【舞台観賞】「月光条例~カグヤ編~」(カプセル兵団) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※9/27~10/4公演。既に公演は終了しています。
 
10月になりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
もうすっかり秋となり、日が昇っている時間も徐々に短くなっています……。
 
……が、そんな秋めいた過ごしやすい日々にも関わらず、秋でも、冬でも常に炎天下のような「熱さ」を持った劇団が笹塚の地で公演を行っておりました……。
 
その劇団の名は「カプセル兵団」
もうこの舞台観賞シリーズでも何度か名前が出て来ている劇団で、ご存知の方も多いと思います。
 
そんなカプセル兵団が今回上演した舞台が「月光条例~カグヤ編~」となります。
 
さて週刊少年誌……特にサンデーを購入している方なら、このタイトルに「おや?」と思われた方も多いだろう。
そう……今回の公演、藤田和日郎先生が週刊少年サンデー誌上にて2014年まで連載していた漫画「月光条例」が原作となる!
この「月光条例」という漫画を知らなくても「うしおととら」「からくりサーカス」の原作者と言えば、お分かりいただける方も多いのではないかと思う。
 
このカプセル兵団、過去にも漫画原作物を舞台化して上演している実績があり、前述の「からくりサーカス」を始め、「逆境ナイン」(島本和彦・原作)、「D・N・A2」(桂正和・原作)の舞台化に成功している。
(良く考えたら、キ○肉マンの必殺技を劇中で脈略も無く、再現するような劇団だしなぁ……・笑)
 
そんな漫画原作の舞台化に定評があるカプセル兵団。
昨年はこの前編にあたる「月光条例~月光編~」を上演しており、今回はその続編の公演となる。
……実は今回、公演を見るにあたり、一つだけ懸念があった。
 
……話についてこれる?
 
「月光条例」という作品、実は原作は全く読んでいない。
それならまだしも、昨年の前編にあたる「月光編」も見ていない。
 
誰しも経験があるかもしれないが、続編物の映画やゲームでいきなり「2」から入る感覚である(笑)
舞台は楽しみだけど、果たして楽しめるのか……そんな不安を胸に笹塚の地に降り立つ……。
 
今回の上演される笹塚ファクトリー。
意外にも初めて訪れる劇場でした。
一度は行ったような気がしたんですけど、気のせいって恐ろしいものですなぁ……。
なお残念な事に来年3月いっぱいで閉場が決まっているとの事です。
閉場する前に行けたのは、せめてもの幸運でしょうか。
 
まず劇場の特徴をあげると……前方にはT字型の舞台。
三方向から舞台を見れるようになっています。
自分が座った席は正面よりやや上手側でしたが、この形状の舞台なら、角度を変えて何度でも楽しめると思いました。
劇団の特徴としてアクションが派手なので、こういう舞台の形状はまさに理に適っていると思います。
 
そうこうしているうちに15分ほど前から前説開始。
鯛と亀が延々と前説しているのですが、ここで衝撃の事実を知らされる……。

上演時間……2時間40分!?
 
「正気か!?」
 
まずこの上演時間を聞いた際の本音がこれ(笑)
しかも途中休憩無しって……トイレが近めな自分としては、十二分に注意しないといけない時間……。
……普段から観劇前は水分をなるべく取らない自分ですけど、この上演時間には色んな意味で戦々恐々としました……。
 
こうして前説と前物販(劇中の出演者が今回の作品のパンフを売っていた)が終了し、間もなく上演開始……!
果たして2時間40分に渡る、舞台は一体、どんなものだったのか!?
 
 
 
……と、ここでいつもなら、あらすじに入るところ。
しかし今回は原作物。
自分があらすじをまとめるよりは「月光条例」全29巻を読んでいただいた方が早い(笑)という結論に至り、今回はバッサリ割愛!(笑)
 
内容が気になる方は「月光条例」全29巻を大人買いするか、ネットカフェか漫画喫茶に寄って全巻読破するべし!(笑)
恐らく原作の後半部分のお話しだから。今回の舞台(笑)
 
 
 
……と、気持ちがいいくらい、あらすじを割愛したところで(笑)全体的な感想について……。
 
一言で言うなら「すごい面白い」
原作は知らなくても「漫画の世界がそのまま舞台に出てきたみたい」な出来だった。
逆に言うと漫画の世界を、舞台でここまで表現出来るものかと、一種の感動すら覚えてしまった……。
 
いや現在、過去に関わらず、漫画原作物の舞台というのは数多く上演されてきた。
超メジャーなところだと、宝塚歌劇団の「ベルサイユのばら」。ミュージカルが有名な「テニスの王子様」などが当てはまる。
どの作品も原作の雰囲気をいかに壊さず、その上で自分たちなりの特色を出すかで出来栄えが決まってくるものだと思う。
これらの作品の良さは、それぞれのファンの方に聞いていただく事として……。
 
話を戻す。
カプセル兵団の本作品の舞台化において一番感じたのは「熱量」である。
それは原作に対する愛情、尊敬に対する「熱量」であり、またそれを受けてこの作品をこの舞台の上で再現しようとする、出演者たちの表現に対する「熱量」をヒシヒシと感じる。
 
この劇団、とにかく表現が独特。
小道具(中には大物もあったけど)や、衣装が「これでもか!」という原作ファンでも恐らく納得するレベルの再現度なのに、大道具(背景の類)は一切なし!
例えば劇中で剣が延びる描写とか、全部人の手で表現したり、時にはそこに言葉を交えて伝えたりして、とにかく何も無い空間に風景を浮かばせる……いわば受けて側の想像力に委ねる表現方法が非常に多い。
でもそれを中途半端に抽象的にしないために、ダイナミックなアクションの数々があったり、時にはまくしたてるような台詞の波が襲って来たりするのである。
場面の転換も、その場で小ジャンプをして、風の音と共に出演者が入れ替わったりする手法を取り、転換をスピーディーにし、かつ集中力を途切れさせない工夫もされている。
 
