※11/5~11/9公演。既に公演は終了しています。
11月に入りました。
実はこの時期、諸々忙しい時期なのであります。
某ヲタの祭典に受かったので本の執筆もありますし、奇数月なので「二ヶ月に一度のライブバトル」もありますし……。
そんな多忙なはずなのに、11月は観劇が3本って(笑)
(しかもそのうち1本は「観劇マラソン」確定です)
しばらくはモンハンする暇が無いですな(笑)
ええ。仕事終わったらPCの前に向かう生活ですな(笑)
まぁ好きでやっているのですが。
そんな訳で11月1本目の観劇についてレポートいたします。
今回拝見したのはCAPTAIN CHIMPANZEEさんの「棚からハムレット」という作品です。
もう何度かこの【舞台観賞】シリーズには登場しているキャプチンことCAPTAIN CHIMPANZEEさん。
今年2月の「ピノキオショー」もそうでしたが、感動させる物語という意味では破壊力抜群の劇団です。
毎回、どこかで涙腺崩壊する可能性が高いのでハンカチ必須の劇団です。
(まぁ自分は持って行きませんでしたが)
そんな訳で実は久々に訪れる、中野ザ・ポケットに到着。
会場に入る前にパンフレットと、キャプチンさん恒例「ひまつぶ紙」
パンフレットと「ひまつぶ紙」で遊んでいると、いきなり抽選会兼前説が始まる。
猿のぬいぐるみ(名前忘れた)の進行で進む抽選会ですが、毎回、結構いい物が当たります。
1位で前回公演のDVD、2位で劇団Tシャツだから、この抽選会で当たると、元が取れちゃうレベルです。
そういう意味でのキップの良さは、この劇団の特徴だと思います。
そして前説では今回のタイトルにもなっているシェイクスピア原作「ハムレット」の物語を簡単に解説する丁寧っぷり。
これでシェイクスピアの「ハムレット」を知らなくても、物語に入り込めるという寸法です。
こうして客層にとことん優しい抽選会と前説は終了。
気持ち数分ほど開演が押したと思いますが、いよいよ本編開始と相成ります。
公演終了後につき、ネタバレ有のあらすじをば……。
赤井公子(池上映子・以下敬称略)は勤め先の会社が倒産して、友人の伝手でアルバイト清掃員として雇われている。
しかし自分の不幸を嘆き「死にたい」と呟きながら、無気力な日々を過ごしていた。
そんなある日、偶然にも公子の父の旧友である白石(宮内利士郎)と再会する。
両親が高校時代に離婚した公子は父の死を風の噂でしか聞いていなかったが、その白石から衝撃の言葉が出る。
なんと白石の枕元に、死んだ公子の父・黒田王良(上素矢輝十郎)が現れるというのだ。
彼から公子に渡すよう言われた遺品もあるというので、渋々、遺品が保管されている場所へ向かう。
そこはかつて黒田が設立した劇団・クイーンシアターの稽古場として使われた倉庫だった。
そこに現れたのは、亡父・黒田王良の亡霊。
彼の死のキッカケは、自分が設立した劇団を弟に乗っ取られて絶望したからというもの……そして公子に復讐を……と告げるより早く……
「断る」
公子は演劇に情熱を傾け、家族を省みなかった父を嫌悪していたのである。
そんな公子の前に(自称)悪魔のグレイ(上村琴)が現れる。
生前、生きた証を残せなかった黒田は地獄に落ちて、毎日、火あぶりの刑にされていると言う。
公子たちの目の前で黒田を火あぶりにするグレイ。
その光景を目の当たりにした公子もさすがに耐え切れず、父の復讐を引き受ける事になった。
そんな父の復讐を果たす条件。
それは黒田が創設し、今は黒田の弟・王彰(上素矢輝十郎/二役)が主宰であるクイーンシアターを取り戻す事!
まさにハムレットのような復讐劇に巻き込まれる形になった公子。
果たして公子はクイーンシアターを取り戻し、父の復讐を果たす事が出来るのか……!?
