【舞台観賞】「女女女ニョニョニョ/Tポーズお願いします。」(グワィニャオン) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※この舞台は11/12~11/16まで行われた舞台で既に公演は終了しています。

11月観劇の観劇ラッシュも2本目となりました。
まぁ恐らくこの前後から諸々多忙になるのですが……まぁ今のところは何とかなってますが(笑)

そんな私事はいいとして、今回拝見した舞台は短編2本立て。
お伺いしたのは意外にも初となる西村太佑氏の主宰劇団・グワィニャオン。

この【舞台観賞】の中では、3団体合同公演、ハグワィベル・シアターでもその一角を占める事でお馴染みのグワィニャオンなのですが、単独公演を拝見した事は無かったんですね。
今回の出演者の皆様も、そのハグワィベル・シアターで拝見した方が多数おりましたので、非常に楽しみにしてお伺いしました。

さて本編のあらすじ前に簡単にグワィニャオンの経歴でも。
2001年に主宰・西村太佑氏が旗揚げした劇団。
公式サイトには「日常に潜む様々なテーマを斬新な切り口と肉体表現で舞台化。”娯楽精神と活劇魂”をモットーに心躍る作風で年1、2回の公演を行う」とあります。

ちなみに過去ハグワィベル・シアターの公演は過去2作品は共にグワィニャオンで上映された作品です。
この2作品を観ているなら、グワィニャオンという劇団のカラーが想像しやすいと思います。
そして今回の短編2作品はまさにそのグワィニャオンのテイストが凝縮された作品となっております。

そんなこんなで向かった先は大塚・萬劇場。
階段を下に、下に降りてたどり着いた劇場で……ハグハグ共和国主宰・久光真央嬢に会ったのが、この日最初の驚きでした(笑)
軽いサプライズを経て、開演前にはグワィニャオン所属、すわいつ郎氏の前説があり、いよいよ本編……。

今や懐かしい、金曜ロードショーのテーマに流れ本編開始となります……。

公演終了後につき軽くネタバレ有のあらすじでも……。


冒頭……携帯ゲームに群がる人たち。
そのゲームに見入る人々、やがて彼らはどこかに呼び出され、その場を立ち去る……。

人々が立ち去った後、一人の男をメッタ刺しにする女……!
叫びながら、恨みを込めながら、ひたすら男を刺し続ける……。

衝撃的なシーンの後、何事も無かったように主宰・西村太佑氏の全出演者紹介を経て、物語の幕は開ける……。

【女女女ニョニョニョ】

一人の少女の元に届いたダンボール。
中から出てきたのは一人の女だった。
その女……吉田洋子(平塚純子・敬省略)は、たると(桜咲千依)と名乗る少女に一年契約で物として「買われた」のだ。
なんでもお世話をするという吉田に、どこか心を閉ざしているたると。
だが吉田の献身に、たるとは徐々に心を開いていくが、たるとはある重大な秘密を抱えていた……。
やがてそれを知る事になった吉田……そしてたるとの運命は動き出そうとしていた……。

一方、吉田の同僚達は、一部でカルトな人気を誇る漫画家・花水木境子(村井みゆき)のアシスタントを務めていた。
そんなある日、急激に太り元の体形に戻った吉田(八百屋杏/兼役)と共に、吉田たちと同じ仕事をする事になった、たるとが「お試し」として花水木の元に派遣される。
花水木のファンであるたるとはこれが仕事という事を忘れ喜ぶ。
だがその初めて会うはずの同僚の中にたるとが良く知る人間がいた。
たるとはその人物……実の姉を指差しをこう言い放った……。

「人殺し!」

……果たして、たるとの過去に何があったのか!?
そして吉田たちがこの仕事を始める事になったその理由とは……!?

そこには混沌とした、深い深い闇があった……。

【Tポーズお願いします。】

……舞台は都内のあるスタジオ。
これから行われるのは、あるゲームのモーションキャプチャーの撮影……。

何度も参加しているベテランもいれば、モーションキャプチャーが初の者も多く、中には素人もいた。
全て社長である日暮里(西村太佑)が独断で選んできた者たちだった。

撮影は中盤まで概ね順調だったが、とある衝突から現場は一触即発の雰囲気に陥る……。
しかしそんな衝突も乗り越え、いつの間にか一体感が生まれつつあった現場……。
やがてラストシーンの撮影が迫る。

ラストシーン……そこに特別参加するのは、漫画家・花水木境子……。
そしてラストシーン撮影の開始が迫る……。

「Tポーズお願いします」

撮影の最初と最後を司るTポーズを取った出演者達……。
ゲーム……「花水木無双」のモーションキャプチャーの撮影は無事成功するのか!?


