※この舞台は9/23~9/28まで行われた舞台で既に公演は終了しています。
10月になりました。いよいよ秋も深まりつつある昨今、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
さて今回レポートするのは、9月下旬に観劇した舞台についてです。
個人的には9月3本目の観劇となりました。
上半期は例年より観劇のペースが落ちていたのを取り戻すように、色んな劇団を拝見しています。
さて今回お伺いしたのは、ハグハグ共和国。
この舞台観賞のシリーズでは「ハグワィベル・シアター」の一角として紹介したりする機会も多いですが、主宰・久光真央嬢を始めとし、女性団員が多数を占める劇団です。
そんなハグハグ共和国の27回目の本公演「おとなずかん①今日ほど素敵なショウはない。」の様子をお送りいたします。
今回、お伺いしたのは、池袋シアターグリーン・BATH THEATER。
大体、二週間ぶりの訪問でしたが、先々週拝見したハッピー圏外同様「第26回池袋演劇祭」参加作品です。
あくまで自分の中のイメージですが、これまでハグハグ共和国の公演は中野で拝見しているので、中野のイメージが強かったです。
なので池袋でハグハグ共和国……ちょっと違和感がありました(笑)
さて余談はさておき、開場すると既に劇場には衣装を着た出演者(主にハグハグ共和国の劇団員)の皆様が席案内だったりしております。
なので知っている出演者にお会いすると、ちょっと照れくさいのか恥ずかしいのか、目を逸らしてしまいました(笑)
自由席なので自分の中でベストポジションと思う席に座ります。
一通りパンフレット類を拝見しますが、その中に茶封筒がある……そこには「ネタバレ注意! 終演後に見るこをお勧めします。」とハグハグ共和国のロゴが……。
一体何が入っているのか気になったので、開演前にも関わらず拝見……しませんでした(笑)
そんなハグハグ共和国、開演前から楽しませてくれます。
一旦、トイレから帰った頃、ちょうど15分前でしたが舞台の上では、前説……というより寸劇が行われていました(笑)
やがて寸劇が終わると、ステージの上をずっと掃いている某出演者の姿があったり……開演前から我々の目を楽しませてくれました。
そして開演直前、奥の方の掛け声と共に舞台袖に撤収して……物語の幕は上がります。
それでは公演終了後につき、ネタバレ有りのあらすじをば……。
今回、うまく書けるかなぁ……。
キャバレー・トワイライト。
今日も楽屋では個性豊かなコンパニオンたちと従業員たちがてんやわんやのやり取りの応酬を繰り広げている。
店長が変わったばかりのこの店で、コンパニオンたちは自分たちが次のNo1を目指している。
そんな中、キャサリンこと山田(伊喜真理)は清掃員の内山塔子(月野原りん)に店長の部屋にあるゴミを回収して欲しいと奇妙なお願いをする。
そこには捨てられた大切な物があるからと言うが……彼女の真意は分からないまま。
回収したゴミを分別した矢先、新店長の宝塚夢子(渋谷恭子)が現れ「開店約5万日記念祭」をすると宣言。
この日のために新たなダンサーや、マネージャーを雇い張り切る店長。
コンパニオンも従業員たちも、大いに張り切り、その日に備えてレッスンに取り組む……。
……やがて静まり返った、キャバレー・トワイライトの楽屋……。
そこに集まった面々……先ほどまで、ある者は清掃員なり、従業員だった者たち……。
……そこで行われたのは、医師団のミーティング……。
トワイライト……その正体は病院の一室……。
そしてその場にいない山田をはじめとするコンパニオンたちは……心に重い傷を抱え、そして記憶の障害をもって生きていた……。
トワイライト……それは患者たちを更生させるためのプログラムの一貫だったのだ……。
山田たち患者が抱えた、記憶は戻り、心の傷は癒されるのか?
一方、山田がゴミの中から探そうとした物とは一体何なのか?
