【舞台観賞】「ピノキオショー」(CAPTAIN CHIMPANZEE) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

※2/20~2/24公演。既に公演は終了しています。

先日「Dear...私様」の観劇マラソンを終え、しばらくは観劇はいいか……と思っていたのですが、実はほぼ同時期に二人の女優から舞台のお誘いを受けていました。
しかも何の偶然かほぼ同じ時期、しかも会場も池袋・シアターグリーン(笑)
小劇場と大劇場の違いはあれど、こんな偶然が重なるとは……。

……という事で数日ぶりにまたまた池袋のシアターグリーンに足を運びました(笑)

日程の都合上、同日観劇しないと見逃すので、大石にしては珍しい連続観劇です。

まずはマチネ(昼)に拝見したのは……CAPTAIN CHIMPANZEEさんの「ピノキオショー」なる舞台です。

CAPTAIN CHIMPANZEEさんはもう何度かこの舞台観賞レポートにも登場している劇団。
私自身、何気に今回でキャプチンさんは4回目になります。
本当に毎回、心暖まる、童話のような世界観が売りの劇団ですが……。

まずはシアターグリーン・BATH THEATERに入る。
この劇団は相変わらず開演前から楽しませてくれる。
まるで本当のサーカス小屋に入ったような雰囲気を醸し出している。
また開演まで飽きさせないための「ひまつぶ紙」も健在だ(笑)
「ひまつぶ紙」の問題を解いている間に、抽選会なるものも始まる。
しかもこの抽選会、意外と商品がいい(笑)
開演前からこの大盤振る舞いにして、雰囲気作り。心憎い演出です。

だからCAPTAIN CHIMPANZEEの舞台は本編にすんなり入り込めるのが特徴だと思うのです。

こうして開演前のお楽しみが一通り終わり、いよいよ本編開始を待つばかり……なのですが、ちょっと意外な始まり方をした。

それでは公演終了後につきネタバレ有りであらすじを紹介します。


舞台は人間とロボットが共存する世界。

あるサーカスにやってきた一人の少女・シルマ(長井柚・以下敬称略)
そのサーカスには誰もいなかったが、一体のロボットが現れる。
そのロボット……タクト(鈴木昌美)に「ピノキオショー」という演目が観たいというシルマ。
しかしその演目はもう終わっていると告げるタクト。だがこの演目にまつわる話を始めるところから物語は始まる……。

スリの松子(池上映子)とそのロボット・ピノキオ(上村琴)はある日、金持ちの春子(川瀬ゆい子)の財布を盗もうとするが失敗して警察に問い詰められる。
松子を「母ちゃん」と慕うピノキオだったが、松子は自分は無関係と言い張り、逃げ出してしまう。
警察のロボット・クニオ(齋藤洋介)によって、一部機能が損傷し動けなくなったピノキオ。
回収、破棄されるはずだったが、近所のロボットサーカス団の団長(宮内利士郎)に拾われる形となる……。

こうして成り行きでロボットサーカス団の一員になる事になったピノキオだが、同じ頃、警察ではある一体のロボットの行方を追っていた。
そのロボット……カストル(北島安鶴紗)は、修理の出来る腕のあるロボットサーカス団の団長の前に姿を現す。
しかしこのカストルは、本来この世界のロボットに持っていない人を殺すための機能、感情が備わっているロボットだった……。

やがてこのカストル、そしてピノキオ、周囲の人たちを巻き込み、物語は展開していく。
カストルは何故、人を憎むようになったのか?
そしてピノキオとカストルの関係とは?

人間のエゴイズムに振り回されながらも、感情をもって動くロボット達の物語の結末は如何に!?



あらすじにすると難しい作品ですね。これは。
ただこの舞台のテーマはフライヤーにもあるように「一途で愛おしいロボットと、身勝手で寂しい人間の織り成すハートフルファンタジー」と書かれています。

実際、作中の人間よりもロボットの方が人間らしいと感じる場面が多々あるし、逆に人間でも人としていかがなものかという描写は多々ある。
これは脚本が意図して描いた、現代社会における人間に対するアンチテーゼとも捉えかねない内容と思います。
ただ人間の身勝手さというのが、あまりにリアルに描かれており、実際、劇中、何度も考えさせられました。

例えば川瀬ゆい子嬢が演じた春子は、亡き夫に似せたロボット・明夫(生沼佑樹)に夫を演じさせていた。
だがあるシーンで亡き夫を思い出したくない心境になり、明夫に自分についてくるなと命令しその場を立ち去った。
それでも春子の命令を守って三日間立ち尽くす明夫……やがてロボットサーカスの団長が迎えにきて、明夫は自分の意思でその場を去る……。
しかしその後、春子は明夫がサーカスにいる事を聞きつけ、寂しいから戻ってきて欲しいと懇願する……。

上記のような一連の流れがあり、春子の身勝手な行動の数々に腹立たしさを覚えた方もいるかもしれない。
だけど果たして、自分達は春子の事を馬鹿にしたり、叱責できるかと考えた時、必ずしもそうとは限らないと思うし、どこかで春子に同情する部分もあったと思う。
やがて物語を通じて春子は改心し、新たな人生を歩む事になるので、物語的には丸く収まる。