……そんなあらすじ。

短編2本を70分×2で収めています。
途中、セット変換の5分休憩(?)もあり、演劇初心者でも比較的優しい構成だったのではないかと思います。

しかしこの短編、内容としては非常に両極端です。
ただグワィニャオンのエッセンスがより、グロい部分が抽出されているか、笑える部分が抽出されているかの違い。
前者が「女女女ニョニョニョ」で、後者が「Tポーズお願いします。」と観ていいでしょう。

恐らく人によって好き嫌いが激しいと思われるのは「女女女ニョニョニョ」
あらすじを書いていても、内容が非常にブラックだしエグい。
本当に有り得ない「人」を一年契約で売買する話。
ただかつての奴隷制度、人身売買などと違い、インターネット販売でしかも研修を積んだ上で、一年契約限定で販売しているというのが現代社会を反映しているようにも思えます。
エグい話だし、その根底にあるのは、仄暗い……人の闇……。
でもついつい、怖いもの観たさで観てしまう、ホラー映画やドキュメンタリーの感覚で、個人的には苦手な物語でしたが、最後まで見入ってしまったのも確かです。

逆に業界の裏話的な題材をキャッチーに描いたのが「Tポーズお願いします。」
モーションキャプチャーの存在を知っている人は多くても、その現場の事を知っている人なんて本当に少ないと思います。
そんな普段、日の目に当たらない世界を分かりやすく、しかも大いに笑いをふんだんに盛り込んで描いているのがこの作品だったと思います。
だけどここで取り上げた題材が「女女女ニョニョニョ」で出てきた、花水木境子先生の漫画キャラオールスターが登場する「花水木無双」というからおかしい(笑)
「女女女ニョニョニョ」の劇中でも、たるとが花水木先生の作品の良さを一つ一つ語っていますが、この短編はまさにその再現(笑)
ただここで注目したいのは、この作品があくまでモーションキャプチャーの撮影現場という事。
つまりモーションキャプチャーの撮影という形を借りて、地味な黒いタイツにポイントがついている衣装の出演者が「素」の状態で演技をしているのである。
もちろんそこに背景など何もない。役者の想像力と感性を駆り立てて、何もない空間で演技をする……。
しかもそれを劇中でやるのだからとんでもない。
劇中ではそれが原因で、アクション俳優の飛鳥拳(宮崎重信)がやってられないと匙を投げかける。
それくらい特殊な環境で、終始役者が何もない空間を、何かあるように動き回る……本当に痛快な内容でした。

そんな2本の物語を繋ぐキーマンが花水木境子の存在。
「女女女ニョニョニョ」では一漫画家にして、一顧客だった彼女の作品をゲーム化するという流れで始まった「Tポーズお願いします。」
「女女女ニョニョニョ」は2010年初演の作品だったものの再演。
今回、完全新作の「Tポーズお願いします。」を繋げるために、絡めてきたとしか思えない展開でした。
そういう意味では話の持っていき方は上手かったと思いますし、全く正反対の物語を繋げるための楔としては最高でした。

ただこの2本の短編を観終わった後の所感は……ラスボスは花水木先生だったか……と(笑)

舞台演出についてはほぼ文句なし。
照明、音響は非常に効果的だったと思います。


さて今回、気になった出演者の方でも……。

……というか、今回は「ハグワィベル・シアター」の影響で、半分以上知っているからなぁ……。
いいや。知っている人、全員の寸評にしてしまえ(爆)

【女女女ニョニョニョ】

・平塚純子(吉田洋子)
2月の「Dear...私様」での秀生母(並木麻裕美)の演技も印象深かったけど、今回も母性をくすぐるような仕草の数々がたまらなかったなぁ。

・石垣エリィ(羽田好美)
これまで拝見した役がどちらかというとコミカルな役ばかり拝見していた印象なので、今回のどこかブラックな感じも良かった。

・渡辺利江子(青木幸子)
なんだろう。毎回、この方が舞台に立っている間は、凄い安心して観ていられる。本当に演技が落ち着いているし、内容がな内容なだけに、この落ち着きは一種安心感さえある。