そして……内山塔子と山田の間にある、切り離せない絆とは……。
結論。
あらすじ難しい(笑)
まず最初、我々客層に提示されている設定自体が実はフェイクである。
物語前半はキャバレー・トワイライトのドタバタ劇を見ているし、実際、この後、トワイライトでどんな展開が起きるのか……そればかり期待していた客層ばかりだったと思う。
しかし物語が中盤から一転。
トワイライトの設定自体が精神病棟の患者たちの更生プログラムの一貫だったという事で、まず最初に客層は裏切られる。
その後、徐々に患者の少女たちが回復傾向に向かう中、主要キャラの内山塔子の周囲で異変が起きる。
実はこの内山塔子自身、多重人格(?)を持っていて、ある登場人物の存在が、彼女の中の別人格だった……という事になる。
そして終盤、山田はあるものを見つけるが、そこで内山塔子との間の意外な関係が明らかとなる……。
実はこの関係性こそが、今回の物語で非常に重要なのである。
内山塔子にとっても、山田にとっても……。
ただ皆まで語っていいのか分からないので、ここでは語りませんが……。
物語の内容が気になるなら、ハグハグ共和国さんのDVDでも買うべきかと(笑)
ここまで書いていると意外と難しい題材に思えるかもしれない。
だけど実際、一度しか拝見しなくても、言葉にするのが難しくても「スッ」っと心に入ってくる物語となっています。
昨年も同様の事を書いたと思いますが、これは久光真央嬢ならでは脚本の技量かと思います。
そういう意味では毎回、物語を説明だてて考えるのではなく、感覚的に捉えるべきなのかな……というのが、自分のもった印象です。
それを助けているのが、歌と踊りをはじめとする演出の数々。
以前からハグハグ共和国さんはこれらの表現が非常に優れている。
今回もその例に漏れず、序盤から終盤まで、数々の演出で我々の目を楽しませてくれています。
序盤の掃除道具類を使ったダンスから、終盤の某ももクロ(笑)の楽曲に合わせたダンス……そしてBGMに乗せて届けたラストシーンまで……。
このラストシーンが毎回、ハグハグ共和国はずるいんだよね……BGMに乗せて、台詞なしで演技をするんだけど……あれは泣かずにいられない……。
それでも物語が理解できない方は、劇団が用意した「ネタバレ注意!」の封筒の中身を拝見すればいいでしょう。
実はこれ……各登場人物の相関図が書かれています。
誰がどういうポジションでどういう関係だったか一目で分かります。
こうして駆け抜けた1時間30分。
でも物語の濃厚さから考えると、相当濃密な時間を過ごしたと思います。
いい舞台でした。
さてここからは気になった出演者でも……。
今回はハグハグ共和国以外でも、ハグワィベル・シアターなどで拝見した方や、何度か拝見した方が多かったので意外と楽しめましたね。
まず客演の方から。
院長の岡田八重子を演じた渡辺利江子嬢。
今年2月「Dear...私様」で演じた天才・荒木も印象に強かったけど、何かそのデジャブを見ているような今回の岡田院長の役。
この手の役を演じさせたら、凄い上手いなぁ……と感心させられました。
その岡田の息子で研修医の岡田智士を演じた松下勇氏。
言い方としては失礼かもしれないけど、この手の息子とか坊ちゃん系の役を演じたら、右に出る者はいないレベルのハマリ役。
ご本人が若いのもあるだろうけど、自分に求められている役柄を実に理解して演じていると感じます。
他に知っている方だと、カウンセラー・園田を演じた笠田康平氏は今回はやたらサービスショット満載だったような気がするし(笑)
前半のガウン姿にあれは……ズルい(笑)
患者の一人・詩奈を演じた金濱千明嬢も、今年の2月のレディース姿を見ていたから(笑)今回の役どころは全く違う一面が見れて良かったかなぁ。
そしてハグハグ共和国の皆様……。
いやハグハグ共和国の皆様、基本的に皆さん、いいんですよ!
