※この舞台は10/26~10/31まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
個人的には7月以来の観劇。
……って、まだ今年2本目だよ(汗)
……というくらい、舞台観賞の世界から離れている自分ですが、ちょっくら注目の舞台があり観に行きました。
それが7contents公演「post script」になります。
7contents……通称「セブコン」「ナナコン」と言われている劇団。
昨年に続き、自身二回目の作品の観賞となります。
向かった先は上野ストアハウス。
この劇団にとってホームとも言っていい劇場です。
そんな自分が今回観に行った目的は……とあるアイドル界隈の方が初舞台を踏むという事でした。
実を言うと直前まで観劇を検討していたのですが、あるキッカケで踏ん切りがついて行く事となりました。
さてどんな舞台だったか……とお話しする前に、開演前の様子から。
席は自由席だったので、まずはセットを見る。
そこはまるで海岸の防波堤、もしくは波打ち際を連想させるような背景が広がっていました。
開演15分前になると前説が始まります。
この前説の時間帯は写真撮影OKのため、出演者目当ての方が多く写真を撮っていました。
かくいう自分もセットなどを収めたくて、何枚か写真を撮影しました。
やがて前説が終わり、舞台の幕が上がります……。
公演も終わった上、実は何度目かの再演になるため、ネタバレは多少有で大まかなあらすじを……。
……その男はこの日、海を眺めていた。
そしてある手紙を郵便屋(金子慎吾)から受け取った。
宛名には懐かしくて、そして大切な人の名前。
届くはずだったが、届かなかった手紙
そしてそこに書かれていたのは七年後、再会を約束する内容……。
手紙が出されたのは七年前、そして記されたその日付は……まさに当日。
男は駆け出す。
少年時代の思い出が詰まった、その場所へ……。
そこで彼が見たものとは……。
現在と過去、現実と空想が交錯する。
楽しかった少年時代と、目を背けたい現在……。
その果てに彼が見た物とは……。
「そっちの暮らしはどうですか?」
……これは「あの日」失われた命と、遺された命の物語である……。
主に冒頭のシーンの印象をまとめるとこういうまとめ方になってしまうだろう。
正直、あらすじをまとめるのが難しいというか、こういう表現しかできないだろう。
え?あらすじそんなんじゃないよ。……という声さえ聞こえてきそうなくらい、自分でも拙い紹介文である(苦笑)
とにかく冒頭は特につかみどころがない。
恐らくこのあたりは二回以上、しっくりこないだろう。
……そんな訳で今回、一回しか観ていない自分が、この舞台の感想を語るのも些かおこがましい気もするが(汗)
ただつかみどころがないと表現した冒頭から、OPと言える、出演者総出演によるダンスを経て、冒頭で男……主人公のバービー(青島愛海)が向かったと思われる場所に場面は変わる。
そこへ次々と現れる、人物たち。何故か皆、喪服を着ている。そして何故か皆、どこかへ隠れる……。
そして最後にバービーがたどりつき、ある場面をキッカケに……とある町の小学生たちの楽しい日常へと場面は移る。
冒頭の謎めいた始まりと比べると、どこか懐かしく、だけど楽しそうな日常がそこに広がっていた。
しかししばらく時が経つと、バービーの見えていた景色は消え失せて、悲しげな景色が広がる場面に……。
実はこの小学生たちの日常こそ、主人公・バービーの過去の思い出。
そして現在……現実の世界へと場面、物語は移っていく。
中盤まではその繰り返し。
だが後半、バービー自身が過去の場面に触れていき、そして自らの記憶と思い出をたどっていくようになる……だがこのあたりから、何かが変わり始める。
そして終盤……冒頭の場面に戻っていく。
そこで彼が突きつけられた現実が……あまりに過酷に溢れていた。
だがそこで出会った懐かしい人たちから伝えられた言葉とは。
届いた手紙に書かれていた言葉とは……。
……と、ざっくりこんな感じだろうか。
まず今回の舞台を通じて、あまり直接的な表現、比喩は少ない。
ただ全体を通して観て行くと、なんとなく「察する」雰囲気にはなっていく。
特に現代パートにおける、バービー、そして看護師の実紗季(小森知恵子)の会話の端々にそれとなく何が起こったかは盛り込まれている。
そして彼らの会話は、ここ十数年を生きてきた日本人であれば、誰もが忘れえない「あの災害」に繋がっていく……。