……と、そんなあらすじ。
しかしこのあらすじは、あくまで序盤。
この舞台上でおける世界観がまた荒唐無稽である。
実はこの舞台の世界では、東京都は条例によってシェイクスピアの演目以外の小演劇を演じる事を禁じられているのである!
この強引とも言える条例だが、圧倒的支持率と人気を誇る都知事・緑川玲子(鈴木美奈)によって押し進められ、演劇人の反対そっちのけで可決されたという経緯がある。
この法案のせいで、これまで普通に演劇をしていた舞台人は表に現れず「闇の劇団」として活動する……という感じである。
一方、黒田王彰率いるクイーンシアターはシェイクスピアの演目で好評を博し、都知事のお墨付きを得ている。緑川をして「私の劇団」と自慢するレベルである。
さて父の復讐を果たす事になる公子だったが劇団を当然、持っているはずもなく勝負以前の問題だった。
しかしバイト先の先輩・敦(菊田健吾)が実は舞台人で「闇の劇団」の一員である事からメンバーはあっさり揃う。
だがこの敦、実は都知事の弟で、前述の条例も弟を小劇場の世界から足を洗わせるために思いついた、公私混同の条例であったのだ。
そんな経緯と復讐の話が都知事の耳に入ったため、クイーンシアターと公子率いる「闇の劇団」改め(自称)「本家クイーンシアター」は、全く同じ条件の劇場で、「ハムレット」を演目に公演期間をずらして勝負……という事となる。
……これ以上語ると、あらすじで無くなってくるし、実は物語の核心にかなり触れるので、詳しい物語を知りたい方は恐らく来年には発売されるであろうDVDを観よう(笑)
こうして話を振り返ってみると、キャプチンさんの舞台にしてはファンタジーな要素は少なめである。
(それでも既に父親の亡霊とか、悪魔は出ているので、全く無い訳ではないが)
むしろここまで現実の世界をベースにして、その上に何か設定を組み立てるような話の構成をしてきた事に若干の驚きを隠せない。
この手の脚本で真っ先に思い当たるのが、ハッピー圏外の内堀優一氏。
あまり他の劇団の方を例に挙げるのは失礼かもしれませんが、現実世界をベースに大胆な味付けをするという手法において彼の右に出る者はいないと思っています。
それをキャプチンの藤原思氏がやるとは正直思っていませんでした。なので一瞬「あれ?キャプチンさんだよな?」と妙な違和感を覚えたのも事実。
それだけ今回の題材が妙にリアル。
藤原氏のパンフレットの挨拶にも書いてあるように、今回の物語は「小劇場演劇」を題材にしています。
でも良く考えたら、彼ら自身の世界の裏側をアレンジして、我々客層に示している訳です。
表も裏も、酸いも甘いも知った、この世界の住人が描く「小劇場演劇」の世界をテーマにした舞台……そりゃリアリティが無い訳ない。
だから今回はいつものキャプチンさんと違った面白さがあったと思います。
王良・公子親子、緑川姉弟の確執なんて、恐らく舞台を経験した方でも、似たような確執があった方がいたんじゃないかと思うレベル(笑)
普段、彼らが提供している物語の裏側を観ているような……そんな印象すら受けました。
そんな物語の中でもキャプチンらしさは随所に見られました。
その辺りは物語が進むにつれ明らかになっていきますが、こういう人の愛情や、優しさを盛り込んでくるところが藤原氏の脚本ならではだと思います。
毎回、何かしら感動する要素や、ワンシーンに感動を集約させる手法などはいつもより控え目でしたが、今回はこれでいいと思いました。
以前から苦言を呈している暗転の多さが解消されていないのは残念ですが、もうこの劇団に関しては今更なのでこれ以上言いませんし改善も望みません。
そして物語を詰め込み過ぎて、2時間を超える点についても、一長一短なのでこの点も改善を望みません。
最近はこれらの欠点と当初は思っていたところですら、この劇団の持ち味と思えてきたので、あまりとやかく言うのも良くないと思っている節もあります。
今回の舞台は彼らの元々持っているテイストを大事にしつつ、いつもと違った切り口で挑んだ意欲作だと思っています。
