【舞台観賞】「青の鳥 レテの森」(ハグハグ共和国) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は11/1~11/5まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
 
前回「Post Scpript」の観劇レポートでもあるように、昨今、観劇の数が激減している自分ですが、そんな中でも必ず本公演が気になる劇団は幾つかあります。
 
今、そう言える劇団があるとすれば二つ……。
一つは「ジャングルベル・シアター」
恐らく自分を知る方なら、今更その説明は不要だと思いますが、今年は名物のギャラリー公演を含めても活動が無かったのだけが残念ですね……。
(各々、劇団員の方は活動をしており、お元気な様子は伺えますが)
 
そしてもう一つが……今回、紹介する「ハグハグ共和国」となります。
以前から自分の観劇レポートの中では「女傑」という表現をしている劇団であります。
劇団主宰・久光真央を筆頭に劇団員の女性率が高く、また個人的には名女優が非常に多く在籍している事からそのように表現しています。
(もちろん男優陣もなかなか味があって、いい感じです)
 
そんな「女傑」集団、ハグハグ共和国が本公演を迎えるという事で、観劇控えめモードな自分も気になっておりました。
先日の「Post Scpript」観劇をしていたのも良かったのでしょう。
意外とすんなり観る気モードになったので、気がついたら予約していた……という次第です。
 
こうして観劇に行ったのが「青の鳥 レテの森」
ハグハグ共和国、31回目の本公演となります。
会場はすっかりお馴染み、大塚・萬劇場。
……今年、これがまだ3回目の観劇ですが、そのうち2回はこの劇場です(笑)
 
受付を済ませ、開場時間になると同時に地下の劇場へと続く階段をただひたすら降りて行く……この劇場を訪れた時の、この「地下に降りる」=「舞台に近づく」感覚がたまらないのです……。
階段の途中、劇団主宰・久光真央様(今年のレポートから基本、敬称略にしていますが、どうしてもこの方だけは「様」をつけたい)に御挨拶し、劇場へとたどり着く……。
 
入場して自分の右手側にある舞台が目に入る。
いかにも幻想的な雰囲気が漂っている。
ハグハグ共和国の舞台セットは、毎回の事ながらその雰囲気が一目見た瞬間「ぐっ」と心が鷲掴みされる。
そして自由席なので見やすい席を自分の中でチョイスして、全体を見渡すと下手側にせり出しみたいな……もしくは橋のようなものが見受けられる。
一体、ここで何が行われるのか……始まる前から、色々な想像が掻き立てられる。
 
そんなこんなしているうちに、あっという間に開演時間が近づく。
先ほどまで客案内をしていたはずの劇団員が、一人、また一人、舞台の上に立っていく……。
この瞬間、もう舞台は始まっているのだと、感覚的に察する……。
 
やがて定刻となり、舞台の幕は上がる……。
 
 
さて公演終了後につき、ネタバレ有のあらすじを……。
いやでも今回も難しいなぁ……。
 
……突然、ある森の一箇所に一同に集められた十人の人間。
黒ずくめの者たちが「ご招待」したと告げる。
そしてこれから「ゼロ地点」を目指すオリエンテーションに参加してもらう事を告げられる。
その「ゼロ地点」に達する事が出来れば、どんな望みでも叶うという……。
 
突然の展開に訳が分からないまま巻き込まれていく三グループ十人の人間と、彼らより前に出発していた第一陣の三人組……。
 
その道すがら「青の鳥」を探す少年、少女との邂逅を経て、やがて彼らはここに来た理由に思いついていく……。
 
果たして彼らは「ゼロ地点」に到達することは出来るのか?
そして彼らにオリエンテーションを課す、黒ずくめの者たち「青の鳥」を探す少年、少女の正体は……。
 
「レテの河」のほとり「レテの森」を舞台にそれぞれの想いが交錯しながら物語は進んでいく……。
 
 
……これでどんな話かお分かりいただけたでしょうか?(爆)
正直、言います。
 
自分でも何を言っているのか分かりません(笑)
 
それくらい最初は話が見えなかったです。
でもここで置いてけぼりにならないのがハグハグ共和国クオリティ。
最初に伏線をあっちこっち張りまくって、途中、笑いを交えながらも最後は伏線回収も終えて物語が終わるスタイルは毎回の事ながら秀逸です。
 
ただ今回は特に話の序盤の展開が分かりにくかった。
どうしても最近観劇した作品での対比になってしまいますが先日拝見した「Post Script」も確かに話の流れはパッと見分かりづらかった。
ただしこの作品の場合、パンフレットにそれとなく作品を書いた「背景」が記載されているので、その段階でなんとなく「察する」ものがあった。
 
