参考資料1079 | シフル・ド・ノストラダムス

シフル・ド・ノストラダムス

ノストラダムスの暗号解読

ボストンのポプラ並木 その9
「ヒツジへの移植実験は、なんとか無事に役目を果たすことができたのだが、連日、培養が困難な上皮細胞の培養に取り組んでいるうちに、これまで培養が困難だと言われていた、マウスの表皮細胞の培養にも着手したくなってきてしまった。空いている時間に他の研究員が使用したマウスの皮膚の組織を分けてもらい、実際に実験に取りかかると、大人のマウスの表皮細胞培養の難しさは、そもそもマウスの皮膚から表皮組織を単離するところから始まっていることがわかった。びっしりと生えている体毛の毛穴は真皮の深部にまで達していて、表皮組織を1枚の層として連続的に採取することができなかった。背中の皮膚をバリカンで剃毛し、除毛クリームで毛穴の奥の毛まで除いてから、表皮を真皮から剥がす作業を試みた。真皮から剥がれる表皮は穴だらけで、ちょうど日焼けしすぎて落屑してくる皮膚のような薄さのものが、ポロポロと取れてきた。一見とても生きた細胞が含まれている組織には見えなかったが、その組織を酵素でバラバラにして顕微鏡で観察すると、角化層のカスや除毛しきれなかった毛のごみの中に、生きた細胞が観察された。そこで比較的体毛の少ない腹部から皮膚組織を採取して除毛クリームで毛をできるだけ除き、角化層をクエン酸溶液でできるだけ剥がす処理をした後に表皮細胞を分離すると、ごみの混入などがなくなり純度高く回収できる表皮細胞の数も増えた。
 ヒツジでの苦労を参考に、培養皿はインサートを用いて、培養液の添加因子の種類や量を変更したり、培養時の細胞の濃度を検討しなおすなどの工夫を加え、何度か培養を試みると、大人のマウスの表皮細胞も培養できるようになった。誰に頼まれた実験でもなかったのだが、ひょっとしたら私の研究成果の中では最も大きな発見だったかもしれない。その後行った体毛が生え揃う前の赤ちゃんマウスの表皮細胞の培養はずっと簡単だった。
 たまたま、この頃、上皮研究では世界的な権威であるハーバード大のある教授の研究員から、上皮細胞の培養法の技術指導を依頼された。「できれば、マウスの培養表皮細胞で研究できたら最高なんだけど、無理なんだよね」と言った研究員に、「実は最近、いろいろ試していたらマウスの表皮が培養できるようになった」と告げると、「ぜひ教えてほしい」と頼まれ、その研究員とテクニカル・スタッフの2名に、マウスの表皮細胞の培養法を指南することになった。それからしばらくすると、彼らの研究室の教授自ら、私のもとを訪れてくれて、丁寧にお礼を述べてくれた上に、一緒に培養されたマウスの表皮細胞を観察して、さまざまな意見を求められた。楽しそうに顕微鏡を覗く教授の姿は、どんなに偉くなっても尽きない研究への興味を体現しているようでとても印象的だった。」
「あの日」小保方晴子著より

感想
>ヒツジへの移植実験は、なんとか無事に役目を果たすことができたのだが、連日、培養が困難な上皮細胞の培養に取り組んでいるうちに、これまで培養が困難だと言われていた、マウスの表皮細胞の培養にも着手したくなってきてしまった。

相変わらずチャレンジャーだね。確か、東京女子医大の修士時代は「ラットを生かしたまま、培養に必要な量の口腔粘膜組織をほほの内側から採取することは不可能だと言われ」ていたのを成功させたんだよね。ただし、今回のはレベルが違うのかもしれない。

>ヒツジでの苦労を参考に、培養皿はインサートを用いて、培養液の添加因子の種類や量を変更したり、培養時の細胞の濃度を検討しなおすなどの工夫を加え、何度か培養を試みると、大人のマウスの表皮細胞も培養できるようになった。誰に頼まれた実験でもなかったのだが、ひょっとしたら私の研究成果の中では最も大きな発見だったかもしれない。

それまでも出来る人は僅かにいたが、培養皿をインサートにしたり培養時の細胞濃度を工夫したりして画期的な方法を開発したという事なのかな。「これまで困難だと言われていた」という事は不可能だったという事ではないんだろうね。

>その後行った体毛が生え揃う前の赤ちゃんマウスの表皮細胞の培養はずっと簡単だった。

「赤ちゃんマウス」という表現は小保方さんならではなのだろう。もっと科学的な表現がありそうだね。(当然だが。)

>たまたま、この頃、上皮研究では世界的な権威であるハーバード大のある教授の研究員から、上皮細胞の培養法の技術指導を依頼された。「できれば、マウスの培養表皮細胞で研究できたら最高なんだけど、無理なんだよね」と言った研究員に、「実は最近、いろいろ試していたらマウスの表皮が培養できるようになった」と告げると、「ぜひ教えてほしい」と頼まれ、その研究員とテクニカル・スタッフの2名に、マウスの表皮細胞の培養法を指南することになった。それからしばらくすると、彼らの研究室の教授自ら、私のもとを訪れてくれて、丁寧にお礼を述べてくれた上に、一緒に培養されたマウスの表皮細胞を観察して、さまざまな意見を求められた。

やはり、小保方さんが実験の天才というのは事実らしい。
http://d.hatena.ne.jp/gyou/20160327/p1

おまけ