・田中沙季(岩崎ますみ)
これまで歳相応の役ばかり拝見していたから(劇中の設定とは言え)年配の方を演じられた事に新鮮味がありました。役の幅が広いと感じました。

【Tポーズお願いします。】

・松下勇(西健介)
劇中では技術屋としてテキパキ指示を出す役柄を演じました。言い方は悪いけど、凄いしっかりした役柄を見たのが初めてだったので、印象に妙に残りました。

・熊木拓矢(菅原賢二)
モーションキャプチャーのベテランとして安定した演技を見せる。確かモーションキャプチャーでは、人面飛行機か何かやっていたような……(笑)ぶっとんでる役やらせると絵になるなぁ(笑)

・石川健一(大下光男、幸助(女女女ニョニョニョ))
途中で足を負傷しながらも撮影に最後まで臨む役。でも観ていた時は「Dear...私様」の高田兄とは気づかなかった……。「女女女ニョニョニョ」では殺されていたねぇ……(爆)

・さいとうえりな(矢島加奈子)
「Dear...私様」では小学生の早苗ちゃんを演じていたから、そのギャップに驚いた。しかし殺陣は凄かったなぁ。キレキレだったし。

・すわいつ郎(栗塚栄一)
今回もこの方の演じる役は存在感だけで反則でしたなぁ(笑)終演後の挨拶で噛み噛みで笑われておったなぁ(笑)モーションキャプチャー内では8ヶ月の妊婦って……(笑)

・宮崎重信(飛鳥拳)
今回演じた飛鳥拳が非常に濃いキャラで非常に印象に残っているけど、この方も「Dear...私様」の高田弟とは終演後まで気づかなかったです……。

・伊喜真理(小野口早苗)
劇中では5歳の子持ちのシングルマザーの劇団員を演じる。モーションキャプチャー内では少年役。その演じ分けの上手さはさすがの一言。今年一年の集大成だったと思います。

・笠田康平(川島守)
劇中では外見が宇宙人っぽいだけでスカウトされた役柄。モーションキャプチャー内での奇妙な動きの数々は目に焼きつきました。ハマリ役。

・後藤冬樹(金田哲夫)
劇中では筋肉質だからという理由でサイボーグ役でスカウトされる。普通に演技が上手いんですけど、確か本職は歌手の方ですよね……(笑)今後もグワィニャオン関係で拝見できるのかな?楽しみです。

・西村太佑(日暮里さん)
やっぱりというか自由に動き回って、ツッコミ入れたりチャチャ入れたり、好き放題やってますね(笑)主宰の特権活かしまくりでしたね。


・村井みゆき(花水木境子)
別名・ラスボス(笑)「女女女ニョニョニョ」での鬱屈した先生の演技も良かったですが、「Tポーズ……」での殺陣は圧巻そのもの!今回はこの方のために今まで全ての話があったと言って過言じゃないかと(笑)

……とまぁ、思いつく限りつらつら知っている方を中心に書いてきました。
初見で一番印象に残ったのは、たるとを演じた桜咲千依嬢。
心に深い闇が残る、少女の役を公演していました。「Tポーズ」で花水木先生の付き人として登場していたのを観て、妙に安心しました。


……とまぁ、今回は感じですかね。

ただ「女女女ニョニョニョ」で平塚純子嬢、八百屋杏嬢が「二人一役」を演じた吉田洋子。
どうしても他人とは思えませんでした。

え?男性のお前がどうして?と思われるでしょうが……。
劇中での吉田洋子の生年月日が……昭和54年3月16日。
(劇中では生年月日が製品番号として扱われるので判明)

……自分と全く同じ誕生日の人間ですよ(汗)

自分と全く同い歳の女性が、あんな数奇な運命を辿る……そりゃ他人事とは思えません。

実は今回の劇中で、一番背筋が凍ったのは、この設定だったかもしれませんねぇ……はい。

そんな訳で初めてのグワィニャオン、楽しませていただきました。
次回公演も拝見する機会があったら、是非観てみたいと思います。

・グワィニャオン・公式サイト↓
http://www.guwalinyaon.com/index1.html