そういう点が垣間見えた事を、今回は良かったと思います。
さて気になった出演者でも……。
……というよりは、この劇団に来たらまず池上映子嬢の論評は欠かせない気が(笑)
今回も主人公の「ハムちゃん」こと公子を熱演。
安定感抜群の池上テイストの芝居、堪能させていただきました。
ただ池上嬢、最近は与えられる役が、どれも似通ったりしているので、新鮮味が無いのも事実。
次回、主演から外して……というのも観たい気がするけど、恐らくそれは無いだろうから、これまで演じた事無いような役柄を希望します。
キャプチンさんのもう一人の看板女優といえば上村琴嬢。
今回の彼女の役どころはグレイという自称・悪魔だが、ネタバレすると王良に懐いている子供の幽霊。
もう一人の幽霊・セピア(喜友名真実)とコンビで、話を進めるいわばストーリーテラーポジション。
毎回、キャプチンさんの舞台には欠かせない、この手のポジションだけど、難なく演じてました。
ただここのところ少年(もしくはそれに近しい)役が多いように思えるので、それ以外の役柄も観てみたいところ。
彼女の場合、まだ若いので機会があれば客演して、キャプチン以外の舞台に積極的に立ってみるのもこれから芸の肥しとしていいのでは無いかと思います。
さて女優陣で個人的に目を引いたのは、桃瀬彩を演じた有栖川姫子嬢。
劇中では現役人気アイドルにしてクイーンシアター四天王という、主人公サイドから見たら「敵役」ポジション。
非常に見栄えもするし、かわいいという言葉が似合う方でした。
もしかしてインディーズアイドルか何かしているのかな?……と思うくらいの容姿だったので、彼女のブログを拝見したのですが、実際それに近い活動もしつつも、なんと某有名ゲームの歌の作詞もこなしている方。
(ア○マスとか、アイ○スとか・笑)
むしろその経歴に驚かされました。関東で舞台に出たのが、今回初めてのような事を書いてましたが、また観たい方です。
あと観劇後、気になったのは藤井かなを演じたうえだちひろ嬢。
劇中では「闇の劇団」サイド。某劇団○季的なタスマニアタイガーのパペットを持ってないとまともに話すら出来ないコミュ障キャラを演じてました。
そのパペットがある時と無い時の演技のギャップは非常に上手かったと思います。
そんな彼女、次回出演予定が……あ、これ言わない方がいいのかな?(笑)ただ来年も彼女を最低一回は観るのは確定しました(笑)
その時はタスマニアタイガーがどう進化しているのか楽しみにしたいと思います(笑)
ここまで女優ばかり挙げましたが、男優の中でも気になった方でも。
なんと言っても、黒田王良、王彰の二役を演じた上素矢輝十郎氏。
キャプチンでは何度か拝見して、そのたびにインパクトのある演技をされている方でしたけど、序盤、王彰としての登場時は見事に「ラスボス」感を出していました。
ただ物語の後半、実は公子を応援している叔父としての王彰や、終盤で再び現れる父・王良を優しく演じるなど、ラスボスだけで終わらない演技を見せてくれました。
王良、王彰の兄弟を演じる時は特に演じ分けはしていなかったと思いますが、どちらの役も公子を見守っている保護者としての優しさを感じる演技でした。
続いてあげるなら金田を演じた宮下真氏。
東京都職員にして公子の元彼。当初は都知事にクーデターを企む副知事・藍田(廣川政紀)の差し金で公子たちに接していた……というが、実際はそうではなくて公子が心配で溜まらないキャラ。
そんな彼は去り際に「公子さん、まあ……その……頑張って」と言って去るのが定番。実に不器用な性格の日本男児を演じていた。
……と思いきや、終盤、バイクに乗ったら性格が180度変わるというウルトラCを持ってきて、会場を大爆笑の渦に巻き込んだ張本人(笑)
「俺の走りは稲妻だぜー!」という叫び声は、未だに脳裏に残っている……強烈だった(笑)
そして実は裏の主人公では無いかと勝手に思っている白石を演じた宮内利士郎氏。
