※この公演は12/11~15に行われたもので既に終了しています。
年の瀬となりましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
師走というだけあって、仕事に追われている方、多いのではないでしょうか。
自分も例に漏れず、仕事に追われ、そして年末の某イベントに向けて執筆に追われ大変でした(笑)
そんな執筆活動を無事終えた頃に行われたのが、自分が贔屓にしているジャングルベル・シアターの2013年冬公演。
例年なら年に1回本公演、もう1本ギャラリー公演があるペースなんですが、今年は2本目の本公演。ジャンベルさん、頑張りました(笑)
そして今回の公演のタイトルは「八福の神」
さてこのタイトル、ジャンベルのファン、常連客ならピンと来る方が殆どだと思います。
ジャンベルと言えば、毎年のように公演していたギャラリー公演「おとぎ夜話」七福神シリーズ。
題材として七福神を扱っていましたが、今夏のギャラリー公演「おとぎ夜話 -終(つひ)-」で文字通り、全部の七福神を網羅してシリーズは完結……したかに思いましたが、今回、満を持して本公演に登場です!
この点のくだりについては「おとぎ夜話 -終(つひ)-」を観劇した方ならご存知でしょうが、メインキャラの大伴御幸(大塚大作・以下敬称略)と川端諸子(野上あつみ)が前回のラストでこの点については触れています。
さぁ本公演に初登場の「おとぎ夜話」七福神シリーズ……本公演でどんな輝きを見せるのか!?
そして八人目の神様とは一体!?
会場はジャンベルにとってはお久しぶりの池袋・シアターグリーン BATH THEATER。
ギャラリー公演を彷彿とさせる、あの布に覆われた二段の段差が舞台中央に堂々と鎮座し、舞台の幕は上がります。
そんな訳で某嬢から「あらすじというより物語全編語っている」と指摘を受けている、あらすじから入ります(笑)
まぁ今回はその反省も踏まえ、コンパクトにまとめました(笑)
観劇した方はこれを読んで思い出し、行けなかった方はこれを読んで、行った気になってください(笑)
これでも良く分からない方は、DVDでも購入してください(笑)
今回も例により「おとぎ夜話」シリーズなので、現代パートと、オムニバス形式の三話構成です。
今回はそれぞれのパートのポイントを抑えて紹介します。
・【現代パート】
県内有数の旧家・荷実屋(ニノミヤ)が主な舞台となる。
母屋改築の際、床柱から出てきた七福神に良く似た構図の「八福の神」の絵。
この絵が発見されて以来、荷実屋家は不幸が続いており、現当主・荷実屋文枝(林智子)はこの絵に描かれている不気味な影……八人目の神の「呪い」と疑う。
この八人目の神を巡り、竜胆丸平四郎(浅野泰徳)、大伴御幸(大塚大作)コンビに川端諸子(野上あつみ)を加えた三人は謎解きにかかる。
そんな竜胆丸たち三人の前に、同じく文枝に謎解きを依頼された書画鑑定家・虎杖明(東野善典)が立ちはだかる。
一方、諸子はふとしたキッカケで亡くなった祖父・昭三(竹内俊樹)の事を思い出す。
祖父との思い出、そして祖父に対する仕打ちへの後悔の念が諸子を縛りつける。
「八福の神」の謎解きが進む傍ら、祖父・昭三が残した最期の謎が諸子の頭の片隅について離れない……。
「八福の神」の正体とは一体何なのか!?
諸子は亡き祖父が残した、最期の謎を解く事は出来たのか!?
そしてそれらの謎が示した物とは……。
オムニバス形式の三話を踏まえ紡がれる、極上の謎解き物語……ここに完結!
