【舞台観賞】「星の王子さま -Love the Life you Live-」(ハグハグ共和国) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は7/29~8/2まで公演された舞台で、既に終了しています。

7月最終日……某コミケに向けて準備が終わり一段落ついた頃。
しかしこの時、二週間前の某イベントのレポートがまだ終わっていないなど、ライフワークにちょっと狂いが生じ始めていた頃。
ちょっと色々終わって、ふと空っぽになった自分。
そんな時、観に行ったのが今回の舞台という訳です。

うん。あんまり本文とは関係ない書き出し(笑)

そんな訳で今回、レポートするのはハグハグ共和国公演「星の王子さま -Love the Life you Live-」です。

ハグハグ共和国については既に何度か、この舞台観賞系レポートで一年に一度は必ず掲載している劇団でお馴染みかと思います。
主宰の久光真央嬢をはじめ、女性劇団員の割合が高く「女傑」と評しておりました……が、最近、男性劇団員の割合も高くなったので「女傑」ではないような……(笑)
それでもハグハグ共和国は、ハグハグ共和国である事に変わりありません。国家は解体しないのです!(爆)
さて今回はそんなハグハグ共和国、設立15周年という事で、それを記念しての公演との事です。

そして演目は「星の王子さま -Love the Life you Live-」

「星の王子さま」……このタイトルを聞いて、多くの方がピンときたと思います。
そうあのサン=テグジュペリ原作の有名なおとぎ話です。
もちろん今回の舞台も、サン=テグジュペリ原作の「星の王子さま」を原作としています。

……ただそれをただ舞台にして演じただけじゃ、面白くない!
そこはハグハグ共和国テイスト満載にアレンジ加えて、ダンスも歌も加えて……なんと素敵なミュージカル仕様に仕上がっております!

会場は大塚萬劇場。
早速、ごくごく簡単なあらすじから行きたいと思います。
公演終了後につき、ネタバレ有.


……荒廃した世界。
そこに建つ、一件の病院。
病院の前で生き倒れていた少女・すず(宇田奈央子・以下敬称略)は、医師の風野(藤本忠正)、彼の亡き妻を模したアンドロイド・愛川(戸塚まるか)に命を救われる。
しかし生きる希望を失っていたすずにとって、それは本意でなかった。
いつまでも続く戦争。希望の無い世界……それらに絶望し、今すぐ死ぬことを臨むすず……。
そんな彼女の姿を見るにみかねて、風野は自分の昔話を始める……。

若き日の風野。
当時、かぜ(中村和之)と名乗っていた彼は、行く先々で知り合った戦争難民の者たちとキャラバンを組んで彷徨っていた。
その中には年端もいかない子供や、後に妻となる愛川……あい(伊喜真理)もいた。
戦争から逃げ続けている彼らにとって、安息の地はどこに行ってもなく、彷徨い続けていた。
そんな折、キャラバンの中にりく(小松聖矢)という元飛行士がいた。
彼は飛行士だった頃、出会った、ある一人の王子の話をしてくれた。
その話にキャラバンの者たちは勇気づけられ、そして希望を失わずに生きていこうとする事が出来た……。

星の王子さま……それは飛行士だった彼が出会った、大切な友人の話……。


……と、導入は大体こんなところでしょうか。

星の王子さまの話は知っている方も多いでしょうが、序盤はオリジナルの要素が非常に強いです。
なので星の王子さまの話を知っている方でも、このあたりはドキドキしながら見れる要素が満載でしょう。

そしてこのお話しの構造は四重構造になっています。
現代→過去→更に過去(星の王子さまと飛行士の件)→星の王子さまの話。
つまり風野が若き日のかぜの話をして、かぜの話の中でりくが過去の話をして、その若かりし日のりく(飛行士(北川コヲ))が王子(月野原りん)と出会って、王子の話を遡っていく……という作り。

まぁ飛行士と王子の話はひとまとめにしていいと思いますけどね(笑)
「星の王子さま」の原作にあたるのは、この飛行士と王子の件より遡っていくところ。

ちなみに主にミュージカルパートになるのは、原作をなぞっている部分が中心。
ここでは王子や他の登場人物が楽しそうに歌って、踊って、悲喜こもごもを思いっきり表現している。
見ていても楽しくなるし、うきうきするようなパートである。
そこにちょいちょい、かぜのキャラバンの登場人物がダンスに参加したりしているところに、りくの昔話という時代を交錯させる術を取っているように見える。

