※この公演は7/26~28に行われたもので既に終了しています。
思い返せば7月末の猛暑が続く日々……。
仕事柄、超繁忙期の最中、残業に捕まらずいけるかどうかギリギリの状況で電車を乗り継いでやってきたのは阿佐ヶ谷。
阿佐ヶ谷というと、インディーズアイドル業界でいうと、あの某ドラムという箱が有名ですが(笑)
今回お伺いしたのは阿佐ヶ谷シアターシャインという劇場。
ここで行われる舞台を観に行きました。
……という事でだいぶ時間は経ちましたが母さん、僕をもう一度妊娠してください!公演「至高のけもの」という舞台の様子をレポートします。
……それにしても「母さん、僕をもう一度妊娠してください!」って……。
チラシなどを確認する限り、Unit AAという団体のプロデュース公演の模様。しかしインパクトのある名前だなぁ(笑)
実は今回の公演を観るキッカケは、このレポートではお馴染み塚本善枝嬢のある提案がキッカケだった。
この舞台に出演する、お笑いピン芸人のあがいん直氏を応援しようというのがそもそものキッカケ。
あがいん直氏は昨年、その善枝嬢が所属するジャングルベル・シアター公演「ママ」で共演している仲である。
それ以来、善枝嬢が自分のライブに呼んで芸を披露してもらったり、逆に直氏の単独ライブのお手伝いをするなど付き合いが深いのである。
実はその二週間ほど前も、善枝嬢の某ライブにて直氏がゲスト出演していたのですが、その際、彼が舞台に出演する話を知る事となった。
そんな善枝嬢、せっかくなので、直氏の舞台を皆で観劇するオフをやろうと言い出したのだ(笑)
……という事でその場でチケットを購入した自分は(笑)チケットを無駄にしたくない思いと共に阿佐ヶ谷に向かった……という次第です。
(ちなみにオフ会は参加人数が少なくて、結局ボツになってしまったけど・汗)
そんな訳でチラシにある地図を頼りに到着。
しかしこの劇場、結構前に一度来た事があったなぁ(汗)
この活動を始めるかなり前だけど……区役所と、中学校と、商店街の狭間にある変な立地だった事だけは妙に覚えていたし(笑)
……という事で入場。
正直、あんまり広くない。
縦は大体5列、横にやや長いくらいだろうか。
劇場内には最前に自分の知人、某ぴか氏がいたこともあり、最前センターでの観劇となった(笑)
そんな舞台ですが、舞台後方には長机が3個ほど。
そして自分のいるど真ん中には、赤いテープで区切られた謎の線が……。
何を暗示するのか全く見当もつかないまま、予定よりやや遅れて舞台の幕は開けます……。
公演終了後につき、ネタバレ有であらすじを。
物語はある銀行の群馬支店から始まる。
移転間際の銀行の支店。
既に現金などを運び出した後にも関わらず、帳簿がたった1円合わないため行員たちが必死になって1円を探していた。
終電間際になり、1円を見つける行員たち。
妻と離婚したばかりの行員・安田(あがいん直・以下敬省略)は、以前から目をつけていた後輩行員・鈴木(佐野美麗)を口説こうとするが相手にもされない。
とにかく終電間際なので一緒に銀行を出ようとした矢先、銀行強盗犯たちに襲撃されてしまった。
しかし強盗犯たちは移転直前の銀行の支店という事をしっかり調べていなかったために肩透かしを食らう。
だが変わりにある顧客名簿を手に入れ、それを手にいざ撤収……しようとしたが、警察に包囲された。
あっという間に銀行の2階を制圧した警察と、行員たちを人質に立て篭もる強盗犯たち。
だが物語は二転三転し、物語は予想もしない方向へ転がっていく……。
……とまぁそんな話。
終盤まではオチが見えなかった。
というよりは、最後、どう落としてくるんだろうと言ったところ。
誰もが納得するラストだったかどうかは別として、まとまった感はあります。
ただ今回、この舞台で描きたかったのはきっと物語の面白さというよりは、人間の内面では無いかと思う訳です。
登場人物、特に行員と強盗犯側の人物は一人、一人、キャラクターが掘り下げられていた。
ただ描かれるのは、人間としての醜い面とか、おどろおどろしい面とかそういうところ。
劇中でも語られているけど、人間を人間としてではなく「けもの」として捉えようとしているのも、そのためかと。
だから話は重い方向に徐々にシフトしていきます。
が、必要以上に暗くならないような演出も多々ありました。
そういう意味だと今回の舞台、訴えたいものは意外と見えてこない。
見方によってはアングラなんだろうけど、ラストを見る限りそうなってない。
終始、中途半端な印象はどうしても拭えない内容でした。
ただ特筆すべき点としては、銀行員・鈴木を演じた佐野美麗嬢以外の全員が一人二役を演じていた事。
銀行員・強盗犯を演じているメンバーが、そのまま警察の役に早変わりする。またその逆も然り。
この点は脚本がうまく調節していると思いました。
銀行員・強盗犯側と警察が同じ場に立ち会うシーンがほぼ無く、また会話するとしても電話を通じてさせる事で、強盗犯対警察の様相をうまく演出していたと思います。
特に強盗犯側の宍戸と、警察側の横田を演じた南アキ嬢は自分の台詞のほぼ直後に、演じたキャラを変えるという事を難なくこなすなど、難しい立ち回りをうまく演じていたと思います。
そんな訳で出演した役者の数は6名。
上演時間も1時間20分程度と短かったですが、それなりに見所はある舞台だったと思います。
今回気になった出演者としては、前述の南アキ嬢。
強盗犯の宍戸と、警察側の横田は全く違うキャラなのに、しっかり演じ分けていたのが印象的でした。
上手さでいったら、切口健氏が一番かもしれない。
言葉がうまくしゃべれない強盗犯の大谷と、警察の指揮を執っている三沢と両者とも印象に残る役でした。
でも演じた人物が両方とも最終的に死ぬのは彼だけですなぁ(爆)
後は鈴木を演じた佐野美麗嬢。
唯一の一人一役だったけど、ポジション的にはヒロイン。
おどろおどろしい人間模様渦巻く内容だったのに、最後まで清涼剤としてのポジションを確保したのは見事でした。
さて最後にお目当てだったあがいん直氏。
彼の場合は行員の安田がメインだったけど、人としてある意味正直だけど、正直過ぎて汚さが目立つタイプ。
そんな安田を熱演した直氏、「ママ」の時とは違う一面を見せてくれたと思います。
彼の場合、演技的な上手さというよりは、どう押し切るかだと思います。
表情とかは豊かだし、何か人に訴えかけるものを持っているのは確かです。
またどこかで彼の演技を見たいですけど……しばらくはお笑いメインなのかなぁ(笑)
そんな訳で阿佐ヶ谷で拝見した舞台。
今回は特に面白いとか、感動したというよりは考えさせられた内容でした。
でもたまには人間の汚さや、欲望と真正面に向き合う作品があって、それで考えるのも有意義な時間かな……なんて勝手に思いました。