「私もあのピンクの丸いヤツがほしい」




 ヨシノはそういって空中をまっすぐ指差す。


 


 「それがどういうものか、はっきりわかっているの?」


 と


 母は振り返って言う。




外は季節外れの陽気。

日曜の午後の日差しは手でつかめそうなくらい、明るく優しい。


 


 ヨシノは応える


 「はじめから結果がわかって居るものなど、

 無いと思うわ。

 失敗こそ、人を成長させると思うし、


 だからこそ挑戦する事に意味が在る。」




誰も見ていないテレビには、車に乗り込む家族のcmが何度と無く流れている。




 「あら、随分とはっきり断言するのね。

 でも、母さんはそう思わないわ。


 それには在る程度、自分の行動も操作できるという条件がつくと思う。


 ルールが在る自由というのかしら。」




 母はフキンで手際よく皿の水気を拭いていく。


 ヨシノはそれに気付かずに、まだ空中を見ている。

 



 「母さんもおもしろくない大人の一人なのね。」


 ヨシノは若干低い声で言う。

 「何を言っているの。母さんだってそんなころはあったわ。」


 母は何故かとても楽しそうに、乾いた声で笑った。


 「父さんに、紅茶淹れるか聞いてきて、」


 母は仕切りなおしてヨシノに言った。
















友人から暇だというメールが来た。

開けてみたら祝福の言葉が羅列してあり、思わずうれしくなってあたりを飛び跳ねてしまった。

しかし

この平凡な毎日に、祝うところなどどこにも無い。
思い切って友人に問い合わせてみたら、
毎日を生きているという事に対して、との事だった。


それを聞いた私はやはり嬉しくなってしまい、
周囲を逆立ちで歩き回った。
朝が怖い
朝なんて来なくて良い

心の黒い部分を照らすような
あの朝日を浴びるとせっかくの決意すら水浸しになる。


自分の存在を
吸い込むような闇にしか
わからない事だってある。


そんな弱さを照らす光がとても怖い。