また脚本も兼ねる金子慎吾が、この作品(系列作品含)のみで使っている、PN.伊達志乃彦にもその想いは強く反映されている。
宮城県、かつての仙台藩の当主として君臨した「伊達」氏の苗字と、ご両親の名前から一文字ずつもらった「志乃彦」という名前……。
恐らく察しがいい人は、この物語のバックボーンに「何があったか」は自然と頭に浮かんでくると思います。
それ故、明るくて楽しい少年時代のシーンと、残酷なまでの現実のギャップは激しく、まさに光と影そのものである。
……こうして物語の筋について延々と想いを巡らせてしまうのだが、この作品、看終わって思い出すたびに何故かこびりついて頭からその印象だけが離れない。
実を言うと看終わった時は、個人的には「お涙頂戴」ものというか泣き所があからさま過ぎて好きになれない作品という印象だった。
「あぁここで泣く人多いだろうな」と思いながら、少し冷めた目で終盤を観ていたのは正直なところ。
だが時が経つにつれ、終盤における、どストレートなまでに伝わってくる、あるメッセージが頭から離れない。
恐らくこのメッセージを脚本の伊達氏は伝えたかったと思う。
そういう意味では、何か一つでも我々観ている側に訴えるという意味では、脚本の想いはビシビシと伝わってきた。
伝える事が今回の舞台のテーマであるなら、伊達氏はこの舞台をやった意味が大いにあると思う次第です。
ただ……全体を見ると、粗削りだった印象も一方で否めない。
個人的に思ったのはアドリブ(と思われる場面)が長すぎる。いや確かに当日、笑いましたけど(笑)
面白かったけど、物語を必要以上に間延びにするアドリブは話全体のテンポを悪くするので、もう少し短くてスマートにまとめて良かったと思う。
やはり上演時間が2時間近い話では無いよな……あと15分短くまとめられたら、いい感じで観終えたかも知れない。
あとは前述のように非常に抽象的な表現に徹しているため、物語の本筋が分かりにくい部分があり、もう少し直接的な表現があっても良かったと思う次第です。
直接的な表現が出来ないのは、もしかして脚本の置かれた立場からすると難しかったのかも知れないけど……そこは切り込んで欲しかった部分です。
あくまで個人的には、そこまで相性がいい舞台では無かったのかも知れない。
だけど悪い作品だったかというとそうとも言い切れない。
何かを伝えるという意味では、非常にそこに特化したような作品に思えました。
ここからは気になった出演者の総評に移りますが、物語の筋はやや厳しく評価しましたが、逆に登場人物は非常に活き活きしていたのが印象的。
どの登場人物も非常に個性が際立っていて、主人公・バービーの鮮やかな少年時代の思い出を反映させるように誰もが輝いて見えました。
唯一、控え目だと思ったのが青木五百厘が演じたヒロイン・ハルカなんだけど、これだけ周りの個性が強いとこういうヒロインの方が却って目立つ。
それに彼女の役どころは、物語を語る上で非常に重要な立ち位置で、こういう役が演じれる人がいると舞台が引き締まると感じました。
登場人物たちは大きく分けて「子供たち」と「大人たち」に分類出来るけど「子供たち」はほぼ全員、あだ名で呼ばれている。
そんな中、唯一、あだ名の無い田中を演じた松岡洋祐が印象に残った。
恐らく自分もあだ名がつけられても、最後は苗字で定着してしまったので、妙に彼が気になってしまった(笑)
そんなあだ名が無い少し寂しい立場をうまく演じていたと思う。
自分が観に行った公演の時、Yシャツが無くて公演が遅れた事は気にしないでいいので、今後も頑張っていただきたい(笑)
あとゴミを演じた植田ぴょん吉の安定感が抜群だった。
「ゴミちゃん」ってあだ名酷いけど(笑)外見、頭もじゃもじゃ女子だけど(笑)かわいいんだよなぁ……劇中でハカセ(もじゃす前田)が恋に堕ちるのも(少しだけ)分かる。
常に無邪気でだけど少し気が弱いところもあり、それでいてとても友達想いで……ある意味、ハルカよりヒロインだったかも……そう思えるくらいの活躍だった。
でもここまで小学生の成熟しきっていない複雑な心境を演じられるのは、彼女の技量があってこそ。
本当に彼女の当たり役だったと思います。
「大人たち」で印象に残ったのは、羽鳥の湯口智行。
近所に一人はいるよなー……こんな感じで子供たちの人気者になる近所のおじ……いや、お兄ちゃん(笑)って感じの役。
でも子供たちの事を程よい距離で見守る、その姿は子供たちの憧れる「ヒーロー」そのものだったように思います。
他だと将軍役の加藤大騎。
