleué le vopisque.
僧院の前で双子の片割れが見い出だされる
僧侶とイエス・キリストの英雄的な血筋の
一派によっての彼の名声、その言葉と影響力
人々が双子の片割れは強く高い地位についたと言うだろうほどの
引用元:https://ameblo.jp/hitorinomeaki/entry-12787787276.html
「trouué enfant」で単語の順序が逆なだけである。
詩百篇第9巻9番
消えない火の灯るランプが
ウェスタリスの神殿で発見されるであろう時、
苦悩(と混乱)によって火と水を越えて来た子供が見い出される
「子供」は比喩で「如来」(完成者)ではなく「菩薩」(修行者)という意味ではないだろうか。念のため、私は「解脱」というような状態があるとはほとんど信じていない。まぁ、脳の状態によっては可能性が0とも断定はしていないが。
詩百篇第10巻75番
非常に待望されたものは決して戻らないだろう、
ヨーロッパヘは。アジアに現れるだろう、
偉大なヘルメスから発した同盟の中のひとつが。
そして東方のあらゆる王の上で成長するだろう。
引用元:https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/203.html
10巻75番の詩
Tant attendu ne reviendra jamais
Dedans l'Europe, en Asie apparoistra
Un de la ligue yssu du grand Hermes,
Et sur tous roys des orientz croistra. (ラメジャラー本の原文)
とても期待(予期)されるものは決して戻って来ないだろう
ヨーロッパの中には。アジアの中に現れるだろう
偉大なヘルメスから生まれた同盟の一つ(同盟からの一人)
そして東洋の全ての王たちを越えて成長するだろう
引用元:https://ameblo.jp/hitorinomeaki/entry-10559004196.html
弥勒菩薩はアジアに現れて成長するのだろう。
おまけ