・【第一話】
荷実屋家の長女・芽衣(堀江あや子)が初代当主・フユハルにまつわる逸話「蓮の実長者」として紹介される。
昔の話……船大工のゴサク(福津健創)はいつか自分で船を作り、廻船問屋になるのが夢。
船大工の親分(大串潤也)や仲間たちには馬鹿にされているが、彼だけは頑なに夢を信じて努力を惜しまなかった。
そんなある日、浜辺でカニどん(大串潤也・二役)とネギどん(松下勇)の会話から、翌日の夜、蓮の葉が生い茂る小道を女神様が通ると小耳に挟む。
女神を運良く捕まえた者には幸運が訪れると聞いたゴサクは翌日の夜、小道の脇で待ち構える。
通りかかった女神(堀江あや子・二役)を捕まえて家に連れ帰ったが、その女神……実は貧乏神だった。
こうして災難に見舞われるゴサク。
途中、更に厄病神(松下勇・二役)まで住み着き、ますます災難に見舞われるが、たった一つの夢である廻船問屋になる夢だけは諦めなかった。
そして数年の月日が経ったある日、ゴサクは遂に船を完成させ、それまで内緒にしていた貧乏神に口走るが……。
果たして夢の船を完成させたゴサクの運命は如何に!?
そして貧乏神たちの取ろうとした行動、意外な結末とは……!?
抱腹絶倒間違いなし。だけど心が暖かくなるオムニバスの第一話。
・【第二話】
荷実屋家の次女・結衣(國崎馨)が荷実屋家に伝わる二つの禁忌にまつわる呪いについて語る。
明治中期、文明開化真っ只中の時代……。
当時の荷実屋家当主の男(篠崎大輝)は、妻・キクエ(升田智美)が三人目の子供の出産を控え幸せの絶頂にいた。
だが父である先代当主(西村太一)から荷実屋家に伝わる呪いを聞かされる。
「荷実屋家に嫁いだ者は三人目までに男の子を生まないといけない」
「初代当主・フユハルの事を調べてはならない」
このどちらかを守らないとフユハルの亡霊に持っていかれるというのだ。
最初は先祖が子孫を呪うのは馬鹿馬鹿しいと真に受けなかった当主だが、妻が何者かに階段で足を掴まれる事件が起きる。
前二人が娘だった当主は、妻が呪いで持っていかれるのを恐れ、悩みぬいた末に古い蔵に立ち入り、下男の三吉(西村太一・二役)と共にフユハルを調べようとする……。
しかし翌朝、当主が見たものは首をくくっている三吉の遺体だった……。
もう後戻りは出来ないと悟った当主は、それまで以上にフユハルについて調べあげようと必死になる。
更に妻が産気づいて焦燥感に煽られ、ついにフユハルについて書かれた書物を見つける。
その書物をめくろうとした瞬間……。
果たして当主の男が目にした物とは……。
妻・キクエは呪いから逃れられるの……。
背筋も凍り、身の毛もよだつ恐怖満載のオムニバスの第二話。
・【第三話】
大伴が荷実屋家の蔵から見つけた二代目番頭・弥助(程嶋しづマ)の手記を、諸子が編纂した物語である。
初代当主と呼ばれたフユ(松宮かんな)、ハル(塚本善枝)姉妹についてのエピソードが綴られている。
姉のフユはしっかり者で面倒見のいい姉御肌。
一方、妹のハルは一本気で血気盛んだが、華のある誰からも愛されるキャラ。
対照的な姉妹だが姉妹で荷実屋家をしっかり支え、商売敵の小金屋との小競り合いもありつつも、日々商売に精を出していた。
そんなある日……。
嵐が長きに渡り続き、大抵の船は港の外まで出せない悪天候が続いた。
そんな折、フユ、ハル姉妹の父(本多照長)が病床から起きて、姉妹にあるお願いをした。
それはかつて自分を養ってくれた船大工の親分を助けて欲しいというもの。
その親分がいる西国は飢饉に陥っていた。
長い嵐により、街道が土砂崩れを起こし陸路では米が運べない状況である。
しかし海路ならあるいは……というのである。
だがこの嵐の中の出航をあまりにも危険過ぎると、若き日の弥助は反対する。
話を一通り聞いた後、フユは自室にこもって一晩中考える……。
翌朝……ますます嵐が酷くなる中、ハルや弥助ら従業員を集め、フユは皆の前で口を開く……。
フユが出した結論とは!?
その答えにハル、従業員達はどうしたのか!?
そして荷実屋の行く末は……!?