一方、当作品……あらすじがどこにもありません(爆)
事前のフライヤーはもちろん、当日パンフにも一切載っていません(爆)
つまり初見の人は本当に登場人物の名前と出演者以外の情報がほぼ皆無で観る訳です。
 
ある意味、潔いというか豪快というか……ここが自分がハグハグ共和国を「女傑」と称する所以でもあるような気がします。
 
ただ客層の理解に委ねっ放しか……というと、そんな事はありません。
今回はOPで出演者紹介を兼ねたVTRが冒頭に登場、その後のOPでは全出演者参加のダンスシーンへ発展。
ここまでで既に伏線は張られています。
やがて物語が進むにつれ、伏線を張りつつ、中盤以降それが一つ、また一つ解けていきます。
そしてED……ここもハグハグ共和国の特徴ですが、EDの主題歌に乗せて登場人物たちの後日談が無言で表現されていきます。
このEDで黒づくめの者たちの「本当の姿」も出てきており(中盤で彼らの出自を匂わせる場面はありますが)スッキリした形で観終える事が出来ます。
 
上演時間は約1時間50分。
終わった時には本当にあっという間という感覚でした。
 
この物語、文字にして起こすのが難しいし、非常に陳腐だと思うのですが、主宰であり脚本の久光真央の頭の中はどうなっているのか……本当に不思議です。
そういえば物販で脚本売っていたような……あの時は買わなかったけど、今思うと彼女の表現の一端が垣間見えるかも知れない……今度は買ってみようと思った次第です。
ただ恐らく、この作品は小説などで表現するのは難解な作品。
また例えで申し訳ないですが、ライトノベル作家・内堀優一が主宰「演劇企画ハッピー圏外」あたりとは真逆のスタンス。
(そういえば本公演でも「ハッピー圏外」からも客演おりましたね)
この劇団は舞台ならではの表現に徹しているという感がありました。
 
なお舞台のセットも前述した橋のようなセットを効果的に利用して、既存の舞台とは違った「せり出し」のような使われ方もしており、既存の表現方法に捉われてない印象を受けました。
音響、照明なども気になるようなところも無く、場面ごとの使い分けとかしっかり出来ていたように見受けられます。
 
……でもこうして振り返ると、ハグハグ共和国は全編を通して、やはり「人」を表現するのが上手いと思う次第。
出演者の中でもキーマンはおりますが、恐らくこの物語は誰一人欠けても成り立たなかったと思います。
 
……という事でここから先は気になった出演者でも取り上げて行く事にします。
 
 
まぁ前述の通り、今回は皆さん、表現が上手いのですが……。
 
個人的にシンパシーを覚えたのは、どう考えてもアイドルオタク三人組を演じた北川コヲ、藤本忠正、銀杏ケンコーの三氏でしょう(笑)
いや共感出来るんですよ。自分もある意味、同種類の人間だし(笑)
劇中でヲタ芸も頑張ってましたよ(笑)武器もサイリウムだったし(笑)
ただ北川、藤本両氏に関しては、これまで全く違う種類の役柄を拝見していたので、こういう役柄も出来るのか……と感心した次第です。
 
次にバス会社四人組。個人的には足立涼子演じた伊吹社長が印象的だった。
苦労して会社を盛り立てている感が出ているのが好演でした。前作のがん患者役からガラリと印象が変わりましたねぇ……。
また豊橋を演じた市田紫乃は普通にかわいらしかったですね(照)特にアリスの衣装が(照)
前述のオタク三人組が食いつく気持ちがとても分かる。どうやら今回が初舞台だった模様ですが、これから頑張ってほしいです。
 
あとメチャクチャ笑ったという意味では「第一陣」の映画撮影班……こと、別名・ジャンベル組(笑)
浅野泰徳、岡教寛って並んだ時点で反則です(笑)
それに加えて利根を演じた菅野真紀の違和感の無さ(笑)前作の看護師長でしょ……幅広いなぁ……この方。
全体的に重い雰囲気の話の中で、ある意味軽さと笑いと、そして他の集団との目線の違いはこの物語を動かす上で必要不可欠だったと思います。
でも浅野、岡両氏は流石ですね。今年「ジャングルベル・シアター」の本公演が無い分はここでジャンベル不足が補われましたよ(笑)
 