一方、現代、そしてかぜのキャラバンの時代は、楽しげな歌もダンスもない……。
非常に殺伐として、絶望した荒廃した世界が漂う。
だけど子供たちが希望を見出そうとしている……あまりにも対比が激しいのである。

本作品、ミュージカルを謳っているが、このパートで敢えてそれを入れなかったのは、この時代の雰囲気を出すためか……そう思える。
そしてキャラバンの行く末は……。

この作品、ただの娯楽作品と思って観てはいけない。
そしてかぜのパートが戦争を取り扱っている事も目を背けてはいけない。
時節柄、終戦から70周年が経とうとしている。
そして原作は第二次世界大戦の最中に出版され、原作者のサン=テグジュペリも偵察飛行の際、そのまま行方不明で帰らぬ人になっている……。

これは偶然じゃない。
ここに久光嬢が伝えたいメッセージが込められている。
そう思った次第です。
そのメッセージをどう受け取ったかは、その人次第だと思います。

さて内容について延々と話しましたが、今回、売りとしたミュージカル部分、非常に見応えがありました。
多くの登場人物が歌って、踊る様は見ていて圧巻。そしてとても楽しめました。
また出演者のみならず、ダンサーの皆様も早着替えを駆使し、次から次へと衣装をチェンジして見た目にも楽しませてくれました。
以前からダンスの部分でもレベルが高いハグハグ共和国ですが、今回もその真髄はしっかり見せてくれたと思います。

音響、照明も個人的にはバッチリ。
演出面で文句はつけようがありませんでした。

上演時間は1時間45分。
最初から最後まで、楽しみながらも、ちょっと考えさせられた……そんな舞台でした。


さてここからは注目した出演者の方でも……。
実は今回、非常に出演者が多かったです(笑)
総勢31名!(爆)まぁ……よく考えたら、OPとED手前で、よくこれだけの大人数の出演者がステージの上で収まったな……と。

誰がどう良かった……というのは、なかなか難しいので、印象に残った方と、直接の面識がある方中心になってしまうのが申し訳ないくらい。

初見で印象に残った方をまずピックアップします。
真っ先に挙がるのは点灯夫を演じた、寺崎まどか嬢。
彼女の出番は本当に少ない。だけどその小さな体とアンバランスなくらい長尺なガス灯を灯すステッキ(という表現が妥当か分からないけど……)が非常に印象的。
恐らく小道具、衣装が劇中で一番似合っていたのは、彼女じゃないか……というくらい。
多分、背が低くて、非常にかわいらしかった(爆)のも手伝っているけど、歌唱力含めて凄い印象に残りました。
ちなみに経歴調べたら、アイドル方面の活動も……今後、舞台以外でもお会いする機会があるかもしれませんな(笑)

次に挙げるならバラ役の高柳沙彩嬢。
この方も出番は少ないけど、本当に少ない出番の中で、バラの気高さというのを演じたと思う。
有り体な言い方してしまえば、王子に対するツンデレな態度がまさにツボでした。

キャラバン隊の中からはのんを演じた真宮ことり嬢と、くうを演じた鈴木啓子嬢。
いわばキャラバン隊の中の子供……少女たち。
恐らくキャラバン隊の中で一番、希望を持って生きていたであろう彼女たち。
くうの「あの空の向こうには……」という台詞、そして二度目の爆撃の後、訪れる最期……涙なしには見れない。
希望を持ちながら、だけど生きる事が叶わなかった少女たちの熱演に頭が下がりました。

他にも飛行士を演じた北川コヲ氏、劇中、華麗なタップダンスを見せてくれたスイッチマンの佐々木名央氏など……挙げればキリが無い!
それくらい多くの出演者が魅了してくれました。

続いて面識がある方中心で……。
地質学者ぷぅをメインで演じた鈴木絵里加嬢。メインはまさかのじじぃポジション(笑)
今年の4月、自分を号泣させた「キクちゃん」は一体どこへ行った?(笑)
冗談はさておき、メインでは発揮されなかった女性らしさ(笑)はダンスパートでふんだんなく発揮されておりました。
実はメインの役じゃないところでは、地質学者かぁを演じた金濱千明嬢共々、ダンサーをしていたんですな。
そこでのダンス……特にぷぅを演じた直後に早着替えで臨んだ、ヘビ(窪田悠紀子嬢)のバックで踊ったダンスは結構セクシーでした。
これからも注目したい役者の一人である事は間違いないです。