全ての答えを導き出す、感動が詰まったオムニバスの第三話。
……大まかにまとめてこんな感じです。
今回は現代パートも諸子の過去が交えつつ進んでいくので、二つの大筋が潜んでいます。
そういう意味ではいつもの「おとぎ夜話」シリーズにおける謎解きに特化されているだけでなく、諸子と祖父の思い出というヒューマンドラマの部分も色濃く反映されています。
このシリーズではお馴染み、竜胆丸、大伴、諸子の三人が一堂に会した今回でしたが、従来と同様の役回りの担ったのが竜胆丸、大伴コンビなら、諸子はいつもと違いヒューマンドラマでのヒロインそのものでした。
そういう意味で今回は現代パートのメイン三人衆、特に諸子というキャラに対する愛はいつも以上に感じました。
よーく考えたら、川端諸子というキャラは、過去のジャンベル作品「河童の水際」の一脇役(という言い方も失礼か)だった訳です。
それが「おとぎ夜話」シリーズでの活躍を経て、今回、堂々とメインヒロイン張っている訳ですから大出世ですよ(笑)
竜胆丸、大伴のファンにとってはこれまでの二人を彷彿とさせる、誰もが納得の大活躍だったと思いますが、諸子のそれはちょっと違うと思う訳です。
今回、諸子の立ち位置を従来のそれとは変えた事で、諸子というキャラの人間らしい一面が非常に映えたと思います。
他にも虎杖という真っ向から対立する敵役と、荷実屋家の人々という依頼主、協力者の存在があり、現代パートにおける謎解きの場面が一筋縄にいかず大いに盛り上がりました。
過去に竜胆丸、大伴コンビが活躍した「青葉の足音」「サラマンドラの虹」にも似たような構造はありましたが、緊張感はこれまでの謎解きには無いくらい高いものになりました。
そしてそれぞれのオムニバス。
従来、原則三人だったところが四人に増えましたが、窮屈さは無く、ギャラリー公演よりも広い舞台をダイナミックに使いこなしていた印象が強いです。
(ただし小劇場なので、そこまで大きい訳ではありませんが……ね)
今回の舞台では、舞台の上手側、中央から出演者が出たり入ったりして、ギャラリー公演でお馴染みの異様なまでの距離感はありませんでしたが(笑)また違った魅力はありました。
今回はいつものギャラリー公演とは違い、オムニバスに出演する方は白い上下の衣装を身にまとい、さらにそれ以外の衣服を紺とエンジの布で表現する手法を取っていました。
かつて似たような布の使い方は2010年の「新おとぎ夜話」でも見られましたが、たった一枚の布を結んで、開いて、羽織ったり、ねじったりして、それぞれの登場人物を表現する……。
オムニバスは小道具が殆ど無い、素舞台ですから本当に出演者の技量が試されるところだと思いますが、皆様、非常に良く演じられていたと思います。
また舞台の演出も秀逸。
照明については場面の転換が多い舞台に関わらず、暗転を一切使わず舞台に向ける観客の集中を保つ事に成功していました。
音響も非常に舞台上の出演者とのバランスよく保たれていました。
今回の舞台については欠点とか、そういうものは一切見当たらず「おとぎ夜話」シリーズの集大成と呼ぶに相応しい、非常に完成度の高い舞台に仕上がっていました。
劇団のファンという贔屓目抜きに、かなり素晴らしい舞台でした。
さてここから各出演者について一人、一人語っていきます。
……怖くないですよー。ただくどい言い回しだけで(笑)
【現代パート】
・竜胆丸平四郎……浅野泰徳(ジャングルベル・シアター)
※ジャングルベル・シアター主宰。作、演出も手がける。
市役所勤めの河川調査員。「おとぎ夜話」シリーズをはじめ、多くの作品でお馴染みのキャラ。
見せ場たっぷり、台詞たっぷり、まさに浅野氏の好きなように縦横無尽に駆け巡った感があります。
竜胆丸はいつも謎解きの部分になると、それまでのコミカルなキャラが嘘のように、これでもかという長台詞でまくしたてるけど、今回もその爽快感は言わずもがな。