登場当初はただの危ないおっさん(爆)だと思っていたけど、後半からすっごい人間くささが滲み出ていて、個人的にはとてもお気に入りの登場人物だった。
なんか世の中の不器用にしか生きれない人間を代弁しているようなそんな役柄に映りました。
どういう点が気に入ったかは、後程、別の登場人物評でまとめて話します。
そんな中「子供たち」にも「大人たち」にも分類できない「今を生きる者」として看護師・実紗季の存在がある。
それを演じた小森知恵子の抑えた演技は、超がつくほど個性的な出演者が揃う中では「異色」の存在だった。
恐らく他の登場人物が主人公・バービーの思い出の中で輝いている中、その思い出の中から唯一外れているのが彼女の存在。
(バービーの担任だったドジ子(なかにし鈴子)の娘である事は劇中の台詞から連想出来るが、恐らくバービーとの思い出の関わりはその程度)
だからこそ劇中では数少ない「今を生きる」登場人物にも関わらず、ある意味「色褪せた」ように見えた……。
患者であるバービーを優しく見守る一方で、彼が経験した「過酷な現実」を共有出来る存在としての立ち位置は劇中においては非常に「異色」かつ絶妙だった。
出番はそこまで多くないけど、その貴重な存在はこの物語において一種の潤滑剤だったように思える。
彼女がバービーの治療の合間、合間に出てきては語りかける事で物語は進んでいく……劇中ではハルカ、郵便屋に次ぐキーマンの一人だったと思う。
周りがテンションが高い中、あのどこか抑えたテンションを維持するのは非常に難しかったと思うが、それを好演した彼女の演技に拍手を贈りたいと思う。
そして今回最大のお目当てだったのがヒトラーこと姫川を演じた椛。
実はこの舞台が初舞台という事で、熱心な某ファンの推薦もあって観に行ったのですが……。
失礼を承知でお話すると、ここまで演技が上手いとは思っていなかったので、正直驚きました。
彼女が演じたヒトラーこと姫川は所謂「お嬢様」
非常に気の強い性格で女子グループを形成して、バービーたちのグループと事あるたびに衝突しているという役柄。
しかし劇中でゴミと袂を分かつ結果となってしまい、それがキッカケで自暴自棄になって自分が結成した女子グループは瓦解。
一人ぼっちになりかけたところに前述の将軍と出会い、一人ぼっちの寂しさを認識していく……という役柄。
前半は本当に気の強いお嬢様を好演。そして後半の自暴自棄になっていく過程、そして将軍との邂逅で素直になり始めるあたりの表現が非常に秀逸だった。
終盤、恐らく生前はきちんと仲直り出来なかったであろう級友たちに向かって、将軍の口添えもありその気持ちを伝えるのは劇中でも印象に残るシーンだった。
バービー以外の登場人物では唯一と言っていいほど、この手の見せ場があったように思えるし、初出演にしてはいい役柄に巡り会えたのではないかと思いました。
それをきちんと喜怒哀楽をもって演じ切った椛の演技は初舞台ならば合格点だと思うし、また何かの機会に舞台に出演したらまた見たいと思わせるものでした。
なおここまでの出演者評を聞いてお気付きの通り、この物語……バービーと実紗季以外の登場人物は劇中における「現在」では皆、故人(もしくはそう連想される方)です。
そして物語はバービーの思い出と現実、そして……幻が交錯する中で進んでいきます。
主人公・バービーこと馬場は劇中で精神を病んでいる事が分かります。
その薬の副作用で色んな物が交錯していくという状況です。
よってバービーが劇中、次から次へと様々な表情を見せます。
ある時は少年のような、ある時は虚ろな、そしてある時は現実に打ちひしがれる……。
そんな難役、バービーを演じた青島愛海の演技は劇中通じて、目を逸らす事は出来ませんでした……。
……まぁこうして観ると演出についてはやや不満は残ったものの、出演者の演技は非常に素晴らしく見応えは十二分でした。
出演者さえ間違えなければ、もっと良くなる要素はあるので、ちょっと勿体無い舞台でもありました。
もう何度かタイトルを変えて再演している舞台のようですが・……ここは思い切って、演出を他の方に任せて上演してみるのも有ではないか……と感じた次第です。
少々辛口にはなりましたが、決して悪い舞台では無かったと思います。
何はともあれ椛の初舞台をしっかり見届ける事が出来たのは収穫でした。
最後に7contentsの今後の発展を祈りつつ、このレポートを締めさせていただきます。
・7contents・公式サイト↓
https://7contents.amebaownd.com/