【舞台観賞】「リローゲット・ゲート」(Zero Frontier) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は7/13~7/18まで行われた舞台で既に公演は終了しています。

7月も中旬に入り、いよいよ夏本番……一歩手前といったところでしょうか。
この時期、自分が好きなプロ野球もちょうど前半戦が終わり、オールスターゲームの時期となります。
この球宴を経て、いよいよシーズンも佳境に向かっていくのですが……。

そんな中、自分にとって「オールスター」……に近いキャストが揃った舞台がありました。
それが今回紹介するZero Frontier企画公演「リローゲット・ゲート」となります。

「企画公演」とある通り、今回の公演はプロデュース公演となります。
特定の劇団の主催公演とは違い、出演者の幅が非常に広いのが特徴ですが……。

さて今回、この公演の演出に携わったのが、村井みゆき嬢になります。

元ジャングルベル・シアターの劇団員という事で結構客演は拝見しており、以前の【舞台観賞】シリーズには頻繁に登場していました。
そんな彼女が久々に舞台に、しかも過去共演した事のあるキャスト、スタッフを伴って今回、プロデュース公演に携わりました。

そんな村井嬢の近辺のキャスト、スタッフとなれば当然、自分も拝見した出演者の方も多くなります。
劇団主催の公演以外でここまで知っているキャスト、スタッフが勢揃いする……自分の中で「ほぼ村井みゆきオールスターズ」結成です(笑)
プロ野球のオールスターとはまた一味違った、これまで有りそうで有り得なかったメンバー同士の共演が実現。
またスタッフにも、あーんな方や、こんな方が名を連ね……この時点で楽しみしかありません!(笑)

……こうして向かった先は八幡山ワーサルシアター。
個人的には2012年以来、約4年ぶりに訪れましたが、果たしてここでどのようなオールスターの共演が繰り広げられたのか……。


それでは公演終了につきネタバレ有りのあらすじをば。

舘あおい(結束友哉・以下敬称略)と、天竺葵(船津久美子)は翌年に結婚を控えた婚約者同士。
とあるキッカケで山中の古民家に上がり込んだ。
そこには先客として、桔梗(岡田勇輔)、菖蒲(政野屋遊太)という兄弟がおり、やや遅れて式火烏(白井サトル)という探偵、助手の康乃馨(脇田美帆)がたどり着く。

それぞれ事情を抱えている人物が集まった後、この家の家主と名乗るオウセン(松下勇)と自らを「アヤカシ」と名乗る者たちと出会う。

だがその中の人物……ヒガン(山村真也)は葵の4年半前に亡くなった元婚約者・松本に瓜二つだった。
またショウメイ(伊喜真理)と自らを「少年」と自称する女性は、桔梗、菖蒲の18年前に別れた大切な人・雫だと言う……。
しかし頑なにその素性を否定するヒガンと、ショウメイ。
一方、馨は「アヤカシ」の中の一人、ウツギ(池上映子)に何故か懐かしさを覚える……。

そんな中、式火烏の口から調査の結果、この建物にはある「門」が存在する事を告げられる。
それは時間を巻き戻す事が出来る、摩訶不思議な「門」……。

それぞれの大切な人を取り戻すため「門」をくぐり抜け、その時間をやり直したいと願う者たち……。

そして家の主・オウセンは問いかける……。

「他人の人生、狂わせる覚悟がお前らにあるなら、そのゲートをくぐればいい」

一度くぐれば、その世界そのものの時間が巻き戻ってしまう……「リローゲット・ゲート」
果たして「門」をくぐり、世界をやり直そうとする者は現れるのか……。

これは人生をかけて大切なものを取り戻そうとした者たちの、愛と苦悩に満ちた物語である……。



……こんな感じでしょうか。
いわゆるタイムトラベル的なものを題材に扱った物語なんだけど、とても深く重いテーマもそこには内包されている。

もしあの時に戻れたなら……。

人間、誰でも一度は考えると思う。
某国民的アニメのタイムマシンで過去や未来に行ける話に夢を抱いた人だって、我々の世代は多いと思う。

だけどこの物語ではその時間の巻き戻す事によるデメリットを前面に押し出し、そこに登場人物たちの過去のトラウマとやり直したい葛藤をうまく生み出している。
時間は巻き戻した。だけどそのやり直した時間によって、自分以外の人間の運命も大きく変わってしまう……その悲哀すら漂わせている。