役者としての彼の真骨頂が今回は随所に垣間見えました。
・大伴御幸……大塚大作(ジャングルベル・シアター)
郷土史研究家。竜胆丸と共に県下に伝わる伝承を調べ同人誌を発行している。前作「おとぎ夜話-終-」で諸子と知り合う。
今回は竜胆丸が見せ場をごっそり持って行ったので、脇を締める役割に徹した感もあります。
ただこうした抑えた演技を大伴で見せられるようになったのは、大伴というキャラを演じ続けた大塚氏の進化そのものだと思います。
大伴がいるからこそ、竜胆丸があんなに自由奔放でいられる……まさにジャンベル史上の名コンビを支えた立役者そのものでした。
・川端諸子……野上あつみ(ジャングルベル・シアター)
民族学者志望の大学生。「地蔵の諸子」と呼ばれる程、地蔵マニア。大伴とは前作「おとぎ夜話-終-」で対面。故・川端昭三教授の孫。
今回のメインヒロインと言って過言ではなく、それを見事に演じきりました。また場面によってはとっさに少女時代に戻る時もあったけど、その演技も違和感無く入り込めました。
あつみ嬢はこれまでもヒロインの立ち位置は多かったけれど、それを川端諸子で演じきった事にキャラクターと共に進化した彼女の姿があったと見ています。
これまで諸子を演じた中でも、微妙にポジションが違ったけれど、新たな諸子の魅力を出すことに成功したと思います。
・川端昭三……竹内俊樹(ジャングルベル・シアター)
諸子の祖父で故人。生前は植物学、博物学の教授。大学時代の竜胆丸を担当した教授でもある。
「ママ」の十三郎など以前から年配の役をやる事が多かった竹内氏だけど、今回もうまくまとめてきましたと思います。
自分と同年代のはずなのに、なんでじいさんやってあんなに違和感無いのか不思議で仕方ない(笑)
中盤、脳溢血で倒れた後の演技は圧巻。出番は現代パートの中でも少なめかつ、絡むのがほぼ諸子という難しいポジションでしたが、要所を締めるキャラとして、最後まで存在感を発揮したのは素晴らしい。
・虎杖明……東野善典
※今回がジャングルベル・シアター初出演。
銀座で店を営んでいる書画鑑定家。竜胆丸らと共に「八福の神」の鑑定を依頼され、真っ向から竜胆丸たちと対立する。
竜胆丸たちの敵役として好演。王道ながら分かりやすい嫌味な役を見事に演じて見せた。
前半の余裕を見せる表情から、後半の真っ向から竜胆丸の意見に対立する姿まで見せ場は多く、竜胆丸たちの引き立て役として機能した。
今回は分かりやすい敵役を演じたので、次回拝見するならもう少し別の役柄を見てみたい方です。
・荷実屋文枝……林智子(劇団ヘロヘロQカムパニー)
※今回がジャングルベル・シアター初出演。
県内有数の旧家・荷実屋家の十代目当主。「八福の神」の鑑定を依頼した事の発端の張本人。三年前に夫を事故で亡くしている。
呪いに対して敏感なヒステリックな様と、どこか気品が溢れる旧家の当主としての佇まいが印象的。
本作品において最も人としての弱さとか、辛さが際立っていた人物。それ故、儚さすら漂う雰囲気に彼女の役作りの深さを感じた。
虎杖が「マダム」と劇中で呼んでいたが、まさに「マダム」という言葉が似合うそんな役柄。次回はもっと楽しい役柄を演じているところを見てみたい。
・荷実屋芽衣……堀江あや子
※ジャングルベル・シアターには2012年春公演「ママ」以来5度目の出演。
荷実屋家の長女。マーケティング会社に勤務する傍ら、荷実屋酒造のリサーチを行っている。また第一話では貧乏神も兼ねている。
ジャンベル本公演の常連、堀江嬢。ジャンベルテイストを今回の客演メンバーの中では一番理解しているだけに、このポジションの抜擢だったように見ます。
その期待に違わぬ演技力で、少々口が悪いけど豪快な荷実屋家の長女・芽衣を爽快に演じきったと思います。
一部客層からは(第一話兼任だった事もあり)芸人扱いされていましたが(笑)彼女のどこかコミカルかつ楽しそうな演技は、見ていて楽しくなります。