まずは月野原りん嬢。
今回演じた内山塔子もまたまた難しい役どころ。昨年の「プロタゴニスト」でも、一つの舞台で幅広い年齢の役を演じ分けていたけど、今回も結構難しかったかと。
患者たち(と言っても、彼女の場合、主に山田だけど)と接するだけでなく、また自分自身の内面と向き合わなくてはいけないという難役……。
しかし彼女の鬼気迫る演技があるからこそ、久光嬢の脚本は形になると思うし、まさにハグハグ共和国の理念や物語の体現者だと感じました。
そんな内山塔子の別人格の一人でもある、ななえを演じた宇田奈央子嬢も惹かれた。
昨年の「プロタゴニスト」の時も注目していたけど(失礼ながら)実年齢を存じませんが、完全にあどけない少女を演じきっていた。
基本子供として無邪気な表情を見せるのに、時々見せる大人のような表情を見せるギャップがたまらない。
同じポジションであるごろうを演じた熊木拓矢氏共々、非常に重要な役割を担い、それを演じきっていたと思います。
また加瀬丈二を演じた中村和之氏も特筆して挙げておきたい。
終始、患者を見守る医師団の一人として、つかず離れずの距離を保って見守っているのだけど、その塩梅が観ていてちょうどいい。
主張をし過ぎず、だけど必要な局面では必ず当てはまるという……パズルのピースのような役割を担っていると思いました。
良くハグハグ共和国をたびたび「女傑」と表現しますが、そんな中、多数の女性陣に混ざって彼がちょうどいい存在感を発揮しているのが、ハグハグ共和国の強みなのかと思ったりします。
「女傑」の中に一粒の刺激を与える、彼の存在感が例えるなら、料理の隠し味のように効いていていいのです。
ただ中村氏はハグハグ共和国とハグワィベル・シアター以外で拝見した事が無いので、敢えて男性ばっかりの舞台に出した時、どういう存在感を発揮するか見てみたい気もします……。
実は塔子の姉だった、夢子を演じていた渋谷恭子嬢の優しく妹を見守る姿も印象的だったし、カウンセラー・都を演じていた窪田悠紀子嬢も、どこか巻き込まれた感がありつつも抑えた演技も光っていた。
意外とツボだったのは食堂のおばちゃんの千代さんを演じた戸塚まるか嬢。出番は台詞は少ないけれど、呟く一言一言が妙に印象的。
また今回からハグハグ共和国に加わった、看護師・久保を演じた小松聖矢氏も、非常に振り回された感のある役立ったけど、これから頑張ってほしいと思わせる演技をしていたと思います。
でも今回、一番評価したいのは、山田……こと花苗を演じた伊喜真理嬢。
前半の「キャサリン」としてのセクシーさといい、強気な態度といい、天真爛漫な姿を見せてくれた……と思えば、中盤から後半にかけてのまるで人が変わったようにおびえるような姿は見てて驚かされた。
確かに患者役を演じた皆さん、前半と後半のキャラクターに凄いギャップがあったけど、その中でも伊喜嬢が演じた花苗は特に圧巻……。
まるで演じている年齢層も、性格も全く正反対のキャラを短時間の間で演じ分けたその技量も素晴らしかったと思う。
後半の月野原りん嬢演じる塔子との会話シーンと、一連の流れはこの舞台最大のハイライト。感動のシーンではあったけど、二人の女優の迫真の演技のぶつかり合いに鳥肌みたいな物も立ちました。
終始、舞台の上で満面の笑顔と、どこか神妙で切ない表情を浮かべる伊喜真理嬢……本当にどの表情も魅力的で素敵でした。
この舞台で彼女には「舞台の神様」が降りていたのではないか……いや、彼女自身が「舞台の女神」だったのではないか……。
本気でそう思うくらい、舞台の上で花苗を演じている彼女の姿は輝いていたし、素晴らしかったです。
今年、伊喜真理嬢の役者としての成長を見る事が出来ている日々、この事を本当に幸せだと思います。
そんなところですかね。
ちなみに「おとなずかん①」というタイトルですが、②は果たしてあるのでしょうか?(笑)
ハグハグ共和国の次回公演を、首を長くして待っていきたいと思います(笑)
ところで主宰でもある久光真央嬢が、この舞台観賞シリーズのレポートの愛読者とお伺いしておりますが……うまく表現できましたかね?(爆)
むしろそれが今は一番、気になっています(笑)
・ハグハグ共和国・公式サイト↓
http://hughug.com/index.html