公子をこの物語に引っ張り込む張本人だが、実は公子と同じくらいのキーマン。亡父・黒田が劇中で、公子以外にその行く末を心配した唯一の人物でもある。
20年、黒田に付き添ったのに絶望的に演技が下手なため、役をもらった事は無かった。そのため自信は喪失しており、登場時は公子サイドにいるにも関わらず舞台に出る事を躊躇う程の人物だった。
それが劇中を通してやがて自信を取り戻すに至り、紆余曲折を経て迎えた本番……あるアクシデントを彼が襲う。しかしそれを乗り越え、見事に彼は自分に与えられた役を任うする……という役どころ。
その上記の本番は、この舞台でも最終盤に差し掛かっている。公子たちの舞台が劇中劇として描かれている唯一のシーンが、この白石演じる王と、敦演じるハムレットのシーンだった。
この白石の最後までやり遂げようとするシーンの位置からしても、脚本・藤原氏が彼に託した想いというのが良く分かる。
そんな白石を宮内氏が熱演。わざと演技を下手に演じる事の方が実は難しいと思う訳です。劇中での大根役者っぷりは却って凄いと思いましたし、笑いました。
実は今回の舞台、彼の熱演があったからこそ成り立つものだったのではないか……と、今更ながら思う訳です。
最後は今回の(も)自分のお目当てだった長井柚嬢。
今回、彼女が演じたのは銀河薫子という(小さな)大女優。
クイーンシアター四天王の一人で、演劇界の大御所なのだが、他の四天王・桃瀬や筑紫(小森毅典)とは違って一切テレビやマスコミに顔を出さないので知る人ぞ知る存在。
(ちなみにもう一人の四天王は黒田王彰)
歳の頃は王彰や白石とほぼ同じくらいで、白石とは旧知の仲だった。
そんな熟年に差し掛かる年頃の女性を……20代半ばの柚嬢が熱演しました!
ただ彼女の場合、昨年の「それいけ!邪馬台国」でもオババという、長老ポジションを演じていた経験があるので、実年齢より高い役柄でもどーんと来い……だったのではないでしょうか?
その期待に違わず、劇中での彼女は実年齢を忘れさせるくらいの熟女……いや大女優を熱演。
劇中では「天候を操る」(実際は超がつくほどの雨女)という設定と相まって、強烈な個性を最後まで発揮してくれました。
終盤における、ワンシーンで嵐を呼んで雷まで落とす演出は、最早、劇中最強キャラと言って過言ではない!(笑)
だけどそんな彼女が演じた薫子、非常に愛らしい一面も見せている。
実は彼女は長年の付き合いである白石に想いを寄せている。最初は白石の演技を下手と笑っていたが、実はそんな下手だけど一所懸命な白石に惹かれていたのだ。
中盤でクイーンシアター四天王が、公子たちを(結果的に)鍛えるシーンの中で、白石に台本の台詞を借りて想いを伝えているのだ。
この一連の白石に絡むシーンを、さりげなく、だけどどこかかわいらしく、いじらしく柚嬢が演じているのである。
この薫子の白石に対するアプローチは男性として、普通にときめいてしまいました。
彼女の事をそれなりに観てきましたが、こういう色気のある女性を演じる引き出しがあった事に、そして備わっていた事を嬉しく思いましたし、感激しました。
そういう意味では本当に彼女は観るたびに演技が上手くなっていると感じます。
いずれ劇中の大女優ではなく、本当に意味で大女優になれる素質は備わっている……そう思っています。
自分の中では既に「千葉が産んだ小さな大女優」でありますけどね(照)
そんな訳でこうして出演者を観ると、本当に魅力的な方が並んでいます。
ここでは挙げなかった方でも、個性的な方が揃っていましたし、そして舞台の上で活き活きしていました。
そういう意味では、キャプチンさんの舞台は、出演者一人一人を堪能するにはいい舞台です。
若干のマンネリ感がある事だけは気になりますが、それを抜きにすれば、安心して観られる劇団である事に違いはありません。
次回公演は来年9月だそうですが、それまでに英気を養って、また我々の前に現れる日を楽しみにお待ちしております。
・CAPTAIN CHIMPANZEE・公式サイト↓
http://capchim.com/