とにかくこんな感じで物語は進んでいく。
怒涛のような物語の進め方、展開ではあるが、その点は心配ない。
物語冒頭30分(?)くらいは、前作「月光編」のおさらい的要素が強く、当日パンフレットのあらすじと併せて読めば、大抵、この「月光条例」がどういう物語か理解が出来る。
そして物語は徐々に熱を帯びていき、中盤から後半へかけてのクライマックスへ盛り上がっていく。
こうして手に汗握る展開が、次から次へと目まぐるしく移り変わっていく。
それなのに短い出番の登場人物の行く末に、気が付けば感情移入して事もしばしばあり、次から次へと、次の展開が気になって仕方ない。
まさに漫画のページを次々とめくる感覚である。
そして物語は「熱量」を保ったまま、エピローグを迎える……。
 
……カーテンコールの後、思ったよりも早く物語が終わった感覚に襲われて、時計を見た。
確かに2時間40分経っている……それくらい体感時間ではあっという間に、2時間40分が過ぎて行った。
 
上演前の懸念は杞憂に終わった。
それと同時に長時間椅子に座っていたせいで、お尻の筋肉が痛い事に気が付いた(笑)
確かにこの痛みは2時間40分、座りっ放しじゃないと味わえない痛みだった。
 
こうしてあっという間に過ぎた「月光条例」
ここ数年で観た舞台の中でも、圧倒的な爽快感を持って駆け抜けた舞台でした。
 
 
 
さてここで気になった出演者の皆様について触れるところ……ですが……。
 
今回、本当に出演者が多い(爆)
パフォーマー含めれば50名近くいったんじゃないだろうか(汗)
それ故、登場人物によって出演時間の差が本当に激しい。
メインキャラは出ずっぱりだったりするのに、対して脇役になると本当に片手の指で数えられるレベル……。
 
黒田勇樹氏が演じたシカリオなんて、出演時間10分あったかなぁ……(汗)
役柄的にヒロインの父親ポジションがだぞ……十数年前だったら、テレビドラマでバリバリ出ていたような人がこれだけだぞ……。
 
今回、誘ってくれた國崎馨嬢が演じたマユキメ(ラスボス・オオイミ王の妻で王妃)なんて、数えた限り出演シーン3つ……。
台詞も一回あっただけ……まぁこの唯一の台詞があったシーンは流石だったけど。
 
「うしおととら」「からくりサーカス」の登場人物なんてほぼ消滅させられるシーンを演出するためだけに出てきたようなもんだしなぁ……。
 
……という感じで、登場人物の出演時間に極端なまでの差がある。
まぁ漫画を原作としている以上、致し方ない部分ではあるんだろうけど……ただ逆にその短い出演時間にも関わらず、出演者が皆、全力で演じるから清々しい面もある。
そういう意味では例えチョイ役でも、演技の「熱量」に差は無い。
 
……そんな訳で今回、どの出演者が印象に残ったというと、なんか却って差が出て申し訳ない気がするんですよ。
ただ知っている方だと、岩崎徳三を演じた西村太一氏はじじいキャラがあまりにも板についていたし、乙姫を演じた林智子嬢の妙なハイテンションっぷりは観ていて爽快だった。
 
後はきちんとお話した事が無いんですが、赤ずきんを演じた工藤沙緒梨嬢はかわいらしい中に侠気じみたところがあって結構自分の好みの演技をしていました。
前回「GHOST SEED」で拝見した時とは、ある意味真逆のポジションだったんだけど、こういう演技が出来る方は溜まりませんね。
 
他にも全体的にメインどころの女性キャラ(エンゲキブの清水りさ子嬢、鉢かづき姫の中山泰香嬢など)はどなたも魅力的でしたし、(自分が拝見したAキャストでは)高木天道を演じた吉久直志氏も主人公の連れというポジションを男気たっぷりに演じてました。
そしてラスボスのオオイミ王を演じた瀬谷和弘氏の貫禄も忘れられません。
 
それでも今回、一番印象に残ったのは、主人公・岩崎月光を演じた青木清四郎氏でしょう。(ダブルキャストで高木天道になりますが)
熱血な主人公とはかくあるべしの教科書通りの熱演を「これでもか!」というレベルの熱演で見せてくれました。
理屈を抜きにして、カッコいいですよ。
熱いし、真っ直ぐだし、男らしいし。
それでいて実は小道具も作れる、手先の器用さを持っているし(爆)
まさにスーパーヒーローですよ。
男の自分から見ても、どこか憧れてしまう、男くささが彼の熱演からはほとばしっていました。
 
……まぁ各出演者について語るなら、こんな感じかな。
とにかく出演者が多かったけど、各出演者、尋常ならざる「熱量」を持って、舞台に臨んでいたのは間違いありません。
皆様の熱演が見れた事に、一客として感謝したいと思います。
 
 
 
……そんな訳で観ていた自分が、今思い出しても、心が熱くなった舞台「月光条例~カグヤ編~」
観終わった後でインターネット上で情報をぐぐったりしていますが、今度、時間があったらネットカフェにこもって全館読破しようか考えているレベルです。
 
何はともあれ「娯楽とはかくあるべき!」を地で行ったカプセル兵団の熱すぎる公演に今後も期待したいと思います。
 
・カプセル兵団・公式サイト↓
http://kapselheidan.com/next.html