・荷実屋結衣……國崎馨(スターダス・21)
※ジャングルベル・シアターには2013年春公演「天満月のネコ」以来3度目の出演。
荷実屋家の次女。理系の大学院に進み発酵食品の研究に勤しんでいる。また第二話で主に使用人、語り部としても出演している。
今回は凛とした馨嬢が見れた。結衣のサッパリとしてて、それでも丁寧な口調は姉・芽衣とは対象的なキャラとして描かれていて印象深い。
でも彼女の場合、真骨頂は第二話での語り部としての立ち振る舞い。静かに低く語り掛けるような言葉の数々は第二話の怖さを倍増させたに違いない。
余談ですが彼女はジャンベル3度目出演にして、初めての人間役(笑)人間の女性役を演じるとこんなに魅力的なのを初めて実感しました(爆)
【第一話】
・福津健創(ジャングルベル・シアター)
船大工のゴサクを演じる。今回の公演から改名。
今回も福津ワールド全開(笑)大爆笑させていただきました。いや本当にくどいと言えばいいのか、しつこいと言えばいいのか(笑)これでもかというオーラが半端無い。
更に今回は目を開けたまま眠るなど小ネタの数々を披露して、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。
何気にパントマイムも上手くて毎回秀逸なんだけど、それがかすんでしまうくらい、今回も福津さんの濃すぎるキャラにやられました(笑)
・松下勇(劇団えのぐ)
※ジャングルベル・シアターには2013年春公演「天満月のネコ」以来2度目の出演。
前半は同僚の船大工、ネギどん、後半は厄病女神を主に演じる。
第一話の中で3パターンの役を切り替えて演じた。若いのに上手さが光る。
今回、女性役をやらせても意外と絵になるという事は新たな発見(笑)彼ならではの物腰の柔らかさが、女性役としての違和感を相殺させているような気がします。
いやむしろ次回あたり、オネエ役とかやらせたら面白いかも……そんな可能性を感じる今回でした。
・大串潤也(チャコールモンキー)
※ジャングルベル・シアターには2012年春公演「ママ」以来2度目の出演。
主に語り部、船大工の親分、カニどんを演じる。
最近、他の劇団で死神をやっているところしか見ていなかったので(爆)今回の彼に関しては自分的に新しい発見だらけでした。
彼ならではの独特の語り口調が第一話の雰囲気に妙にマッチしていて、途中、某「日本むかし話」を見ているような錯覚に陥ったのは他ならぬ大串氏の力量かと。
福津氏とは対照的ですが、彼もまた独特な雰囲気を持つ出演者。別の機会に拝見したい役者の一人です。
【第二話】
・西村太一(ジャングルベル・シアター)
語り部を中心に先代当主、下男の三吉、そして……亡霊と幅広い役を演じる。
第一話の福津さんが鉄板のように、第二話に太一氏が割り当てられたら、まずハズレは無い。それくらい磐石。
今回多くの役と語り部を演じたのに、そのどれも違いが明確に分かるのに、またそれぞれの役を違和感無く演じ分けていたのは、流石と言ったところ。
特に第二話終盤に出てくる亡霊の演技は圧巻の一言。それにしても太一氏、「おとぎ夜話」シリーズで色んな死に方をしているけど、今回の首吊りの様子もリアリティ有り過ぎ……凄いですわ。
・篠崎大輝(Last Brand)
※今回がジャングルベル・シアター初出演。
呪いの被害に遭う当主を演じる。
前半の幸せそうで穏やかな様子から、徐々に焦りと恐怖に満ちていく表情の変化、そして演技に引き込まれました。
冷静さを失って、どんどん人としての理性が無くなっていく様をこれでもかというリアルな表情で演じた点は素晴らしく、また凄まじかった。
実質、第二話の主役として見事な演技でしたが、次はもっと楽しい役を演じているところが見たい。
・升田智美(ジャングルベル・シアター)
当主の妻・キクエを演じる。
お腹に子供を宿しているので、お腹は終始膨らんだまま。しかし妊婦の升田嬢、あまりに似合いすぎ……。