それを更に際立たせたのが「アヤカシ」を名乗る存在。
実はオウセンとガラン(村井みゆき)以外、正体は人間。
ヒガンとウツギは実際に「リローゲット・ゲート」を使った事があり……それによって本来なら亡くなっていた者が、生きている現在が存在している……という展開に繋がる。
ネタバレもあるので核心に迫るのはここで止めておくが、この絶妙なバランスの「リローゲット・ゲート」の設定が効いている。

こうしてシナリオ的にはヒューマンドラマの側面もあるが、一部登場人物の背景が分かりにくい箇所もあり、伏線は回収しきれたかというと一回では無理でした。
もう一度、観劇していると新たな発見はあったのかも知れませんが……そこだけは若干残念だった。

さてシナリオの面ばかりここまで強調しましたが、劇中のアクションの数々は非常にたまらない。
オープニングの全出演者総登場のダンスから始まり、主に中盤から後半の「リローゲット・ゲート」使用権争いで繰り広げられた登場人物同士のアクションの数々。
これは本当に見応えがありました。
ここの会場、お世辞にもそこまで大きな舞台とは言えない。
だけどその会場を文字通り、所狭しと多くの出演者がアクションの数々で魅せる、魅せる……。
シナリオのやや消化不良な面と比べたら、こちらはほぼほぼ完璧だったのではないでしょうか。

照明はやや暗転が多かったように思えるものの、気になるレベルではなく終始、集中して見れる舞台でした。
上演時間は大よそ1時間30分。
時々、この手の舞台はアクションを魅せるために、やたら冗長になる傾向があるけど、そうはならずに短い時間で集中してやり切った感があったのは良かったと思います。



それではここから気になった出演者でも……。
しかしキャスト11名中7名はきっちり知っているからなぁ……。

うん。ジャンベルさんみたいに、パンフレットの順番に一人ずつ感想を書いていこう。
その方が早い(爆)

・オウセン……松下勇(劇団えのぐ)
登場人物たちが入り込んだ旧家の主。そしてオカマ(笑)だがその正体は……。
劇中の登場人物の中でも、設定の面でも、性格の面でも一癖も二癖もあるオカマ(笑)だったけど、あの奇妙なまでの存在感は秀逸。
記憶が確かならまだ20代半ばだと思いますが、彼は一体どこへ向かって、最終的にどこにたどりつくのか……楽しみであると同時にちょっと怖い(爆)
ただ曲者を演じさせたら超一流。これからも頑張って欲しい。

・ヒガン……山村真也
「アヤカシ」と名乗るうちの一人。正体は4年半前の遭難事故で行方不明になった天竺葵の元婚約者・松本なのだが……。
この方は初見。印象としてはアクションが特に凄かった印象が強く、汗だくの彼の姿は非常に印象的。
不器用な男の典型例というか、元婚約者の天竺葵と、先輩にあたる舘に対して器用に立ち振る舞えない様がもどかしくもあり、彼なりの葛藤をうまく表現していたと思います。

・ショウメイ……伊喜真理(ハグハグ共和国)
「アヤカシ」と名乗るうちの一人。桔梗、菖蒲によると18年前に姿を消した少女・海野雫に似ているのだが……。
今回の舞台で幾つもの顔を見せた伊喜真理嬢。前半は自身を「少年」と言い張るが、中盤、後半になるにつれ海野しずくとしての面が徐々に露になっていく……。
冒頭と終盤では全く印象が違う難役。よく「憑依形女優」と形容される彼女だが、一体どうやったら、あんなに難しい役を演じきれるのか……鳥肌ものの演技だった。
……とは言え、過去に多重人格を演じた事もある彼女……この手の役はむしろ朝飯前……だとしても、やっぱり常人の理解は超えている。凄い。

・ウツギ……池上映子(CAPTAIN CHIMPANZEE)
「アヤカシ」と名乗るうちの一人。実は10年ほど前、ある事情で「リローゲット・ゲート」で使った事がある人間……。
キャプチンの看板女優、池上嬢。正直、キャプチン以外でどういう演技をするのか観てみたかった方なので、今回は個人的な願望が叶った形に。
キャプチンでは主役が多い彼女ですが、今回のように脇でもしっかり存在感を発揮出来る方というのが分かりました。
元々色んな役柄を演じられる方でしたが、今回もきちんとまとめてきたなぁ……という印象があります。