あと前述の通り、地質学者かぁを演じた金濱千明嬢も頑張っていました。
最初、拝見したのがレディース(2014年2月「Dear...私様」桑原和江役)だったのですが(笑)拝見するたびにイメージが変わっております。
「Dear...私様」の時、一言、二言、お話しかたかもしれない程度なので、次回拝見した時はもっと注目して観たいと思いますし、また挨拶もしたいと思ったりなんかしています。

キツネを演じた「うまちゃん」こと都築知沙嬢。自分も贔屓にしているジャンベルさん。劇団員の客演も応援してまっせー(笑)
今回演じたのキツネ役。絡んだのは殆ど王子のみというポジションでしたが、その王子との絡みでは、楽しそうな歌とダンスを披露してその場を和ませてくれました。
元々、小動物系などを演じさせると上手い彼女。なんと言っても初見の時はハムスター(2014年6月「ヒュウガノココロ」ビビ役)でしたから(笑)
今回のキツネ役もハマっていると思いました。それにしてもキツネだけど、一切、俗に言う「キツネ色」が使われてない衣装はセンスがあったし、それを着こなしてキツネを演じきったところが彼女の力量だと思いました。
それにしても歌が上手くて驚きました。これはジャンベルさんでミュージカルになってもいけるな(笑)さすがでした。

そしてハグハグ共和国の劇団員の皆様を中心に……。
かぜを演じた中村和之氏。観るたびにいい演技するようになっているというのが印象です。
ハグハグ共和国を見始めた当初は「女傑」の中に埋もれている、唯一の所属男優というイメージだったのですが、存在感を強く発揮し始めていると思います。
一見すると爽やかですが、泥臭かったり、熱かったりそんな役も幅広くこなせると思います。
今回もその例に漏れず、風野の若き日のかぜを本当に泥臭く演じたと思います。個人的には大好きな役者さんです。

続けてあいを演じた伊喜真理嬢。なんでも出来るね……彼女は。
今回は16歳の天才科学者の少女……ってポジションだけど、終始、手に鎖を絡められて、どこか物事を冷めた目で見ている姿が印象的。
劇中の殆どで感情が無い少女だったけど、終盤だったり、ラストシーンで見せたような喜怒哀楽の感情だってしっかり見せられる訳です。
そう……例えるなら「万華鏡」同じ人を見ているはずなのに、その見せ方によって全く異なる形を見せてくれる。そんな女優さんだと思います。
伊喜真理嬢……いい意味で「役者馬鹿」次はどんな役を演じて、どんな姿を見せてくれるのか……楽しみが尽きません。

あとりくを演じた小松聖矢氏も、凄い貫禄があっていい感じだった。
確か実年齢、相当若いと聞いてますけど、今回いい感じで渋い役演じたと思います。

他にもヘビの窪田悠紀子嬢のなまめかしい動きだったり、冒頭と終盤を締めたすず役の宇田奈央子嬢など劇団員の皆様もしっかり脇を固めていい演技していたと思います。

でも最後に挙げるなら、王子を演じた月野原りん嬢しかいないでしょう。
王子を演じるには、ちょっと長身かな……と思ったのですが、そんな事無かった。初めて出てきた瞬間、自分たちが知っている……まさにあの「王子」そのものでした!
元々、男性役などの素養もある方だとは思っていましたが、少年役も難なくこなしていました。
そして劇中では主に歌うけど、歌によっては主旋律じゃなくて、コーラスをこなしたり演技以外のところでも見せてくれたと思います。
だけど彼女が今回、本当に凄いのは今回、劇中で使われた楽曲、全てを作詞、作曲を彼女がしていたという事です!(爆)
……これは某劇団員さんのツイキャスと、ご本人からに聞いて確認が取れているので間違いはないです。
……いや今回、結構、膨大な数の楽曲ありましたよ。
特に王子パートはほぼ、全てのシーンに歌があった訳ですから、その労力を考えると……頭が下がる思いです。
その上、物語の主役と言って過言ではない王子を演じるのですから、まさに八面六臂の大活躍……という言葉が似合います。

ハグハグ共和国……確かに中村氏や小松氏も頑張っている。
だけど座長(主宰)の久光嬢と、副座長の月野原嬢、他、伊喜真理嬢を始め女優陣のスペックが高すぎる……やはりこの劇団に似合う言葉はこれしかない……。


「女傑」


……そんな訳で彼女たちの作った世界に浸った真夏の昼下がり……ちょっと夢から覚めたような、うだる熱さの中、帰路につきました……。

帰り道に見上げた空が、まるで王子の笑顔のように見えたのは、きっと気のせいじゃない……よね。

・ハグハグ共和国・公式サイト↓
http://hughug.com/index.html