明治時代という設定らしく、夫に尽くす妻を熱演。徐々に夫から遠ざけられる様が見ていて、あまりにも悲しく、そして切なくも映った。
終盤、妻から語り部にチェンジした際の鐘を鳴らしながら語る様も絵になっていた。でも次回あたりはかわいらしい役も見てみたい……そんな気もする。
【第三話】
・塚本善枝(ジャングルベル・シアター)
荷実屋家初代当主姉妹の妹・ハルを演じる。
今まで観た役の中では、かなり普素の彼女に近いものを感じた。強いて挙げるなら、2011年に客演した舞台「リコリス~夏水仙~」で演じた元子に近いか。
この手のキップがいい女性を演じさせると、これだけ似合う役者も見当たらない。そういう意味ではかわいらしいけど、どこかカッコよさもあった。
小さいけれど、ピリッ……と味の効いている。適当な表現かどうか別にしてコショウみたいな刺激がある役者だと思います。
・程嶋しづマ(ケッケコーポレーション)
※ジャングルベル・シアターには2013年春公演「天満月のネコ」以来4度目の出演。
主に後の荷実屋家番頭・弥助を演じる。ハルに惚れている。
これまで彼がジャンベルで演じた役の中では、一番はっちゃっけていた印象が強い。でもこの手の役もこなせるというところが新たな発見でしょうか。
個人的には小金屋の子分と、弥助を交互に一瞬にして演じ分けるのを連続したシーン。大いに笑わせてもらったし、彼の芸達者ぶりが分かるシーンでした。
それにしても彼の演じた弥助……日を追うごとに共感が沸いたのは、ハルにどつかれるシーンが多いからでしょうか(笑)
・本田照長(ジャングルベル・シアター)
語り部を中心に小金屋の主人、姉妹の父親などを演じる。
本多氏のファンにとってはたまらない「黒本多」と「白本多」が両方拝めた今回。
小金屋主人(別名:ハート様)としての悪~い本多氏と、フユ・ハル姉妹の父親として恩人への感謝を語るいい本多氏……全くポジションが違うのに演じ分けが相変わらず秀逸でした。
実は個人的に毎回、本多氏の配役におけるポジションが楽しみなので、次回の本多氏が黒いか、白いか……今から楽しみでたまりません(笑)
・松宮かんな(ジャングルベル・シアター)
荷実屋家初代当主姉妹の姉・フユを演じる。
この方に関してはね、もう立っているだけで絵になっちゃうんですよ。さすが看板女優。
大げさな演技やシーンが一切無いのに、どれもこれも名シーンになってしまうんですから持っているオーラが違います。いえ本当ににそう思います。
個人的には後半、ハルや従業員に所信表明をするシーンがしびれた。ハルを演じた塚本嬢と並ぶ姿も、本当の姉妹と思える程に様になっていた。文句なしです。
……と、全ての出演者について語りましたが、こうして見ると、誰一人欠けても、この「八福の神」は完成しなかった。
改めてそう思う訳です。
そういう意味では浅野氏の脚本は登場する人物の愛に溢れています。
今回、特に諸子に対する愛情は非常に感じましたが、それぞれのキャラもその後が気になるキャラも多くいました。
浅野氏はしばらく民俗学などを題材にしたシリーズは書かない趣旨を仰ってましたし、今回の「八福の神」がこれまでの「おとぎ夜話」シリーズの集大成なのも分かりますが……。
自分としてはいつかまた竜胆丸や大伴、諸子に別の話で出会えたら嬉しいと思います。
それだけ魅力的な登場人物が書かれた舞台。
これでもし彼らの登場を最後にするなら勿体無さ過ぎます。
とにかく今はお疲れ様でした。
そう言うしかないでしょうけど。
それでは最後に、自分が劇中で最も気に入った台詞を「八福の神」全ての出演者、スタッフの皆様に送り、このレポートを締めたいと思います。
「……ありがとう……マーベラスだ!」(by・川端昭三@竹内俊樹)
※追伸
最後にこの締めはジャンベルファン的には反則だったと思います(笑)
・ジャングルベル・シアター公式サイト↓
http://www.junglebell.com/