他の人間も一部を除いて、ロボット達との関わりの中で自分のエゴイズムや、後悔を反省し、また新たな道を歩き出すという展開になっている。
だけど教訓じみている訳でもなく、押し付けている訳でもなく、一つの舞台を通じてメッセージとして伝えていると思います。

伝えたいメッセージは非常に明確で分かりやすかったです。
しかしちょっと欲張り過ぎたのか?伝えたい事や物語を詰め込みすぎた感もあり、物語の流れはブツ切り感満載。

今回の物語の特徴として色んな登場人物の過去の回想シーンを何度も、現在の時間と交互して組み込むんだけど、あまりうまい演出とは言えなかった。
確かにキャプチンの藤原氏、過去の作品でも途中で過去の回想シーンを盛り込む演出、脚本が多いのですが、今回は良くなかった。
一つのシーンで複数の登場人物の過去の回想シーンに入り、物語が現在進行形で進まないもどかしさ……。
どうしても一つのシーンの流れがスムーズにいかず、苛立ちすら感じる事もありました。集中力もそがれます。
しかも本編の流れからすると削っていいと思うものもいくつか……。

上演時間は2時間5分。
だけどもっと削ってスムーズに出来たのではないか?前作「それいけ!邪馬台国」でも同様の事例がありましたが、あまり改善が見れなかったのは大変残念でした。
あまりいい例えじゃないですが、キャプチンさんの舞台を食事に例えると「もう食べ切れない」のです。
腹八分~満腹の間の脚本を心がける努力も必要だと思います。

ただ厳しい事を言いましたが、感動を与える力は流石。
ラストシーンはオチが分かっていても涙腺が崩壊してしまいました。
最後の最後、こんなにいいシーンが演出できるからこそ、途中の展開のテンポの悪さが残念でなりません。
どうもここ最近のキャプチンさんが詰め込み過ぎあ傾向があるので、その点のバランスをもう少し考慮して欲しいですね。



さて気になった出演者なのですが……。

池上映子嬢、上村琴嬢については流石。
今やキャプチンの二大看板女優と言って過言じゃないと思います。
特に上村琴嬢は拝見するたびに演技の幅も広がっており、今回もところどころロボットの動作を組み入れ、実力も備わってきました。
非常にいい感じです。
ただどうも最近、この二人が中心になり過ぎている感も……。
特に今回はキャプチンの劇団員が元々少ないので、どうしてもこの二人が中心になったのでしょうけど、そろそろこの二人以外が役の中心から外れた舞台を拝見したい気もします。

また明夫を演じた生沼佑樹氏が非常に印象に残りました。
前回「それいけ!邪馬台国」とはまた違った役どころでしたけど、ロボットらしい機械的な演技、だけどどこか微かに人間らしさをうまく演じ分けていたと思います。

他には長さんと廣川政紀氏とクニオを演じた齋藤洋介氏のコンビも良かった。
人間とロボットのコンビだけど、某警察ドラマの相棒みたいな繋がりというか絆を感じた。

逆に赤城を演じた菊田健吾氏。
この劇中では根っからの悪役。最後の最後まで気持ちいいほど、自分の信念を貫く悪役を演じきったのは良かったです。
確かにいい人が救われる、報われる舞台ではあるけど、彼のような悪役がいるからこそ他の役が活きて来ると思うのです。

最後に今回のお目当て、長井柚嬢。
彼女が演じたシルマ。実はロボットの幽霊だったタクト(鈴木昌美)と共にストーリーテラーとして、時には回想シーンのちょい役だったり色々な役割を果たしました。
物語の始まりから、最後まで我々客層と同じ目線で物語を追っていく、もっとも身近な存在として舞台の上にいました。
物語本筋の主人公という役割とはまた違うけど、今回の舞台を語る上で重要な役目だったと思います。
もう彼女を見始めて2年以上の月日が経とうとしているけど、この手のポジションは本当にうまくなったと思います。
次回もこの手の小回りが効くポジションなのか?それともあっと驚くようなポジションなのか……。
どんな役でも楽しみに拝見したいと思います。



さて出演者の皆様と言えば、今回のパンフレット。
実は役名、名前の他に質問として「一番好きなロボットは??」と書かれており、皆さん回答しているのですが……。

池上映子嬢……「重戦機エルガイム」
川瀬ゆい子嬢……「黄金戦士ゴールドライタン」

……歳、バレますがな(爆)
しかし池上嬢……エルガイムって、センスがいいなぁ(笑)

団長を演じた宮内氏の「ゲルググ(普通のやつ)」も好きだったけど(笑)
あと生沼氏の「カンタムロボ」はクレヨンしんちゃん観ていないと分からない(笑)
そして個人的に一番同調したのは、マイルダーZを演じた久保大吾氏……

「メカ沢新一」

……クロマティ高校、好きでしたよ(笑)



そんな訳できっつい事も申し上げましたが、心と懐(笑)に優しいCAPTAIN CHIMPANZEEの舞台。
なんだかんだ言って、結構楽しませてもらいました(笑)

いやでも前売:3,000円、しかもこの日は平日マチネだから更に300円引きって、本当に懐に優しい(笑)
しかもリピーターだと2,000円!(爆)
でもお値段以上の舞台は観せてもらっています。

今後のCAPTAIN CHIMPANZEEの活躍に期待して締めたいと思います!


・CAPTAIN CHIMPANZEE・公式サイト↓
http://capchim.com/