・ガラン……村井みゆき
「アヤカシ」の中でもウツギのペット(?)的立ち位置。通称「女形の巨人」(爆)
ほぼ終盤まで台詞らしい台詞なし!言ってしまえば……とても頭のいい犬が人間化したら……みたいな延長上の演技(爆)
ウツギ演じる池上嬢の「お手」「チンチン」などの掛け声でアクションをしたりしており、今回はどちらかというとアクションに特化した感があり。
なおラストシーンでようやく台詞らしい台詞と共に正体が明らかになりますが、そのワンシーンも村井嬢らしくて良かったです。

・舘あおい……結束友哉(バンダムクラスステージ)
天竺葵の婚約者にして、松本(ヒガン)の先輩。葵が元婚約者の松本を忘れられないのを慮って行動に出るが……。
不器用な男、その2(爆)彼は彼なりに葵を愛しているのに、後輩にあたる松本(ヒガン)を前にして、葵の心に決着をつけさせようと促したりする。
そのような演技がもどかしくもあり、だけど男性目線からしたら「男ってバカなんだよなぁ……」と、どこかで彼の気持ちに寄り添っている自分に気付く。
最後は意外な結末をを迎える事になるが、最初から最後まで不器用な男をある意味カッコよく、しっかり演じたと思います。

・天竺葵……船津久美子(にゃむにゃむの森)
舘の婚約者だが、4年半前に元婚約者の松本が行方不明のままになっている。
「悟らずの空」の初演以来、久々に拝見しました。確かこの時も殺陣が印象的な方でしたが、今回もアクションシーンでも見所満載。
劇中でのメインヒロインと言っていいポジション。ただ彼女にとっては悲しい終わり方になった感は否めない……。
そのあたりの悲哀が観ていて、伝わってきました。でも後日談が一番気になるのは彼女かも……。

・桔梗……岡田勇輔(カプセル兵団)
菖蒲の兄。18年前に行方不明になった海野雫という少女を探し続けているが、その正体は……。
あのカプセル兵団から出演……という事で、劇中のアクションは安心して観れた訳で。劇中のアクションの数々は見所の一つ。
菖蒲演じた政野屋氏とほぼほぼセット。正体は劇中でも薄々感じていたけど……終盤の去り際は寂しくもあり、また暖かくもあった。

・菖蒲……政野屋遊太
桔梗の弟。兄同様18年前に行方不明になった海野雫を探している。鼻がとてもいい。
所感については桔梗演じた、岡田氏とほぼほぼ同じだけど、鼻がいいという設定で、より正体の説得力があったのは彼だろうか。
やはり正体が分かった後はどことなく悲哀はあったけど、兄弟セットで非常に印象的な役柄でした。

・康乃馨……脇田美帆
探偵・式火烏の助手。幼少時、小児白血病にかかるが治っている。しかしそれを前後に母親が行方知れずになっており……。
実は今回のストーリーのキーマン。最初は登場人物の中で一番印象が薄かったのに、劇中(の時間軸)で唯一、ゲートを使ったり、真っ先に「アヤカシ」の正体に気付いたり……。
正直、彼女がいなければ、今回の物語はもっと悲惨な終わり方をしていたかもしれないという程、登場人物の助けになったと思う。
劇中通じて、一番印象が変わったのは間違いなく彼女でした。

・式火烏……白井サトル(望創族)
私立探偵。「リローゲット・ゲート」の情報を登場人物たちに提供するが、その正体は……。
劇中において、登場人物を引っ掻き回す役。一言で言えばトリックスター。実に軽妙かつ、巧妙なテンポで物語のスピードをうまく回転させていました。
劇中でもそれとなく正体をほのめかす描写はちょいちょいあるものの、最後の最後まで正体は不明。
それ故、彼の存在そのものが、劇中における最後の「謎」であり、終盤まで本当につかみどころのない役柄だった。でもそれが上手かった。


……大体、こんなところですかねぇ。
出演者の皆様にとって、今後の励みになればこれ幸いですけどねぇ。
ただほとんどの方は知っている、もしくは演技を拝見した事のある方なので、非常に安心して観れたのは確かです。
数少ない初見だった皆様も上手かったし、いい舞台が拝見出来たと思います。

それと個人的には、今回は衣装で参加していた、自分の推し・おこ様にも労いの言葉を贈りたい。
衣装として本当にお疲れ様でした。


……そんな訳で「リローゲット・ゲート」のレポートを締めますが……この舞台を拝見して、個人的には時間を巻き戻したいとは思わなかったですね。
何故ならこれまでの人生、いい事ばかりじゃなかったけど、失敗や反省、後悔もひっくるめて今の自分を形成している全てですから。
 
色んな人の人生の縮図を濃厚にまとめあげたのが、今回の舞台だったのではないかと思った次第……でした。