何と言っても若宮一家の三人、下平久美子、小松聖矢、鈴木啓子の三人は素晴らしい。
認知症が進行しつつある母・響子(下平久美子)、障害を持つ兄・司郎(小松聖矢)、そんな二人の面倒を見る将来が見える妹・美琴(鈴木啓子)
この三人の家族の……家族である故の愛情と葛藤が、物語後半においては軸になっており見ている者としては、目が離せなかった。
下平久美子は以前、別の作品でも認知症が進んだ大家族の母親役を演じていたのが印象的でしたが、今回もまた難役を見事にこなし母親としての存在感を発揮していたと思います。
またハグハグ共和国の出演者では唯一「巻き込まれる側」になった小松聖矢の演技も目が離せず、本公演を追うごとに見せる役者になりつつある彼の成長が目に見えたと感じます。
個人的に今回の劇中で最も評価が高いのが鈴木啓子で、恐らくこれまで拝見した役の中ではベストだと思う次第。これまでどちらかというとコミカルな役どころが多かっただけに、今回シリアスかつここまで感情を表に出してぶつかっていく姿に心を打たれました。
とにかくこの若宮一家三人は劇中でも特に印象的でした。
 
そして「黒づくめの集団」の皆様……なんといえばいいのでしょうか。本当に皆様、不思議な雰囲気というかそういうのに溢れていました。
霧島演じる中村和之の圧倒的な存在感は場を引き締め、舞台に緊張感を与えました。彼は毎回、カッコいいんですよね。
その傍らでじっと立っている琉伽を演じた戸塚まるかの言葉にならない存在感も、この劇団には無くてならないもの。
一方、瑠璃を演じた宇田奈央子は少女キャラを演じさせたら本当に右に出る者はいないという印象。この人は本当にすごい……。
琉那を演じたちあきは改名前から拝見していますが、色んな役柄が出来る様になってきたという感じでした。
また窪田悠紀子を筆頭に舞台を彩った四人のダンサー陣の頑張りも印象的。特に窪田悠紀子のダンス全般における華やかさ、艶っぽさはこの劇団に無くてはならないものでしょう。
 
ただ……やはりというか、最後に名前が上がるとすれば、今やハグハグ共和国の二枚看板とも言うべきだろうか……伊喜真理、そして月野原りんの二人だろう。
 
千峰を演じた伊喜真理はとにかく今回、色んな側面を見せてくれた。
あどけない少女のような一面を見せたかと思ったら、突然、全てを達観したような大人のような一面を見せたり……一つの舞台で万華鏡のように色んな演技を見せてくれた。
千峰の相方とも言える風太(菊地紀壱)とのやり取りも絶妙で、この物語の表向きのヒロインかつキーマンとしての面目躍如といったところか。
とにかく演技の引き出しが見るたびに増えているのがとても良く分かる。
彼女に関しては、もうどんな役で出てきても驚かない……いやそれでも驚くかも知れないけど、どんな役でも出来てしまう錯覚すら覚える。
12月にはもう次の舞台が決まっているようですが、無理はしない程度にこれからも頑張ってほしい次第。
 
片や副座長でもある月野原りん。この劇団ではキーマンを演じる事が多い彼女だけど、今回もその例に漏れず大活躍と言ったところか。
彼女が演じた雫は恐らく、今回の役柄の中では最も異質な存在。
「黒づくめの集団」や千峰、風太が「人間」としての出自が示されている中で、それに唯一当てはまらないのがこの雫という存在。
とにかく終始ミステリアスだったし、一番、劇中でも何を考えているのか分かりづらかった。
ただこの手の役を演じさせたらピカ一の演技力を見せるのも彼女の特徴。
恐らく主宰兼脚本の久光真央の思うところを最も理解して、それを演技に反映させている……そう感じる次第です。
 
 
まぁそんなところでしょうか。こうして振り返るとハグハグ共和国は本当にバランスがとれていると感じる次第。
月野原りん、伊喜真理の二枚看板。
脇を固める宇田奈央子、ダンスと色気の窪田悠紀子、存在感を醸し出す戸塚まるか、溌剌さが目に付くちあき。
「女傑」に負けない「男」の魅力を放つ中村和之、それに続こうとする小松聖矢。
そんな劇団員をまとめる主宰・久光真央。
 
それでも足りない部分は毎回客演する出演者で補って、一つの物語を作っていく……。
 
このスタイルが毎回、本当にぶれないのが凄いと思います。
 
 
さてここからは余談ですが、自分が拝見した回はたまたまなのでしょうが……役者の方が多かった(笑)
隣の隣は某ジャンベル劇団員だったし、その後も某ジャンベル劇団員(笑)
更に近くには某劇団主宰だったり、他の舞台でお会いした事のある役者さんが……。
 
まぁそれだけ、多くの関係者も注目して観ていた舞台だったんだな……という事で(笑)
 
そんな訳で観劇後は某居酒屋にて一杯引っかけて帰ったのですが……そういえば、ハグハグ共和国の劇団員の方は鳥○族好きが多いと風の噂で聞いております(笑)
とにかく池袋近辺の鳥○族でもし自分と遭遇したら、一杯おごりますので(笑)今後とも何卒よろしくお願い致します。
 
・ハグハグ共和国・公式サイト↓
http://hughug.com/index.html